オープンイノベーション
オープンイノベーション(Open Innovation) とは、社外の知識・技術・アイデアを積極的に活用し、イノベーションを推進するアプローチのことである。「OI」と略されることもある。
自前主義の限界が明らかになる中、スタートアップや異業種との連携を通じて新規事業の創出スピードを加速する手法として、大企業の間で急速に普及が進んでいる。以下では、オープンイノベーションの具体的な推進手法と、社外連携を成功させるためのポイントを解説する。
自前主義では市場のスピードに追いつけない
日本の大企業は長年「自前主義」で技術開発を進めてきた。しかし、技術の複雑化と イノベーションサイクルの短縮 により、自社内の研究開発だけでは市場のスピードについていけなくなっている。 研究開発費を毎年数百億円 投じながらも、新規事業の成功率は低いまま。
一方、少人数のスタートアップが数年で業界を塗り替える事例が世界中で続出している。問題の本質は、大企業の中に必要な知識・技術・アイデアの全てが揃っているという前提が崩壊していることにある。
社外のリソースを積極的に取り込む「オープンイノベーション」の発想なくして、大企業がイノベーションを起こし続けることは極めて困難な時代になっている。
200億円の自社開発を50人のスタートアップに先行された教訓
ある電機メーカーの研究開発部門は、 5年間で200億円 を投じて次世代センサーの開発を進めていた。しかし、海外のスタートアップが 50人のチームで同等の技術を3年で実用化 し、市場を先取りされた。
衝撃を受けた経営陣は方針を180度転換し、オープンイノベーション推進室を設立。しかし、最初の1年は「スタートアップと何を話せばいいか分からない」「NDA交渉に3ヶ月かかる」「PoC予算の稟議が通らない」という壁に阻まれ、成果はゼロだった。
転機は、KDDIのMUGEN LABOをモデルにした アクセラレータープログラムの導入 だった。外部パートナーの支援を受けながら、初年度は 5社との協業を実現 し、うち2社との共同開発が事業化に向けて進行中である。
社外連携を推進する3つの実践手法
オープンイノベーションを実効的に推進するための具体的手法は以下の3つである。1)アクセラレータープログラムの運営:自社の事業課題をテーマとしてスタートアップを公募し、3〜6ヶ月の協業プログラムを実施する。KDDIのMUGEN LABOやソフトバンクのイノベーションプログラムが代表例である。明確な課題設定と意思決定者の参画が成功の鍵となる。
2) CVCによる戦略的投資:コーポレートベンチャーキャピタルを通じてスタートアップに出資し、資本関係を起点とした技術連携・事業連携を推進する。単なる財務リターンではなく、 事業シナジーを目的 とすることが重要である。
3) 橋渡し人材の確保:大企業とスタートアップの 文化・スピード・言語の違い を翻訳できる人材が不可欠である。フィラメントのような専門企業の支援を活用するか、社内でスタートアップ経験のある人材を登用する。
スタートアップとの対話を2週間以内に始める
オープンイノベーションの推進に向けて明日から取り組むべきことは明確である。まず、自社の新規事業テーマのうち「社内だけでは解決できない技術課題」を3つリストアップする。次に、その課題を解決しうるスタートアップを各テーマ5社ずつ調査する。CrunchbaseやINITIAL(日本のスタートアップDB)を活用すれば、1日で候補リストは作成可能である。
さらに、最初の1社とのカジュアル面談を2週間以内に設定する。NDAや契約の話はまだ不要で、まずはお互いの課題と強みを共有するところから始める。
同時に、社内の法務・知財部門に「スタートアップとの協業における 簡易契約テンプレート」の準備を依頼する。 契約交渉のスピード がオープンイノベーションの成否を分ける。
自社だけでは技術課題を解決できない企業へ
オープンイノベーションが特に有効なのは、以下のような企業・担当者である。自社の研究開発だけでは新規事業のスピードが追いつかないと感じている技術開発部門の責任者。スタートアップとの協業を経営層から求められているが、具体的なアプローチが分からないイノベーション推進担当者。
また、既存事業の周辺領域にビジネスチャンスを見出しているが、自社には該当技術がない事業開発マネージャーにも有効である。一方で、コア技術が競争優位の源泉であり外部に開示できない領域や、自社内で十分な技術開発力を持つ分野では、クローズドイノベーションの方が適切な場合もある。
まず1社との対話から始めよう
オープンイノベーションはCVCやアクセラレータープログラムを通じて実践される。社内のイントラプレナーがオープンイノベーションの推進役となるケースも多い。出島戦略を採用し、既存組織から独立した形でスタートアップとの協業を進めることで、意思決定のスピードを確保できる。KDDIのKDDI MUGEN LABOやソフトバンクのソフトバンクイノベーションプログラム、NTTデータの39worksの事例を研究し、自社に合ったオープンイノベーションの形を見つけてほしい。まずは今月中に1社のスタートアップと対話を始めることが、最初の一歩である。
関連ページ
IntraStar NEWS
新規事業の事例・セミナー情報・スタートアップの資金調達情報を
ほぼ毎週お届け。1,200名超のイントラプレナーが読んでいます。
Powered by Substack ・ いつでも配信停止できます