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事業事例

Space BD シリーズC:宇宙商社モデルで24億円調達・初黒字を達成

Space BD
宇宙・航空 #宇宙ビジネス #スタートアップ #CVC #三菱HCキャピタル #宇宙商社 #JAXA
事業・会社概要
事業会社
Space BD
業界
宇宙・航空
設立/開始
2017年9月
開始年
2026年
代表者
永崎将利
本社
東京都中央区
サービスサイト
www.space-bd.com
コーポレートサイト
www.space-bd.com

History & Evolution

2017年9月

Space BD 設立

永崎将利が「宇宙商社」を標榜し創業。宇宙ビジネスへの参入障壁を下げる流通プラットフォームの構築を目指す

2025年12月

JAXA宇宙戦略基金に採択

高頻度打ち上げロケットの部品・システム開発領域でJAXA宇宙戦略基金の支援対象に選定

2026年1月

シリーズCで24億円調達・東京都SusHi Tech Global採択

三菱HCキャピタルをリード投資家に、みずほキャピタル・紀陽キャピタルマネジメント・NVenture Capitalが参加。累計調達額は約45.8億円に。同月、東京都「SusHi Tech Global」第1期採択スタートアップにも選定

2024年3月期

創業以来初の黒字化達成

2024年3月期決算で初の黒字転換。宇宙商社モデルの事業持続性を財務面で実証

課題・背景:宇宙産業の商業化を阻む参入障壁

宇宙ビジネスへの参入を検討する企業が直面する最大の壁は「どこに、どう頼めばいいのかわからない」という情報・接続の非効率だ。

JAXAやNASAが運用する国際宇宙ステーション(ISS)への物資輸送枠、H-IIAやSpaceXのロケット搭載スペースは一定量が民間企業向けに開放されている。しかし、これらのリソースへのアクセス方法・手続き・価格帯・利用条件に関する情報は整理されておらず、宇宙利用に取り組もうとする企業は都度、複雑な調整コストを負担してきた。

一方で「宇宙で何かしたい」というニーズは製造業・食品・農業・教育など幅広い分野から生まれている。微小重力環境での素材実験、宇宙線の照射、小型衛星の打ち上げ——これらはそれぞれ「研究開発投資」として経営の俎上に乗せられる機会があるにもかかわらず、入口がわからないまま機会損失が続いてきた。

この構造的な情報格差と接続コストこそが、Space BDが解こうとした課題だ。

取り組みの経緯:宇宙商社モデルの確立

2017年9月に永崎将利が設立したSpace BDは、自社を「宇宙商社」と定義した。宇宙産業における「伊藤忠・三菱商事」的な役割——技術開発ではなく、需要と供給をつなぐ流通機能——に特化するという判断だ。

当初の事業はISSへの物資輸送枠の仲介から始まった。日本実験棟「きぼう」での実験スペースや、ISSに向かう補給機の積載枠を民間企業が利用できるよう仲介するモデルだ。ロケット打ち上げ数の増加とともに、搭載枠の販売・調整機能へと事業領域を広げ、現在は人工衛星の打ち上げ支援・宇宙利用コンサルティングまでをカバーする。

資金調達は段階的に進めてきた。シリーズA・B調達を経て2026年1月のシリーズCで24億円を調達し、累計調達額は約45.8億円に達した。リード投資家の三菱HCキャピタルとは資本業務提携も締結しており、単なる財務投資家ではなく事業パートナーとしての関係構築を図っている。

サービス・事業の仕組み:ロケット搭載枠の流通プラットフォーム

Space BDのビジネスモデルは「宇宙リソースの仲介・販売」を中核に据える。

ISSおよびロケット搭載枠の販売では、JAXAや海外の打ち上げプロバイダーから取得した搭載スペースを、実験・衛星打ち上げを検討する企業向けに販売する。顧客は打ち上げプロバイダーと直接交渉する必要がなく、Space BDが仕様確認・スケジュール調整・書類手続きをワンストップで担う。

人工衛星打ち上げ支援では、超小型衛星(CubeSat)の製造・打ち上げを検討する企業に対し、打ち上げ機会のマッチングから衛星設計支援まで提供する。宇宙利用の初期段階をハードルなく進められるよう、技術支援と流通機能を組み合わせた体制だ。

