
コニカミノルタ「BUSINESS INNOVATION CENTER」
設立経緯設立理由既存事業以外の新しい事業の柱を見つけるカンパニー・インキュベーター事業領域主要テーマ「ヘルスケアを含むライフサイエンス領域」モノからコトへデジタル・トランスフォーメーションビッグデータとインサイト事業創造手法顧客の課題起点マーケットで確認するクローズドなユーザーグループを作る自分が情熱を持てるアイデアに取り組むオープンイノベーション専門家を巻き込む発想から1年で完成形をつくる事業の評価基準①社会的価値・顧客価値 ②サスティナブル ③ビジネスプランの成立失敗も加点評価する組織形態世界5地域に展開人材はゼロから外部から採用で、組織を立ち上げプロジェクトは少人数からスタート役割は商品が販売されるまで。そこからは引き継ぐ出口戦略:事業部に戻す、子会社化、売却コーポレートフィット自社が手掛ける意味「ブランド力」「信頼感」「ビジネスモデル」人材育成と、既存事業への文化波及新規事業創出事例体臭を見える化するデバイス「Kunkun body」腸内細菌の見える化プロジェクト「PonPon CODE」月経周期のセルフモニタリング「Monicia」医療機関向けコミュニケーション支援サービス「MELON」自治体向けAI多言語通訳サービス「KOTOBAL」
設立経緯
2013年、コニカミノルタの役員クラスが集まり、トランスフォーメーション(事業変革)をテーマに話し合いを続けていた。その席に大手グローバルIT企業から前年転職してきたばかりの、市村雄二(現執行役事業開発本部長)もいた。 市村は当時、ICT・サービス事業を統括する立場にあった。外部から来た人材が事業領域の8割を占める情報機器関連の部門トップに立つこと自体、異例のことだ。市村を口説いて引き抜いたのは現コニカミノルタ代表執行役社長である山名昌衛と、現在、国内子会社でワークフロー変革のソリューション提供を推進するコニカミノルタジャパン社長を務める原口淳の2人だった。 グループの連結売上高は1兆円近くになっていた。世界約150カ国で事業を展開し、4万人超の従業員を抱える巨大企業グループが継続的にイノベーションを起こしていくには、企業買収によるシナジーを模索するだけでは物足りない。組織全体を変革に向けて前進させる、もう1つのエンジンが必要だー。 議論が佳境を迎えた頃、市村が提案した。「全世界にビジネスイノベーションセンター(BIC)をつくりましょう」 成長戦略の中核を担う組織として、顧客ニーズを深く理解し最大価値を世界に送り出すことをミッションとした、新規事業開発のための拠点。2カ月半で詳細を詰めた彼は、取締役会の承認が下りると直ちに動き始めた。
「北米はBtoCの経験者、ヨーロッパは社会制度や基盤整備に長けた人材、シンガポールの場合は政府も含めてメジャーなプレイヤーに人脈を持つ人という意味で、過去に4,000人くらいの部下を抱え、大企業も経験した人物を選びました」(市村) 日本に関しては、自ら事業を孵化させた経験を持ち、なおかつ「コニカミノルタにはいないタイプ」を募集した。苦労の末、ようやく見つけたのがBICジャパン所長の波木井卓だった。 「こちらに来るまでは、新規事業やM&A(合併・買収)に関してアドバイスする業務をしていました。アントレプレナーの経験はありましたが、大企業の中からイントラプレナー(社内起業家)として事業を立ち上げた経験はまだないなと思っていたところに、この話が舞い込んできた。ちょうどいい機会だと思いました」と、波木井は振り返る。 BICジャパンの所長に就任したのは14年5月。決まっていたのは、おおよその予算と人数だけだった。「1年目は人を集めて組織をつくるだけで精一杯。当時は社内の誰に何を相談したらいいのかもわからず、すべてが手探りでした」。名簿で人事担当者を見つけ、採用に必要な手続き等について質問すると、「どなたですか?」と聞かれた。用件を伝えると別の担当者に回され、回された先で「担当が違います」と言われることもあった。 「そんなことを何度か繰り返すうちに、社内の状況もおぼろげながら把握できるようになり、最終的には今いる10人のメンバーを集めることができました」。
設立理由
既存事業以外の新しい事業の柱を見つける
合併前のコニカ、ミノルタ両社の祖業であるカメラ事業を2006年に売却、それに伴いオフィス向け複合機(MFP)などを主力事業に据えた。しかし、そのMFP事業ですらペーパーレスの時流の中では盤石とは言えない。そこで、既存事業以外の新しい事業の柱を見つけることを目的としてBICが設けられたというわけだ。
