「本業の汚染」から切り離す

新規事業は難しいと考える人は多いと思います。たしかに、新規事業は「多産多死」でうまくいかないことの方が多いです。でも実は、正しく一生懸命に頑張ると、そこそこの確率で成功します。
新規事業に必要なことを「普通に」考え実行しトコトンやり切れば、そこそこの確率で成功できるのです。顧客の課題は何か、解決するためにどんなビジネスが考えられるのかを考え、必要な人材と資金、意思決定のあり方を整える。 でも、その「普通に」がなかなかできない。それが大企業における新規事業の難しいところです。
なぜなら、大企業には「本業」が存在し、すべては本業次第だからです。事業計画も、組織計画も、そして財務計画も、すべて本業を前提としています。 かたや、新規事業は本質的に本業の事業とは異なります。事業計画も、組織計画も、財務計画も、すべて本業のそれとは別物であるべきなのです。つまり新規事業にとっては、すべてが逆風なわけで、本業との摩擦が非常に大きいわけです。 大企業は新規事業を生み出すにあたって有利な点がたくさんあるのに、同時に、それを帳消しにするだけの「本業の汚染」も存在するのです。それが大企業の新規事業が置かれている構造なのです。 だからまず必要なのは、この「本業の汚染」から新規事業を切り離すことが大事なのです。
企業の経営は、単年度会計で回っています。大企業ともなれば上場していることが多く、1年よりも短い四半期開示などの運用がされています。これが、厄介なのです。 たとえば、期初に事業開発室が設立され、人事異動可能なメンバーが異動してきます。ただし、足並み揃えてすべての人事異動が行われるわけではなく、第1四半期はバタバタとした中でエンジンが掛かり切らず、本格的な活動は第2四半期となったりします。 ようやく活動が始まってエンジンが掛かり始めたのに、下期、つまり第3四半期に差し掛かると、通期での予算達成が社の命題としてクローズアップされます。 結果、全社の利益計画必達を目指すがために、新規への投資に抑制が掛かり始めます。そして第4四半期は、来期の人事であらゆることが流動化します。 こんな「惨状」で良いわけがないです。あなたの新規事業は誰かの本業だったりします。逆に考えてみてください。中途半端に全力でぶつかってこない新参者に、あなたの会社の本業が負けるでしょうか。 負けないと思うのが普通だろうし、実際に負けないと思います。だとしたら、それと同じことをするのは、おかしくないでしょうか。本業を優先させながらやっているあなたの新規事業は、その本業プレーヤーに勝てるわけがないのです。
守屋実(元エムアウト) https://newspicks.com/news/6416983/body/