人物概要
谷村基樹は、シャープ株式会社の新規事業企画開発部に所属し、咀嚼計 「bitescan(バイトスキャン)」 の発案者・開発者として知られるイントラプレナーである。入社3年目の社内研修で着想を得たアイデアを、約5年の歳月をかけて製品化にまで導いた。
経歴
シャープに入社後、 寒冷地向け給湯器の研究開発 に従事し、フランス・スウェーデン・ドイツの先進技術センターを訪問するなど、グローバルな技術動向にも触れる機会を得た。
転機となったのは入社3年目に参加した 社内グループ研修 である。研修チームで「咀嚼」をテーマに議論する中で、よく噛むことが脳の活性化、消化促進、情緒安定などに効果があるにもかかわらず、咀嚼行動を客観的に計測する手段が存在しないことに着目した。この気づきから、耳に装着して咀嚼回数・テンポ・姿勢を計測するウェアラブルデバイスの構想が生まれた。
主な実績
全社プレゼンテーション大会で bitescanのコンセプトが最優秀賞 を獲得し、商品化への道が開かれた。シャープの「戦略的投資枠組み」を通じた資金調達に成功し、構想から約5年で製品化を実現した。
当初は「子どもの食育」「ダイエット」「女性の美容」「高齢者の健康管理」を想定ターゲットとしていたが、実際に市場を探索する中で アカデミック領域 に大きな需要があることを発見した。咀嚼に関する研究を行う研究者や歯科医師が、客観的なデータ収集ツールを求めていたのである。新潟大学歯学部との共同研究をはじめ、学術領域でのbitescan活用が広がっている。
思想とアプローチ
谷村のアプローチの特徴は、 仮説を市場に問い続ける柔軟性 にある。当初想定したBtoCの健康管理市場ではなく、BtoBのアカデミック市場にピボットした判断は、顧客の声に真摯に耳を傾けた結果である。
大企業の若手社員がゼロからアイデアを形にするためには、 社内制度を戦略的に活用する ことが不可欠であるとの実感を持つ。社内研修での着想、プレゼンテーション大会での認知獲得、戦略的投資枠組みでの資金調達と、段階的に社内の支持を積み上げながら事業化を推進した。