広告テック企業が「社会貢献」に舵を切った理由
「 gooddo(グッドゥ) 」は、セプテーニ・ホールディングスのグループ内ベンチャーとして誕生した社会貢献プラットフォームである。ユーザーが 無料で 応援したい社会貢献団体を支援できる仕組みを提供し、ソーシャルセクターの活性化に取り組んでいる。
起案者の 下垣圭介 は2006年にセプテーニに新卒入社した。インターネット広告の運用という本業の中で、「広告テクノロジーのトラフィック獲得や収益化の仕組みを、社会課題の解決に転用できないか」という着想を得た。2013年9月、日常のアクション(クリック、SNSシェアなど)を通じて社会貢献団体に支援金が届く仕組み「gooddo」を開設した。
「無料で参加できる」社会貢献の仕組み
gooddoの画期的な点は、ユーザーが 金銭を一切支払わずに社会貢献に参加できる 仕組みにある。ユーザーはgooddoのサイト上で応援したいNPO団体を選び、クリックやSNSでのシェアといった簡単なアクションを行う。その行動に応じて、gooddoの広告収益から支援金が対象団体に寄付される。
この「広告モデル×寄付」の仕組みは、社会貢献に参加する際の最大のハードルである「お金がかかる」という障壁を完全に撤廃した。「社会貢献に興味はあるが、寄付するほどの余裕はない」という多数のサイレントマジョリティの行動を変え、社会貢献の裾野を劇的に広げることに成功した。
グループ内ベンチャーとしての法人化
gooddoは2013年のサービス開始後、順調にユーザーと支援団体を拡大した。2014年10月、セプテーニ・ホールディングスはgooddoを独立した法人「 gooddo株式会社 」として子会社化し、下垣が代表取締役に就任した。
新卒入社から8年で新規事業を起案し、グループ内ベンチャーの代表にまで上り詰めたキャリアパスは、セプテーニグループの「 挑戦する人を支援する文化 」を象徴している。法人化により、独自のサービス開発やメディア展開がより機動的になり、2020年にはCIを「 いいこと、しやすく。 」に刷新してサービスの提供チャネル拡大を推進した。
成果と現状
gooddoの累計訪問者は 約3,300万人 に達し、年間 50万人以上 のユーザーが無料の社会貢献に参加している。国内NPO団体への総支援金額は 2億円 を突破した。情報メディア「 gooddoマガジン 」では、貧困問題、飢餓問題、SDGsなど幅広い社会課題の情報発信も行い、社会貢献への入り口を多角的に用意している。
セプテーニグループの本業であるデジタルマーケティングの知見がgooddoの集客と運営に直結しており、広告テック企業ならではの効率的なトラフィック獲得が事業の成長を支えている。
この事例から学べること
第一に、本業の技術・ノウハウの「社会課題への転用」という発想である。 セプテーニの本業は広告運用であり、社会貢献とは一見無関係である。しかし「トラフィックを集め、収益化する」という広告テクノロジーの本質は、そのまま「社会貢献への参加者を集め、支援金に変換する」仕組みに転用できた。自社の強みの「使い先」を変えるという発想が新規事業の起点となっている。
第二に、「参加障壁の撤廃」というUX設計の力である。 「無料で社会貢献できる」という一点のブレイクスルーが、数千万人規模のユーザーを惹きつけた。新規事業は「新しい機能の追加」ではなく、「既存の障壁の除去」から生まれることがある。gooddoは寄付という行為の「お金」という障壁を取り除いただけで、巨大な潜在市場を顕在化させた。
第三に、「新卒社員の起案→法人代表」というキャリアパスの設計である。 大企業グループにおいて、新卒入社の若手社員が新規事業を起案し、法人の代表にまで成長できる環境は珍しい。この成功体験がグループ内で共有されることで、次の起業家候補が育つ好循環が生まれる。制度以上に重要なのは、「実際にそうなった人がいる」という前例の力である。


