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事業事例

大同生命「どうだい?」――保険を売らない経営者コミュニティが12万人に達するまで

大同生命保険株式会社
生命保険 / 中小企業支援 / コミュニティプラットフォーム #保険 #中小企業 #コミュニティ #非保険領域 #新規事業 #プラットフォーム
事業・会社概要
事業会社
大同生命保険株式会社
業界
生命保険 / 中小企業支援 / コミュニティプラットフォーム
設立/開始
2022年3月(サービスリリース)
開始年
2022年
代表者
長谷部隆(お客さまバリュー開発部 部長)
本社
大阪府大阪市
サービスサイト
dodai.daido-life.co.jp
コーポレートサイト
www.daido-life.co.jp

History & Evolution

2022年3月

「どうだい?」サービスリリース

中小企業経営者向けオンラインコミュニティをリリース。新型コロナ禍での経営者の孤立問題に対応する約2年間の開発期間を経て公開。

2022年〜2023年

ユーザー数が伸び悩む時期

リリース直後から半年間は横ばい状態が続く。1年後には約3万5,000人に到達。

2023年

お客さまバリュー開発部を新設

営業企画部のサービス開発課から独立昇格。中小企業向けサービス開発の専門部門として体制を強化。

2023年8月

ユーザー数4万4,000人超

Biz/Zine掲載時点(2023年8月)のユーザー数。コミュニティ機能・勉強会・記事等が機能し始め増加傾向に。

2025年頃

ユーザー数10万人到達

サービス開始から約3年で10万人を達成。業種・地域を越えた経営者間の自発的なコミュニケーションが定着。

2026年4月時点

12万人超に拡大

Biz/Zine(2026年4月24日)掲載時点でユーザー数12万人超を突破。お客さまバリュー開発部が健康・経営領域の複数無料サービスを展開中。

課題・背景:300万社の経営者が「孤独」である現実

日本には約300万社の中小企業が存在する。その経営者の多くは、日常的に深刻な経営判断を一人で下している。同業他社には競合関係があり、取引先・金融機関・顧問税理士には利害関係がある。本音の相談ができる相手が構造的にいない環境の中で、中小企業経営者は「孤独」に置かれている。

大同生命保険は、創業120年を超える老舗生命保険会社として、税理士代理店を通じた中小企業経営者との接点を長年築いてきた。営業担当者が現場で感じていたのも同じ問題意識だった。「知識や経験を持ちながら、それが属人化・分断されていて活かされていない」——中小企業の間でつながりが生まれれば、相互の知恵が社会全体の価値になるはずだという確信が、サービス開発の起点となった。

新型コロナウイルスの流行は、この問題をさらに鮮明にした。対面コミュニケーションの機会が失われ、経営者の孤立は一段と深まった。これが2年間の開発期間を経た2022年3月のリリースを後押しした。

取り組みの経緯:「保険を売らない」という覚悟の事業設計

大同生命が「どうだい?」の設計で最も重視したのは、コミュニティに保険商材を直接組み込まないという方針だ。生命保険会社がコミュニティを運営する場合、自社商品のクロスセルに活用する設計が一般的だ。しかしそれをすれば、経営者は「また保険を売られる場所」として忌避する。

お客さまバリュー開発部・長谷部隆部長はこの方針について「同業他社や利益関係のある相手には本音で相談できない実態がある」と述べている。利益関係を持ち込まないことで初めて、経営者が本音で語り合える場が成立するという逆説的な設計思想だ。

2023年には、営業企画部のサービス開発課を昇格・独立させる形で「お客さまバリュー開発部」を新設した。このタイミングには象徴的な意味がある。サービス開発が単なる施策ではなく、保険事業と並立する独立した事業機能として位置づけられた。

長谷部部長は、1998年の入社以来、営業・地方の税理士代理店組織担当・商品部・企画部を経てこの部門を統括する。現場での中小企業接点と本社機能の両方を経験した人物が組織を率いる体制が、コミュニティ設計の現実性を支えている。

「長年中小企業と向き合ってきた120年超の歴史を持つ老舗保険会社としての『恩返し』である」

―― 長谷部隆(大同生命保険 お客さまバリュー開発部長)、Biz/Zine取材(2026年4月)