本体のコニカミノルタのメインは複合機ですが、BICがスタートした6年前も時代は大きく変化していて、オフィスの在り方、仕事の仕方も変わりつつありました。 そこで当時のトップは、「もう複合機が大きく伸びることはない」と強い危機感を持っていました。そこで既存ビジネス以外のところで、新たなプロジェクトを生み出さなければいけないということがあり、BICをつくったわけです。
まずコニカミノルタという会社は、2003年の経営統合(コニカ社、ミノルタ社)によって生まれた企業です。もともとはカメラのフィルムの販売を主な事業として行なっていましたが、統合をきっかけにそれらの事業を売却し、今は複合機を軸にしたソリューションを提供しています。 ただ、現在ではその市場も停滞しています。インターネットやスマートフォンの普及によって、時代はペーパーレスに移り変わり、複合機以外のビジネスへの挑戦を模索するようになりました。 そのような状況の中「事業のトランスフォーム」を掲げ、既存の事業以外の新規事業に挑戦するための場所として立ち上がったのがBICです。 これまでの技術やビジネスの領域にとらわれることなく、完全に新しい事業領域を狙って新規事業に取り組んでいます。また、自社技術にこだわるのではなく、スタートアップや大学と柔軟に連携することで、新しい技術や市場の発見に注力しています。
カンパニー・インキュベーター
会社を生み出す組織と位置付けている
課題を発見し、着想、その解決に必要な技術をスカウト、試作品を作り、PoC(概念実証)からのフィードバック、初期のマーケティング、セールスを行って3年をメドに、大量販売を目指す次のフェーズに移行する活動と定義している
次フェーズとしては「他企業に売却する」「社内の事業部に移して育てる」「子会社を設立する」の3つの方法を考えている。既に、それぞれのフェーズに移行する事業も出始めている。
大量販売前の活動ではあるものの、各プロジェクトについては、売り上げ数百億円規模にまで成長する青写真を描いている。
事業領域
主要テーマ「ヘルスケアを含むライフサイエンス領域」
ヘルスケアを含むライフサイエンス領域は、BIC Japan発足後最初に設けられたテーマだ。「日本では少子高齢化が進行しており、健康に関する問題が多い。他地域にも応用できることから、率先してやったほうがいいと考えた」
モノからコトへ
狙うのはモノ(単体製品)の売り切りではなく、コト(サービス)の継続販売だ。
デジタル・トランスフォーメーション
外観からはわからないのですが、BICで開発している商品は、すべてデジタル技術が支えています。ほとんどの商品が、これまで見えなかったものを見える化することで課題を解決していますが、そこにはデジタル技術があります。 「Kunkun body」は、体臭や口臭という、そこに確かにあるけれども、これまで測ってこなかったものを測り、数値で示すことができるようになりました。アナログであったものを、デジタル技術で見える化しています。
ほとんどの商品で、AIの機械学習などの技術が使われています。たとえば「Kunkun body」では4ヶ所にセンサーが組み込まれています。 4つのセンサーが、あるニオイについてそれぞれ反応をします。その反応のパターンのデータを集め、そのアルゴリズムを機械学習で解析させて、最終的には製品に組み込んでいくということをしています。 見た目はふつうですが、実は最先端の技術を使っています。橋梁を守る「SenrigaN」という商品も、磁石の反応を機械学習で覚えさせて品質を高めています。アルゴリズムには、すべてAI的な、機械学習が関係してきます。
ビッグデータとインサイト
BICで開発した商品に、膨大なデータが蓄積されています。いわゆるビッグデータですが、いずれ、それが大きな価値になると思っています。
たとえば「MELON」には、お医者さんと外国人とのやりとりが記録として蓄積されています。そのビッグデータは、どんなときに、どんな言葉で、どんな表現をするなど、医療における国際的な、反応のデータになっていると思われます。 翻訳だけでなく、集まったデータそのものに大きな価値がある。その分析から得られる知見は医療の進歩、診察技術の進歩に直結する可能性があります。
「Kunkun body」には、どこの地域で、どの年齢の人が、どのような体臭が多いなどが記録されています。それを使うと、たとえばこんな天気のときに、どのくらい歩いた人がどんな臭いの汗がでてくるなど、これまで誰も見たことも考えたこともなかったデータが明らかになる可能性があります。 ニオイのデータについては、世界のなかでBICしか持っていません、それをビッグデータとして分析していけば、いろいろな発見があると思っています。
