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事業事例

資生堂研究所発「fibona(フィボナ)」、7年で製品化まで到達――CVCでも社内公募でもない共創モデル

事業・会社概要
事業会社
資生堂
業界
化粧品・ビューティーテック
開始年
2019年
サービスサイト
spark.shiseido.co.jp/fibona/story
コーポレートサイト
corp.shiseido.com

History & Evolution

2019-04

資生堂グローバルイノベーションセンター(GIC)本格稼働

横浜に開設された研究拠点。ここを母体に、社外との共創プログラムが立ち上がる

2019-08

「fibona(フィボナ)」発表

デジタルアルティザン・no new folk studio・ユカシカドの3社とのコラボレーションを発表。ビューティー領域の新価値創造と、化粧品にとどまらないイノベーション創出を掲げる

2021

セントマティック株式会社を採択、韓国スタートアップの募集も開始

国内の採択に加え、海外展開の第一弾として韓国のスタートアップ募集を開始。共同開発は2023年1月から始まる

2022-09

「fibona IN CHINA」開始

「Medical Beauty Technology」「Holistic Beauty Technology」をテーマに中国のスタートアップを募集。ピッチイベントの通過企業が100日間の検証期間を経て最終審査に臨む

2025-05

「Stress G Harmonizer」ミスト発売

2018年の「ストレス臭」研究知見を基にした製品が、fibona Lab(Shiseido Beauty Park内)で発売

課題・背景:研究所は「外」に開きにくい

大企業のオープンイノベーションは、事業部が主導するアクセラレータか、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)による出資のどちらかに偏りやすい。どちらも起点は事業部門か投資部門であり、研究部門はその後ろで技術シーズを提供する役回りにとどまることが多い。

化粧品会社の研究所も本来は、自社の基礎研究に閉じがちな組織である。社外のスタートアップと組むには、研究者自身が「発表する論文」から「一緒に製品を作る相手」へと向き合い方を変える必要があり、事業部主導の協業にはない難しさを伴う。

その難しさに、研究所側から踏み込んだ例がある。

資生堂グローバルイノベーションセンター(GIC) が主体となるオープンイノベーションプログラム「 fibona(フィボナ) 」だ。

取り組みの経緯:GICが2019年に打ち出した4つのプラン

GICは 2019年4月 に本格稼働した資生堂の研究拠点である。同年 8月 、GICはfibonaを発表し、デジタルアルティザン・no new folk studio・ユカシカドの3社とのコラボレーションを明らかにした。

ビューティー領域における新価値創造や化粧品だけにとどまらないイノベーションの創出 ―― fibona発表時のコンセプトより(出典

fibonaは発足時、4つの活動プランを掲げた。スタートアップとのコラボレーション、生活者とのコラボレーション、β版の市場投入、そして研究風土の醸成である。「β版を市場に出す」という一文が示す通り、fibonaは発表や協業合意で終わるプログラムとしては設計されていない。

サービス・事業の仕組み:拠点を持ち、海外へ広げる

fibonaの活動拠点は、横浜市西区にある「Shiseido Beauty Park」1階の「fibona Lab」に置かれている。研究所発のプログラムでありながら、社外のスタートアップや生活者が直接訪れられる場所を持つ点が特徴だ。

採択の実績も積み重なっている。2021年11月24日 のピッチ審査を経て、香りのテクノロジーを扱うセントマティック株式会社を含む2社が採択された。同じ 2021年 、fibonaは国内にとどまらず、海外展開の第一弾として韓国のスタートアップ募集を始め、共同開発は 2023年1月 から始まっている。国内の採択と海外への窓口開放を、fibonaは同じ年に並走させている。

海外展開はさらに広がる。2022年9月 には「fibona IN CHINA」として、中国のスタートアップを対象にした活動が始まった。テーマは「Medical Beauty Technology」と「Holistic Beauty Technology」の2つ。ピッチイベントを通過した企業は、9月から 100日間 の検証期間に入り、12月の最終審査に臨む設計になっている。1回のピッチで終わらせず、100日という検証期間を挟むことで、共創のアイデアを実証まで進める仕組みだ。

成果と現状:共創が製品として店頭に並ぶ

fibonaの取り組みは、協業発表だけでなく実際の製品として形になっている。2025年5月 、fibona発の製品「Stress G Harmonizer」というミストが発売された。

この製品の起点は資生堂が 2018年 に見つけた研究知見にある。緊張によるストレスを受けると、皮膚から特徴的なニオイが生じるという発見だ。「ストレス臭」――化粧品会社が普段掲げる「香りで魅せる」とは逆方向の、いわば消したいニオイの研究である。この知見を基に、心理状態への働きかけを狙った香料を配合したのが「Stress G Harmonizer」であり、fibona Lab を発売の場としている。

2019年の発足時に掲げた「β版を市場に出す」というコンセプトが、6年後に実際の製品発売として結実した格好だ。国内での採択実績、韓国・中国への地域拡張、そして製品化という3つの軸が、単発の企画で終わらずに積み重なっている点が、fibonaを7年続くプログラムにしている。

この事例から学べること

fibonaが示すのは、オープンイノベーションの主体を事業部やCVCに限定する必要はない、という設計の選択肢である。研究部門が技術シーズの供給源にとどまらず、社外スタートアップとの共創そのものを担い、実証の場(拠点)と時間(検証期間)を用意すれば、研究所発のプログラムでも製品化まで到達できる。

自社の研究開発部門が社外との接点を持てずにいると感じている新規事業・R&D企画の担当者にとって、「研究所を外部共創のハブにする」という選択肢は、事業部主導のアクセラレータやCVCとは別の答えになりうる。

関連項目

参考文献・出典

成功の鍵

1

研究所自身が共創の主体になる設計

事業部主導のアクセラレータでも、CVCによる出資でもなく、研究所(GIC)が社外スタートアップと直接組む。研究者の役割を「基礎研究」から「共創のハブ」へ広げた

2

国内発表で終わらせず海外へ拠点を広げた

2021年の韓国、2022年の中国と、共創の対象を段階的に海外へ広げている。1回限りの実験ではなく、地域を変えながら型を反復している

3

共創を実際の店頭製品まで到達させた

ピッチや協業発表で終わらず、fibona発の知見を反映した製品を実際に発売している。「β版を市場に出す」という当初のコンセプトを7年後も実践している

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