宇宙利用コンサルティングでは、製造業・食品・農業・研究機関など多様な産業から寄せられる「宇宙環境を使いたい」というニーズに応え、どのプログラム・どの打ち上げ機会が最適かを設計する。

2025年12月にはJAXA宇宙戦略基金(高頻度打ち上げロケットの部品・システム開発)に採択されており、供給側の開発領域にも関与を深めている。これは流通機能だけでなく、宇宙産業のインフラ層にも価値提供の軸を広げる動きだ。

成果と現状:シリーズCと初黒字達成

2024年3月期に創業以来初の黒字化を達成した事実は、宇宙商社モデルの経済的持続可能性を示す最大の根拠だ。宇宙スタートアップは先行投資が大きく、黒字転換までの期間が長くなりがちな中で、設立7年での黒字化は一定の評価軸となる。

2026年1月のシリーズC調達(24億円)では、三菱HCキャピタルをリード投資家に、みずほキャピタル・紀陽キャピタルマネジメント(和歌山の地方銀行VC)・NVenture Capital(NTTグループ系と推定)が参加した。投資家構成の多様性——大手リース系・都市銀行系・地方銀行系・通信キャリア系——は、宇宙利用の顧客ネットワークを地理・産業の双方に広げる意図と読める。

同月、東京都の「SusHi Tech Global」スタートアップ支援プログラムの第1期採択スタートアップに選定されたことで、国内外への認知拡大と行政との連携可能性も開いた。

調達資金の用途として、高頻度打ち上げ対応のためのオペレーション強化・人材採用・グローバルの打ち上げプロバイダーとの契約拡充が見込まれる。宇宙商社として取り扱う「在庫(搭載枠)」の多様化と、顧客接点の拡大が次フェーズの核になる。

この事例から学べること

第一に、「技術開発」ではなく「流通インフラ」を担うスタートアップが宇宙産業で成立することを示した。 宇宙ビジネスというと衛星製造・ロケット開発にフォーカスが当たりがちだが、Space BDは需要と供給の仲介役という商社機能に特化することで参入障壁の低い独自ポジションを確立した。既存産業においても「技術よりも流通設計」が事業機会になるケースは多い。

第二に、大企業VCによる資本業務提携は「信用の借用」として機能する。 三菱HCキャピタルとの提携は、宇宙利用を検討する製造業・インフラ企業への顧客開拓において、Space BD単独では得られない企業信用を活用できる構造だ。CVCを活用する際、投資マネー以上に何を「借りる」かを設計することが重要だという示唆を含む。

第三に、公共セクター(JAXA)と民間VCを並走させるハイブリッドの資金・信用構造が、規制産業での成長加速を可能にする。 JAXA宇宙戦略基金採択は資金面だけでなく、政府の宇宙政策における「公認プレイヤー」としての位置づけを強化する。オープンイノベーションの推進において、官民双方への信用構築を意識した資金調達設計は、宇宙・防衛・医療等の規制色が強い産業では特に有効だ。

第四に、地方銀行VCの参加は「地域宇宙利用」への布石として読める。 紀陽キャピタルマネジメント(和歌山)の参加は、和歌山が有するHII-A打ち上げ関連インフラ・串本ロケット射場(スペースポート紀伊)との地域的な接続を視野に入れた可能性がある。スタートアップの投資家構成はネットワーク地図であり、将来の事業展開の予告でもある。

関連項目

参考文献・出典

成功の鍵

1

「宇宙商社」という独自ポジションの確立

メーカーでも研究機関でもなく「流通・仲介」という役割に特化。ISSへの物資輸送枠・ロケット搭載枠を「商品」として流通させる市場そのものを設計した。参入ではなく市場創造の視点が差別化の核心

2

大企業VCによる資本業務提携の活用

三菱HCキャピタルとの資本業務提携は資金調達にとどまらず、同社の事業ネットワーク・信用力を宇宙利用コンサルティングの顧客開拓に活用できる構造。CVC活用をリターン最大化の手段として設計している

3

地方銀行VCとJAXAという複線の後ろ盾

紀陽キャピタルマネジメント(和歌山)という地方金融機関VCの参加は、宇宙利用の地方展開を見据えたネットワーク構築とも読める。同時にJAXA宇宙戦略基金採択により公共セクターからの信用も確保し、民間・公共の双方に橋をかける構造を持つ

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