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事業事例

MATOMAT ― 太平洋工業が自動車部品の廃材から生んだ防災マット

太平洋工業株式会社
自動車部品 / 防災 #アップサイクル #防災 #SDGs #SSAP
事業・会社概要
事業会社
太平洋工業株式会社
業界
自動車部品 / 防災
開始年
2024年
代表者
太平洋工業 新規事業開発チーム
サービスサイト
www.pacific-ind.co.jp/product/upcycle/matomat

History & Evolution

2022

SSAPの支援のもと製品開発を開始

ソニー・アクセラレーションプラットフォーム(SSAP)の支援を受け、ウレタン端材を活用した防災マットの構想を事業化に向けて具体化。

2022

役員ピッチで厳しい反対意見

「こんなものは売れない」と経営層から反対されるも、開発チームがリベンジピッチを敢行。

2024

事業化判断・大垣市全小学校に納品

3月に完全な事業化判断が下り、7月に大垣市内全小学校への納品を完了。

2024

「超」モノづくり部品大賞受賞・中部国際空港採用

10月に健康福祉・バイオ・医療機器部品賞を受賞。中部国際空港にも約250枚を納入。

課題・背景

太平洋工業は岐阜県大垣市に本社を置く自動車部品メーカーであり、タイヤバルブやプレス製品を主力としている。自動車部品の製造過程では ウレタンの端材 が大量に発生し、その処理は環境負荷とコストの両面で課題となっていた。

一方、日本は地震・台風・洪水など自然災害の多い国でありながら、 避難所の居住環境は劣悪 であることが繰り返し指摘されてきた。体育館の硬い床に直接横たわることを余儀なくされる避難者にとって、クッション性と断熱性のあるマットは切実なニーズであるが、防災グッズは「いざという時」のために購入しても普段は使われずに倉庫に眠るケースが多かった。

取り組みの経緯

太平洋工業は、 ソニー・アクセラレーションプラットフォーム(SSAP) の支援を受けて新規事業の開発に取り組んだ。SSAPは2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービスを提供している。

開発チームが着目したのは、製造過程で発生するウレタン端材を粉砕・圧縮して クッション素材に再生する というアップサイクルの発想であった。このクッションを学校の椅子に装着し、災害時にはつなげて防災マットとして使うという「フェーズフリー(日常と非日常の境界をなくす)」のコンセプトを導入した。

2022年11月の役員ピッチでは 「こんなものは売れない」 と厳しい反対意見が出た。しかし、開発チームは大垣市の危機管理室や教育委員会と連携し、 大垣市立静里小学校での実証実験 を実施。児童と教員からのフィードバックをもとに製品を改良し、リベンジピッチを敢行して経営層を説得した。2024年3月に完全な事業化判断が下りた。

サービス概要

「MATOMAT(マトマット)」 は、太平洋工業の生産過程で出るウレタン端材を粉砕して固め、カバーをかぶせて製品化した防災マットである。30mmの十分な厚みがあり、 断熱性能とクッション性 に優れている。

最大の特徴は 二用途設計 にある。普段は学校の椅子のクッションとして児童が日常的に使用し、災害時には複数枚をつなげて防災マットとして活用する。「いつも使っているもの」が「いざという時にも役立つ」という設計により、防災グッズの陳腐化・放置という課題を根本的に解決している。

製作には地元大垣の 福祉事業所や地域企業 も携わっており、製品そのものがアップサイクル×地域連携×防災という複合的な社会価値を体現している。フェーズフリー認証も取得済みである。

成果と現状

2024年7月、MATOMATは 大垣市内の全小学校 に納品された。同年10月には2024年「超」モノづくり部品大賞で 「健康福祉・バイオ・医療機器部品賞」 を受賞。さらに 中部国際空港(セントレア) にも約250枚が納入されるなど、学校以外の施設への展開も進行中である。

岐阜県養老町や大野町など周辺自治体への導入も始まっており、自治体向けの防災ソリューションとしての市場が拡大しつつある。自動車部品メーカーが廃材から防災製品を生み出し、地域と連携して事業化したという独自のストーリーは、 製造業のSDGs経営の実践例 として注目を集めている。

この事例から学べること

第一に、「廃材」は新規事業の宝庫であるという気づきである。 ウレタン端材はコストセンターであり、処理費用が発生する厄介者であった。しかし、視点を変えればそれは「無料で手に入る原材料」である。製造業には必ず廃材が存在し、その廃材に新しい用途を見出すアップサイクルは、原価構造において大きなアドバンテージとなる。

第二に、「役員の反対」を乗り越える手段は「現場の事実」であるという教訓である。 「こんなものは売れない」という反対意見に対して、開発チームは論理や数字ではなく、実際に小学校で使ってもらった実証結果で応えた。児童や教員のフィードバックという「現場の事実」は、会議室での推論よりも遥かに説得力がある。

第三に、外部アクセラレーションプログラムの活用が中堅企業のイノベーションを加速するという点である。 太平洋工業は大企業ではあるが、新規事業開発の専門部隊を持つ巨大企業ではない。SSAPという外部プログラムの支援を受けることで、事業開発のノウハウを補完し、製品の構想から事業化までのプロセスを加速させた。

関連項目

成功の鍵

1

「廃材」を「価値」に変えるアップサイクル発想

自動車部品製造で必然的に発生するウレタン端材をコストではなく資源として捉え直し、防災製品に転換した逆転の発想。

2

「フェーズフリー」の製品設計

普段は椅子のクッション、災害時は防災マットという二用途設計により、防災グッズにありがちな「買ったが使わない」問題を解消。

3

地域連携によるものづくり

地元の福祉事業所や企業と連携して製作することで、地域経済への貢献と社会的価値の創出を両立。

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