事業創造手法
顧客の課題起点
コニカミノルタが推進するオープンイノベーション活動の特徴は、「顧客の課題が起点であること」だ。新規事業開発のテーマ選定では、技術や人材など既存の企業資産を生かした「シーズ先行」であることが多いが、顧客が抱える課題を起点として解決策を生み出すのがコニカミノルタ流と言える。
「解決策となる技術については、コニカミノルタが必ずしも持っていなくてもいい」
この組織の特徴は、何よりも顧客起点であること。ふつう大手企業は、もともとある技術などのリソースが充実しているため、新規事業といっても、そこからスタートするでしょう。すでにある技術やプロダクトの機能を変えて、別のお客様をターゲットにして売るのが一般的です。 ところがBICでは、必ずお客さまが起点となる。そこから出発し、課題を発見して解決策をつくっていく。その解決策にコニカミノルタの技術が入っていなくても、他社の技術と提携して作り出す。
マーケットで確認する
大企業は製品を外にだしたがらないものです。BICは品質を保証しながらも、完成したらどんどん外に出していく。ストックして販売機会を待つことはしません。お客様の声を聞きながら、お客様と一緒に育てていく感覚です。
私がコニカミノルタにくる前、せっかくできた商品でも10年20年と内部で抱えて、市場に出したがらない傾向にありました。技術者が作りたいものとお客様が欲しいものとは解離があって、お客様が要らない商品を作ってしまうこともあります。 そういう悲劇をなくすためにも、できるだけ早い時期に商品化し、市場に出して、お客様の声を聞きながら、品質を高めていくことが必要になってきます。
アンケートやインタビューをしますが、商品が形になっていない段階でのアンケートは、あまり意味がないと思っています。「Kunkun body」のコンセプトを示して「こういう商品は好きですか」「買いますか」と聞いても、まだ世に出ていないものですから基本的に「あったらいいな」というポジティブな回答しか戻ってきません。 そこで「Kunkun body」では、クラウドファウンディングを活用しました。100名ほど賛同者がいればと思っていたところ、フタをあけてみたら1800人から注文がきました。 クラウドファウンディングに参加する人は自分でお金を出しているので、アンケートで「欲しい」と答えた人とは違います。そういう人がいるとわかれば社内でも企画が通っていく。大量販売には投資が必要ですので、クラウドファウンディングでリアルに買いたい人がいることがわかった。これは大きかったです。 クラウドファウンディングには大量生産をする前に「これ大丈夫? お金を出す人がいる?」ということがわかる利点があります。こういう新しい仕組みは、ベンチャー企業に限らず、大手企業も使ったほうがいいと思っています。
「モノづくりの会社ですから、ある程度の技術検証ができた段階で表に出しています。この技術検証ができるかできないかの差は大きいでしょう」
クローズドなユーザーグループを作る
「Kunkun body」のような商品は、自分が使っていることを他人に知られたくない部分があります。それでフェイスブックでクローズドなユーザーグループをつくり、使ってみた人の意見を聞いて品質向上につなげていきました。クローズドな集団で意見を聞くと、思ってもいなかった本音がわかったり、想定していなかった人が興味を持っていいたりと、いろいろ発見があるものです。
自分が情熱を持てるアイデアに取り組む
BICでは「自分自身、あるいは家族など周囲の身近な人が欲しいものを重要視している」
「ほかの誰でもない自分自身が使うという情熱をもって、プロジェクトを推進できる」
顧客起点からスタートしますのでアイデア段階で重要視したのは、身近な課題であること。ほとんどのプロジェクトが誰かの「身近な悩み」から出発しています。 極端な話し、世界中の誰も今は使わなくても、自分が絶対に使いたいという強い気持ちがあるかどうか。そこが確認できたら、スタートできます。BICの顧客起点はお題目ではなく、本当に、その人が必要使いやすいものとなってきます。
まず、一人の強い意思がある、開発をするスタッフ本人が、「この課題を何としても解決したい」と思う気持ちが必要
オープンイノベーション
社内技術を前提とせず、社外の技術を積極的に採用するため、ベンチャー企業、大学、政府機関など、社外の様々な分野のプロフェッショナルと協業するオープンイノベーションという手法をとっています。
