課題・背景
在宅介護の現場では、 紙おむつの「モレ」が深刻な問題 となっている。施設介護と異なり、在宅では排泄ケアの専門家が常駐しておらず、利用者や家族が自力で適切なおむつを選ぶことは極めて困難である。サイズや吸収量が合わないおむつを使い続けることで、モレによる衣類・寝具の汚染が繰り返され、介護者の負担が増大する悪循環が生じていた。
紙おむつ市場には多種多様な製品が存在するが、 利用者一人ひとりの体型や排泄パターンに合った製品を選定する知識は専門的 であり、一般の介護者には敷居が高い。ドラッグストアで手に取れる情報だけでは、最適な組み合わせに辿り着くことは難しかった。
取り組みの経緯
この課題に対し、三菱商事グループの介護用品レンタル・販売会社である 日本ケアサプライ と、紙おむつ「リフレ」ブランドを展開する リブドゥコーポレーション 、そして三菱商事の3社が協業し、フィッティング付きおむつ配送サービス「 おむピタ 」を企画した。
リブドゥコーポレーションには「リフレサポーター」と呼ばれる排泄ケアアドバイザーが在籍しており、施設向けには以前からフィッティング支援を行っていた。このノウハウを在宅介護にも横展開するという着想が、サービスの原点である。
サービス概要
おむピタの仕組みは以下の通りである。まず、訪問介護などの 在宅介護サービス事業者が利用者の身体情報や排泄状況をヒアリング し、その情報をリブドゥコーポレーションの専門家に共有する。専門家は遠隔で最適なおむつの組み合わせを選定し、 試供品と選定理由を記載した提案書を利用者宅に配送 する。
利用者や家族、ヘルパーは実際にフィット感や使い心地を確認した上で購入を判断できる。「買ってから合わなかった」というリスクを排除した、 「試してから買う」モデル である。介護事業者にとっては保険外サービスとして新たな収益源となり、利用者にとってはモレの悩みから解放される。三方良しの構造が特徴である。
成果と現状
おむピタは西日本エリアから段階的にサービスを開始し、2025年3月に関東エリア、同年6月には全国展開を予定している。単なるおむつ販売ではなく、 専門知識に基づくフィッティングという「知的サービス」を付加した点 が、在宅介護市場において新たな価値提案として注目を集めている。
介護事業者からは、利用者満足度の向上と保険外収益の確保という2つのメリットが評価されている。リブドゥコーポレーションにとっても、従来の施設向けB2Bビジネスに加え、在宅という巨大な市場への新たなチャネルを開拓する戦略的意義がある。
この事例から学べること
第一に、既存の専門ノウハウの「用途転換」が新規事業の鍵になるという点である。 リブドゥが施設向けに蓄積してきたフィッティングの知見を、在宅介護という未開拓の領域に横展開した。自社が「当たり前」に持っている能力が、別の文脈では高い価値を持つことがある。
第二に、異業種3社の協業が実現した「役割分担の妙」である。 排泄ケアの専門知識(リブドゥ)、介護用品の物流網と顧客接点(日本ケアサプライ)、事業投資と経営支援(三菱商事)。いずれか1社だけでは成立しないサービスを、各社の強みを組み合わせることで実現した。
第三に、「モノ売り」から「コト売り」への転換が新規事業の本質であるという点である。 おむピタが売っているのはおむつではなく、「モレない安心感」というサービス体験である。コモディティ化した製品市場において、サービスレイヤーを上乗せすることで新たな収益機会を生み出した好例である。


