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事業事例

AgVenture Lab「JAアクセラレーター」第8期 ― 過去最多274社応募が示すJAグループのオープンイノベーション

事業・会社概要
事業会社
AgVenture Lab(JAグループ)
業界
農業・アグリテック
開始年
2019年
サービスサイト
agventurelab.or.jp
コーポレートサイト
agventurelab.or.jp

History & Evolution

2019-05

AgVenture Lab設立

JAグループ全国8団体(JA全中・JA全農・JA共済連・農林中央金庫・家の光協会・日本農業新聞・JA全厚連・農協観光)が共同で一般社団法人を設立

2019

「JAアクセラレーター」第1期開始

7社を採択し、JAグループのアセットを活用したスタートアップ支援プログラムを開始

2023-05

農林中金キャピタル戦略協創ファンド設立

農林中金キャピタルがAgtech/Foodtech/Climatech領域のスタートアップ投資ファンドを設立、AgVenture Labと連携

2024

第6期に207社応募・9社採択

応募数が大きく伸び、最終審査まで進んだ15社のピッチを経て9社を採択

2025

第7期に189社応募・9社採択

継続的な応募数を維持し、11月のDEMO DAYで各社の成果を発表

2026-05

第8期で過去最多274社が応募・6社採択

GOODGOOD、ビーフソムリエ、農研ネイチャー・ポニックス(北海道枠)、Leacron、SPACECOOL、CULTAの6社を採択

課題・背景:1社では出せないアセットの限界

大企業のアクセラレータープログラムの多くは、「1社が主催し、1社の顧客基盤や販路をスタートアップに提供する」という枠組みで設計される。だが農業のように担い手不足・現場実証フィールドの不足が業界全体の課題である領域では、1社単位のアセットでは太刀打ちできない。

JAグループ も本来は、全国の地域農協が個別に活動する分散構造を持つ。全国組織が共同でアクセラレータの主体を作るという発想は、単独企業のアクセラレータには無い調整の難易度を伴う。

その難易度を乗り越えて生まれたのが、JAグループ全国8団体が共同設立した「 AgVenture Lab(アグベンチャーラボ) 」であり、その中核事業である「 JAアクセラレーター 」である。

取り組みの経緯:8団体が共同で作った中間組織

AgVenture Labは 2019年5月 、JAグループの全国組織8団体――全国農業協同組合中央会(JA全中)、全国農業協同組合連合会(JA全農)、全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)、農林中央金庫、家の光協会、日本農業新聞、全国厚生農業協同組合連合会(JA全厚連)、農協観光――が共同で設立した一般社団法人である。拠点は東京・大手町の大手町ビルヂング9階に置かれた。

この「8団体共同」という設計が、後の「JAアクセラレーター」の強みになる。各団体が個別に持つ流通網・共済基盤・金融機能・組合員ネットワークを、AgVenture Labという単一の窓口を通じてスタートアップに開放できる体制が整った。

2019年にスタートし、今年で8期目となる本プログラムは、「食と農、くらしのサステナブルな未来を共創する」をテーマとして、新しい発想や技術に基づくビジネスプランを募集し、過去最高となる274社のスタートアップから応募がありました。 ―― AgVenture Lab「JAアクセラレーター第8期」採択企業発表より(出典

サービス・事業の仕組み:5〜6か月の伴走と実証費用助成

「JAアクセラレーター」は2019年の第1期開始以来、毎年開催されているプログラムである。採択企業は約 5〜6か月間 、JA全農・農林中央金庫の職員による伴走支援を受けながら、JAグループのアセットを活用した実証実験やビジネスプランのブラッシュアップに取り組む。支援には 最大100万円の実証実験費用助成 も含まれ、プログラムの成果は毎年11月に開催される「DEMO DAY(成果発表会)」で公表される。

2026年5月22日 に発表された第8期では、過去最多となる 274社 が応募し、最終的に 6社 が採択された。採択されたのは、6次化事業を手がける GOODGOOD株式会社 、AI活用による肉の品質・出荷量予測に取り組む 株式会社ビーフソムリエ 、国内未利用資源を活用した有機質液肥事業の 農研ネイチャー・ポニックス株式会社(北海道枠)、水稲施肥のスマート化ツールを開発する 株式会社Leacron 、遮熱素材「世界に木陰の涼しさを」を掲げる SPACECOOL株式会社 、気候変動対応の新品種農業に取り組む 株式会社CULTA の6社である。

成果と現状:52社超の採択実績と提携事例

JAアクセラレーターは2019年の第1期から積み上げを続けてきた。第1期7社、第2期8社という規模から始まり、応募数は年を追うごとに拡大している。第6期(2024年)では 207社 の応募から最終審査まで進んだ15社のピッチを経て9社が採択され、第7期(2025年)でも 189社 の応募から9社が採択された。第1期から第6期までの累計採択数は 52社 を超える。

この積み上げの中で、実際の事業連携に発展した事例もある。第5期に採択された水産系スタートアップ 株式会社ベンナーズ は、プログラムを通じて新規OEM先を開拓し、複数県の漁協との関係構築に成功した。ピッチコンテストで終わらず、JAグループの現場に接続した実証の先に、具体的な取引・提携が生まれている。

さらに 2023年5月 には、農林中金キャピタルが「農林中金キャピタル戦略協創ファンド」を設立した。Agtech・Foodtech・Climatechといった領域のスタートアップへの投資を、AgVenture Labとも連携しながら進める体制であり、アクセラレータ(伴走・実証)とファンド(資金)を両輪で持つ構造が整いつつある。

この事例から学べること

AgVenture Labの事例が示すのは、「アクセラレータのアセットは1社で完結させる必要がない」という設計思想である。業界に複数の企業・団体が存在し、それぞれが個別のアセット(流通・金融・共済・メディア)を持つ場合、それらを共同出資の中間組織に集約すれば、単独企業では提供できない規模のアセットをスタートアップに開放できる。

新規事業・オープンイノベーションの担当者が自社単独のアセットで頭打ちを感じているなら、「自社に何があるか」に加えて「誰と組めば業界横断のアセットになるか」も問うてみる価値がある。

関連項目

参考文献・出典

成功の鍵

1

業界横断8団体による共同運営という設計

1社の企業ではなく、JA全中・JA全農・農林中央金庫など全国組織8団体が共同でアクセラレータの主体を作った。単独企業には無い、業界横断のアセットを一つの窓口に集約する発想

2

現場実証フィールドという物理アセットの開放

組合員基盤・流通網・現場実証フィールドをスタートアップに開放し、最大100万円の実証実験費用も助成する。机上のピッチで終わらせない仕組み

3

7年・8期続く継続性が生む信頼

2019年の開始から毎年欠かさず開催し、応募数は年々拡大。2026年の第8期では過去最多の274社が応募した

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