サービス・事業の仕組み:匿名・オンラインで経営者をつなぐプラットフォーム

「どうだい?」は「相談する」「学ぶ」「試してみる」の3軸でサービスを構成する。中小企業経営者が匿名でアクセスし、経営課題・人材・資金・業種ごとのテーマに沿って相談・回答を投稿できるコミュニティ機能を中核に置く。

匿名性はプラットフォームの根幹設計だ。本名・社名を出さずに「利益率が低下しているが打ち手が見つからない」「後継者問題に悩んでいる」といった経営課題を率直に問える環境が、同業他社や取引先には相談できない問題を表に出すことを可能にする。

保険商品の直接販売を行わない一方で、関連する無料サービスを複数展開している。健康領域では「KENCO SUPPORT PROGRAM」(健康診断管理・運動支援アプリ)、経営領域では災害時従業員安否確認システム・人材採用・育成支援・IT活用相談などを無料で提供する。コミュニティへの参加価値を保険とは独立した形で提供することで、ユーザーの滞在と継続利用を促す設計だ。

コミュニティはオンライン起点だが、ユーザー主導のオフ会やイベントへの出展なども自発的に生まれており、業種・地域を超えた経営者間の水平的なネットワークが形成されつつある。

成果と現状

リリース直後のユーザー数は伸び悩んだ。1年後(2023年3月時点)で約3万5,000人、2023年8月時点で4万4,000人超、サービス開始から約3年で10万人を達成し、2026年4月時点で12万人超に拡大した。

単なる会員数の増加にとどまらず、ユーザー発案による商品紹介・販路拡大支援など、プラットフォーム上での経済活動も生まれている。業種・地域の壁を越えた経営者間の自発的なコミュニティ活動が定着しつつあることが、数字の背景にある。

大同生命にとっての間接的な効果として、コミュニティへの参加を通じた顧客との長期的な関係深化が挙げられる。保険を売る接点から、経営を支える接点へ——顧客との関係の質を変えることが、長期的な顧客生涯価値に貢献するという仮説が、12万人という規模で検証されつつある段階にある。

この事例から学べること

「売らない」という制約が、逆説的に市場をつくる。 保険会社が保険を売らないコミュニティを運営するという逆説は、経営者が「また売られる」という警戒を解除する。商業的意図を前面に出さないことが、参加者の本音を引き出し、プラットフォームの価値を高める。この逆説は、大企業が既存事業の延長で新市場を開こうとする際の設計原則として汎用性が高い。

「恩返し」という内発的動機が、組織を動かし続ける。 収益モデルが間接的な「どうだい?」の運営は、短期の事業評価指標だけで動かすことが難しい。120年の中小企業接点への「恩返し」という理念が、事業の正当性と担当者の動機を同時に支えている。大企業の新規事業において、財務的KPIだけでなくミッション的な理念が組織の継続力を左右する事例として参照価値が高い。

3年で10万人超えた「伸び悩み期の乗り越え方」に学べる。 リリース直後の横ばいを経て、コミュニティ機能・勉強会・記事コンテンツの充実と、無料付帯サービスの拡張がユーザー定着を生んだ。コミュニティ型サービスは立ち上げ期のコールドスタート問題が最大の壁だが、既存の120年の顧客接点を初期の「種」として活用できたことが大同生命固有の強みとして機能した。

関連項目

参考文献・出典

成功の鍵

1

「保険販売しない」という逆説的な信頼設計

利益関係のない場として設計することで、経営者が本音で相談できる環境を確保。保険会社が運営するにもかかわらず保険を売らないという方針が、かえってコミュニティへの信頼を生む。

2

120年の中小企業接点を「恩返し」に転換

創業120年超の大同生命が蓄積してきた中小企業経営者との関係資本を、コミュニティ運営という形で社会に還元。「恩返し」という理念が組織の動機づけと対外的な正当性の両方を支える。

3

匿名性による本音の引き出し

同業他社・利害関係者には相談できない経営課題を、匿名のオンライン環境で打ち明けられる設計。「経営者の孤独」という構造的問題に対する精度の高い解決策。

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