“技術”においては、「自社がもっている技術には限りがある」と自覚したうえで、「純粋に顧客の課題解決のために外の技術を求める。オープンイノベーション以外でやる道はない」との考えを徹底。「マーケットインの発想を忘れず」、「技術を作ることが目的にならないように」しながら、ソフトウェアサービスは1年、ハードウェアが必要なものは2年でサービスインにこぎつける「スピード」も重視した。「とにかく早く始める。だめだと思ったらすぐやめる」という“多産多死”の戦略もとった。
専門家を巻き込む
みんな、外部とのコラボです。医療関係のプロジェクトは大学病院の先生と組んで進めることで、品質を高めることができます。最初は思いつきでも、だんだん外部の専門家を巻き込んで、より品質のいいものに高めていきます。
発想から1年で完成形をつくる
スピード感をもってプロジェクトを進めたいので、発想してから1年で完成形までもっていきます。デバイスから作る場合は2年くらいかかることもありますが、戦っている相手もベンチャーですからスピードがなければ勝てません。
事業の評価基準
①社会的価値・顧客価値 ②サスティナブル ③ビジネスプランの成立
「第一に社会的価値・顧客価値はなんだろうということ。第二に、サステイナブル(持続可能)であるかどうか。最後に、ビジネスプランとして成立するかどうか。順番は決して逆であってはならず、最初の2つが明確でなければ詳細なビジネスプランを描いても意味はありません」と、市村は強調する。
社会的課題の解決をビジネスモデル優先で考えてしまうと、どうしてもゴーサインは出しにくい。しかし、「マーケットイン」の発想を貫くBICの基準に従えば、このようなプロジェクトこそまずはローンチさせてみて、その後に収益のあり方を考えるという順番で取り組むことができる。社外のNPOと連携するのも自由自在だ。
「大企業の多くは既存事業と同じ管理手法で新規事業を管理しようとするから、すぐに『売り上げはいくらだ、コストはどれくらいだ、損益分岐点は?』という話になる。私はそうした質問には一切答えないことにしています。重要なのは、プロジェクトが健全に前へ進んでいるかどうか。顧客価値が特定できていて、それを詳細化し、事業開発へと持っていく流れができていれば、利益は後からついてきます」
失敗も加点評価する
イノベーションを起こすために必要なのは、仮説を持ち、それを検証しながら進むこと。懸念すべきは、この流れが滞留してしまうことだという。流れを滞らせないために、所長の評価に関しては、失敗したプロジェクトも加点評価している。 「仮説が間違っていたら、すぐにストップしてスタート地点に戻るのも非常に重要な判断ですから。挑戦的なプロジェクトほど『やってみたらうまくいかなかった』ということがある。単にタイミングが早かっただけのことであれば、経験値は後に成功するための布石にもなる。売り上げ・利益につながったものだけを評価していたら、誰も、何も挑戦しなくなってしまいます」
組織形態
世界5地域に展開
コニカミノルタは、今後の同社の柱となる新規事業を開発する組織「ビジネス イノベーション センター(BIC)」を世界5地域(日本、米国、欧州、アジア太平洋、中国)に展開している。
BICは、東京を含む世界5地域に設立されている。これも地域によって異なる顧客の課題を吸い上げるためだ。「ローカルの顧客の課題を発見し、解決する」
「ローカルの課題を解決する」のが基本スタンスなので、重点テーマは拠点ごとに異なっている。BIC Japanでは、健康で豊かな生活を目指す「ライフサイエンス」、ビジネス領域における見えないものを見える化する「インダストリアルセンシング」、海外からの旅行者などとのコミュニケーションを円滑にする「グローバルコミュニケーション」の3つがある。
東京、シンガポール、シリコンバレー、ウィーン、上海の5拠点で、それぞれ20個の新規事業プロジェクトを稼働させ、全世界で合計100個のプロジェクトの推進を目指しています。
それぞれのプロジェクトを、それぞれの拠点で解決して事業化しますが、うまくいきそうな地域には、それをヨコ展開していくことになります。 もっとも実際には、まだ世界共通の商品は生まれていません。私はBICジャパンの所長で6年間やってきましたが、この4月からBIC全体をとりまとめる役割に就きました。これからグローバル展開する新規事業プロジェクトも、積極的に進めていきます。
世界5拠点でそれぞれ20個ずつ、合計100個のプロジェクトが新規事業として動いています。それぞれ、ポートフォリオとしては既存ビジネスに近い事業が40%、既存ビジネスよりも更に先に踏み込んだ事業が40%、完全な新規事業が20%というバランスで事業開発に挑戦しています。
