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事業事例

コエステ ― 東芝×エイベックスが挑んだ「声のプラットフォーム」と異業種JVの教訓

サービス終了 音声技術 / エンターテインメント #音声合成 #AI #JV #エンタメ #M&A
事業・会社概要
事業会社
東芝
業界
音声技術 / エンターテインメント
開始年
2018年
サービスサイト
coestation.jp

History & Evolution

2016

コエステーション開発スタート

東芝デジタルソリューションズが音声合成技術を活用したプラットフォーム構想を始動。

2018

アプリ「コエステーション」提供開始

ユーザーの声を数分で合成し、テキスト読み上げが可能なアプリを一般公開。

2019

エイベックスとの協業合意

エイベックスと東芝デジタルソリューションズが新会社設立に向けた基本合意を締結。

2020

コエステ株式会社設立

エイベックスが設立し東芝DSが出資する合弁会社として事業を本格始動。

2023

エーアイが買収・吸収合併

株式会社エーアイが約1.4億円で全株式を取得し、9月に吸収合併。コエステは解散。

課題・背景

音声合成技術は長年、ナビゲーションシステムや企業の電話応答といった BtoB用途 に限定されてきた。しかし、スマートスピーカーの普及やAIアシスタントの台頭により、音声インターフェースへの注目が急速に高まっていた。2010年代後半、 「声」そのものをコンテンツとして流通させる という発想はまだ存在しなかった。

一方、音声合成の技術的なハードルは依然として高く、自然な音声を生成するには大量の学習データと高度なアルゴリズムが必要であった。タレントやキャラクターの声を忠実に再現し、それを商業利用するためには、 技術とコンテンツの両方の専門性 が不可欠であった。

取り組みの経緯

東芝は 40年以上 にわたり音声合成技術の研究を続けてきた。2016年、東芝デジタルソリューションズ(TDSL)は、この技術資産を新たなプラットフォームビジネスに転換する構想に着手した。ユーザーが指定の文章を読み上げるだけで、AIが声の特徴を学習し、 「声の分身」 を生成するサービス「コエステーション」の開発を開始した。

「70億人の声をデジタル化する。それが我々のビジョンです」

――70億人の声をデジタル化。東芝&エイベックスのコエステーションが目指す未来(HIP, 2019年)

2018年4月にアプリを一般公開した後、エンタメ分野への展開を模索する中でエイベックスとの接点が生まれた。エイベックスは音楽・映像・デジタル分野で幅広いコンテンツの企画力と タレントネットワーク を持つ。2019年7月に両社は協業の基本合意を締結し、2020年2月にコエステ株式会社を設立した。

サービス概要

コエステーションは、ユーザーが画面に表示される複数の文章を読み上げると、AIがその声の特徴を自動学習し、合成音声を生成するプラットフォームである。生成された 「コエ」 は、テキストを入力するだけでユーザーの声で読み上げることができる。スマートスピーカーやカーナビゲーション、ゲームなど、さまざまなデバイスでの活用が想定された。

法人向けには 「コエカタログ」 として、DJ KOO、高柳明音(SKE48)、May J.などのタレント・著名人の合成音声を提供した。企業がプロモーションやサービスにタレントの声を活用できる仕組みであり、 声の権利ビジネス という新市場の創出を目指した。

成果と現状

コエステは技術的には先進的なサービスを構築したが、 収益化には苦戦 した。一般ユーザー向けアプリは無料で提供されており、法人向けサービスも普及には時間を要した。音声合成市場自体がまだ黎明期にあり、 顧客が「声のデジタル化」に対価を支払う習慣 が形成されていなかったことが一因である。

「音声合成事業でともに国内で切磋琢磨した企業が合同することにより、顧客への安定的なサービス提供の継続が可能になる」

――エーアイ、音声合成技術を活用したコンテンツを手掛けるコエステを買収(gamebiz, 2023年6月)

2023年6月、音声合成技術を手掛ける株式会社エーアイがコエステの全株式を約 1億4,170万円 で取得し、子会社化した。同年9月にはエーアイに吸収合併され、コエステは解散した。設立から約3年という短命に終わったが、コエステーションの技術やサービスはエーアイに引き継がれ、音声合成市場での競争力強化に活用されている。

この事例から学べること

第一に、「技術の先進性」と「市場の成熟度」のギャップは、JVの致命的なリスクとなり得る。 コエステの音声合成技術は世界的にも高い水準にあったが、「声をデジタル化して売買する」という市場そのものがまだ存在しなかった。 市場を創造する には、技術開発だけでなく、顧客の行動変容を促す長期的な投資が必要であり、JVという時限的な組織形態との相性が課題であった。

第二に、異業種JVにおける「収益責任の所在」が曖昧になりやすいという構造的な問題がある。 東芝は技術を、エイベックスはコンテンツとタレントを提供したが、マネタイズの主体が不明確なまま事業が進行した。JVは責任の分散が起きやすく、特にスピード感が求められる新規事業においては、 意思決定の一元化 が不可欠である。

第三に、事業の「失敗」は技術の死を意味しない。 コエステという法人は消滅したが、その技術とサービスはエーアイに承継された。新規事業の評価は、単独の法人の存続だけでなく、 技術・知見・人材が次の挑戦にどう活かされたか という視点でも行われるべきである。

関連項目

成功の鍵

1

異業種JVによる新市場創出の試み

重厚長大な技術企業とエンタメ企業という異色の組み合わせが、従来にない「声の権利ビジネス」という市場を構想した。

2

40年の技術蓄積の事業転換

東芝が長年培った音声合成技術を、BtoB用途からBtoC・エンタメ領域へと転換する大胆な戦略。

3

収益化の壁と事業承継

技術とビジョンは先進的だったが、マネタイズに苦戦し、最終的に同業のエーアイに事業を承継する結果となった。

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