課題・背景
EC市場の急拡大に伴い、 宅配便の取扱個数は年間50億個 を超える水準に達している。しかし、ドライバー不足と再配達コストの増大により、物流業界は慢性的な「 ラストワンマイル問題 」を抱えていた。
特にフェリシモのような 定期便型のEC事業者 にとって、毎月の大量出荷にかかる物流コストは経営を圧迫する最大の固定費のひとつであった。既存の宅配便は「対面受け渡し」を前提とした高品質・高コストなモデルであり、必ずしもすべての荷物に必要なサービス水準ではなかった。
取り組みの経緯
フェリシモは自社の物流課題を解決するため、物流大手のセイノーホールディングスに連携を持ちかけた。2019年、フェリシモ・セイノーHD・ココネット(セイノーHD子会社)・電警の4社で ジョイントベンチャー「LOCCO(ロッコ)」 を設立した。
「LOCCO」の社名は「Low Cost Carrier Operator」に由来する。航空業界のLCC(格安航空)と同じ発想で、 サービスを必要最小限に絞ることで低価格を実現する 物流モデルの構築を目指した。
2019年末にフェリシモ会員向けの東京都内での実証実験を実施。その結果、利用者の利便性を維持しながら 物流コストを10%以上削減 できることが実証された。
サービス・事業の概要
「 OCCO(オッコ) 」は、LOCCO社が提供する 業界初のLCC宅配サービス である。セイノーHDグループが持つ 全国画一の幹線輸送網 で荷物を中継拠点まで運び、そこから先の「ラストワンマイル」を ギグワーカー が担う二層構造が最大の特徴である。
配送方法は 「置き配」に限定 している。対面受け渡しと再配達を排除することで、ドライバーの拘束時間と再配達コストを大幅に削減した。利用者にとっても不在時に受け取れるメリットがある。
ギグワーカーのネットワークは、2020年9月にセイノーHDグループに加わった リビングプロシードの約1万人の配布員 で大幅に拡充された。フリーペーパーの配布業務で培った「各戸へ届ける」スキルとネットワークをそのまま物流に転用した形である。
成果と現状
OCCOは2020年の首都圏でのサービス開始以降、順次エリアを拡大している。フェリシモの定期便を中心に、 対面不要で低コストの配送 を求めるEC事業者への導入が進んでいる。
物流コスト10%以上の削減という実証結果は、人件費高騰に悩むEC業界にとってインパクトのある数値である。「 必要なサービスレベルに見合った適正コスト 」という発想は、過剰品質が常態化していた日本の物流業界に一石を投じた。
LOCCO社はOCCOで構築した 物流APIの外部開放 も視野に入れており、プラットフォーム型ビジネスへの発展を模索している。
この事例から学べること
第一に、「サービスの引き算」による新市場創出である。 既存の宅配便が提供する対面受け渡し・時間指定・再配達という「フルサービス」を前提から外し、置き配に限定した。航空業界のLCCと同じ原理で、過剰品質を削ぎ落とすことで新たな価格帯と顧客層を開拓できることを証明した。
第二に、「荷主自身が物流を再設計する」というアプローチの有効性である。 フェリシモは物流会社ではなくEC事業者だが、月間数十万件の出荷を持つ「荷主の当事者」として物流の課題を最も深く理解していた。課題の当事者がソリューション設計に参画するJV型は、異業種連携の成功確率を高める構造である。
第三に、既存の「遊休リソース」の発見と転用である。 リビングプロシードの約1万人のフリーペーパー配布員は、すでに各戸を訪問するルーティンを持っていた。この「遊休リソース」を物流に転用するという発想は、シェアリングエコノミーの原理を法人間連携に応用した好例である。