「シリコンバレーは外せない。ヨーロッパはもともとコニカミノルタのお客さんも多いですし、ITサービスということを考えるとロンドンは重要です。社会制度を含めたプラットフォームという意味ではシンガポール、それから13億人のマーケットがあるという意味では中国も無視できませんでした 世界を日本、北米、ヨーロッパ、中国、アジア太平洋の5極に分け、東京、シリコンバレー、ロンドン、シンガポール、上海とそれぞれの主要都市に拠点を置き、一気に始動した。日本にはすでに研究開発(R&D)の拠点もあり、優秀な人材も多く揃っている。そこにわざわざBICを設けなくてもいいのではという意見も出たが、市村はこう反論した。 「BICはグループ全体をイノベーティブな組織へと変えていくためのエンジンですから、日本にこそ必要です」
人材はゼロから外部から採用で、組織を立ち上げ
BICではこれまで挑戦したことのない新たな領域のビジネスに取り組むわけですから、そのような事業立ち上げを経験したことがある人材はBIC立ち上げ当時、社内にはいませんでした。 なので、BICの立ち上げ期では社外から新しいメンバーを集めるところからスタートしています。私も含めて、外部から起業やベンチャーの経験などがある立ち上げメンバー10名を揃え、今までのコニカミノルタとは違うアプローチで組織をつくっていきました。 新規事業を推進するためのプロジェクトマネジメントができる人材という軸で中途採用を行って組織を立ち上げたあとは、社内公募も行い現在は1/3がコニカミノルタの社員となっています。
プロジェクトは少人数からスタート
商品開発の原点は身近な人ですから、まず一人で徹底的に考えます。プロジェクトが進むにつれて賛同者を募り、だいたい2~3人のチームで動きます。あまり大人数になると、最初の意思に影響するので、なるべく少人数で進めていきます。 タイミングをみて会議には技術がわかるスタッフ、マーケティングのスタッフが参加し、大規模な生産体制をとる段階まで進め、そこから先は別のチームに引き継ぎます。
甲田氏は大企業で新規事業を実施することの難しさもあると指摘し、「新しいことを好む人が基本的にいないためイノベーション活動が阻害される」「現在の仕事と新しい仕事を兼業しろと言われる」「会社の発想がプロダクトアウトで、ニーズの有無にかかわらず既存事業との組み合わせが強制される」「売上目標100億円など、高すぎる目標を設定される」といった“大企業あるある”が語られた。
“人財”においては、「企画だけでなく事業を発案して作り上げ、世の中の声を聞いて直す、一連の流れを経験していること」を重視。「ベースの能力としてプロジェクトマネジメントできることが必須」として、そのうえで個人の得意分野があることが理想だとした。 プロジェクトごとにメンバーを固定し、2〜4名の少人数チームを結成。専門性は問わず、たとえば「英会話系のサービスだからといって、過去に英会話関連のサービスを作ったことがある人でなくてもよい」ものとした。BICという部署自体は会社のトップ直轄の組織として会社からの理解を得られやすく、動きやすくし、社外のパートナーとは「一蓮托生で全ての情報をオープンにして一緒にプロジェクトを進める」形にした。
役割は商品が販売されるまで。そこからは引き継ぐ
BICは発想から技術を探して商品化できるまでもっていくインキュベーション活動
最終的に販売し、初期の営業活動まで進み「こうしたら売れるのではないか」「こんなアプローチで広告をしたらどうか」ということもわかり、そのチームから市場に出た時のユーザーの反応、販売スタッフの意見などのフィードバックがきますので、そこでまた考えることにはなりますが、基本的には商品が外に出るまでBICのプロジェクトは終了し、また別の新商品の創造に向かいます。
最後の最後までBICが面倒をみるのではなく、最後は専門の組織に渡していく。それが我々のやり方です。
出口戦略:事業部に戻す、子会社化、売却
出来上がった商品は事業部で引き取る場合と、子会社を作って進める場合があり、事業そのものを別会社に譲渡する場合もあります。去年は、立ち上げたプロジェクトをコニカミノルタ本体に戻しました。外に出して子会社化する事例、売却の事例も出てきています。
コーポレートフィット
自社が手掛ける意味「ブランド力」「信頼感」「ビジネスモデル」
コニカミノルタが手掛ける意味はどこにあるのか。その問いについて波木井氏は「コニカミノルタのブランド力、あるいは信頼感」を挙げた。製品化に向けた落下試験、電圧や温度などの耐久試験など、外部から参加した波木井氏にとって「ここまでやるか?」というテストが用意されているという。
もう1つの強みとして波木井氏が挙げたのが、「デバイスを売って消耗品を売る」というビジネスモデルが受け入れやすい社風だという。祖業のカメラも現在の複合機も、消耗品で利益を得るモデルである。
人材育成と、既存事業への文化波及
社内に対して、コニカミノルタの企業文化を、イノベーションが生まれやすい文化に改革する役割も担っています。そのため、社内でワークショップやセミナーなどの企画開催を進めています。
新規事業を推進するためのプロジェクトマネジメントができる人材という軸で中途採用を行って組織を立ち上げたあとは、社内公募も行い現在は1/3がコニカミノルタの社員となっています。 ちなみに、社内公募といっても採用基準は決して緩めておらず、必須となるスキルや採用要件は中途と同様の厳しさで選考しているので、かなりハードルが高く設定されていると思います。
私たちとしては、本体からBICに人材を引き抜いているという感覚はありません。本体で学んだことをBICで活かしてもらうこと、その逆にBICから本体に戻って活躍してもらうこともできると思っています。 国内の拠点だけではなく、シリコンバレーや上海などの海外拠点にも異動できる機会がありますし、BICを通じて多様な経験を積むことができる環境だと思っています。 当社は大企業とはいえ、リモートワークを奨励していたり、兼業と副業、ジョブ・リターンの制度など柔軟に働くことができる制度も整備しているので、多様な視点で物事を捉えられる人材が増えることで、グループ全体のノベーションに繋がると考えています。
今コニカミノルタでは、シリコンバレーに代表されるような海外拠点での仕事にチャレンジする社員が増えています。 既存事業と新規事業の両方を経験することで、大企業の堅実さとスタートアップの柔軟さをあわせ持って活躍できる人材へと成長していくでしょう。 BICで働く社員の「希望するキャリア」について聞いてみると、新規事業立ち上げのプロフェッショナルとして組織で立ち上げに関わり続けたいという人と、いずれは自分で起業したり、立ち上げた事業で独立したいという人が半分ずついる状況です。 我々としても、社員のキャリアを制限することは考えていないので、独立してもよいし、一緒に続けてもいいと思っています。働き手にとって多様な選択肢を用意できる組織であれば嬉しいです。
新規事業創出事例
体臭を見える化するデバイス「Kunkun body」
腸内細菌の見える化プロジェクト「PonPon CODE」
メンバーの家族が便秘に悩んでいたことが発案の起点となった。腸内細菌を調べるための既存サービスを調べたところ、検査料金は1回につき2万~3万円、検査結果が分かるまでには1カ月以上かかっていたという。
腸内細菌の種類や構成比率は、食事内容や体調などによって常に変化しており、1~2カ月経つと大きく変わってしまうこともある。そのため、「既存サービスよりも安く、検査結果が分かるタイミングが早い方法があったらいいのに」ということでスタートした。
月経周期のセルフモニタリング「Monicia」
女性が月経前に体調がすぐれない。それをセルフケアしたいというニーズに対応して生まれました。
セルフモニタリングツール『Monicia』は、2021年5月31日をもちまして、プロジェクトを終了させていただきました。
医療機関向けコミュニケーション支援サービス「MELON」
医療現場で言語の壁を解消するツールとして「MELON」を開発しました。 これは、海外から日本にこられた方が体調が悪くなったときに日本の病院で使えるアプリです。タブレットをもって、そこで問診ができる仕掛け。医療通訳者と医師と患者の三者がコミュニケーションするツールです。
「MELON」には、お医者さんと外国人とのやりとりが記録として蓄積されています。そのビッグデータは、どんなときに、どんな言葉で、どんな表現をするなど、医療における国際的な、反応のデータになっていると思われます。 翻訳だけでなく、集まったデータそのものに大きな価値がある。その分析から得られる知見は医療の進歩、診察技術の進歩に直結する可能性があります。
自治体向けAI多言語通訳サービス「KOTOBAL」
「MELON」を自治体などに向けて展開したのが「KOTOBAL」です。自治体に在留カードを取得したいと相談に来た時、ふつうは通訳が必要なのですが、専門的な言葉も「KOTOBAL」では通訳できます。