課題・背景:製造現場が抱える移動ロボットの限界
自律搬送ロボット(AMR)は製造・物流現場の省人化手段として普及しつつあるが、多くの既存製品は「直進・旋回」を組み合わせた動作設計に依存しており、狭小スペースや複雑なレイアウトへの対応に課題がある。変種変量生産(多品種・少量生産)が一般化した現代の製造現場では、レイアウト変更のたびに搬送ルートを再設計するコストも問題だった。
TriOrbが開発する「球体駆動式全方向移動機構」は、この課題を根本から解決する技術アプローチである。
取り組みの経緯:球体を使った独自の移動技術の誕生
TriOrbは球体を駆動輪として使用する独自のAMRプラットフォーム「TriOrb BASE」を開発している。球体が接地することで、前後・左右・斜め・回転のあらゆる方向への移動を瞬時に切り替えることが可能になる。この360度全方向移動性能は既存のAMRとの最大の差別化要素となっている。
2025年3月のプレシリーズB2ラウンドでは、みずほ銀行から5億円のデットファイナンス、東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)から1.6億円の第三者割当増資を受け、総額6.6億円を調達した。累計調達額は13.5億円に達している。
みずほ銀行は同社製品の「卓越した位置決め精度・外乱走破性・洗練された機構」を評価してデットによる支援を決定。UTECは「製造業をはじめとした生産ラインの柔軟性・拡張性を高める革新的なソリューション」として投資した。
サービス・事業の仕組み:TriOrb BASEの3つの優位性
TriOrb BASEが製造業向けソリューションとして持つ優位性は3点ある。
- 全方向移動性: 球体駆動により、あらゆる角度への移動が可能。スペース効率が大幅に向上する
- 高い位置決め精度: 微細な動作制御が可能で、精密な搬送・組立支援に対応
- 外乱走破性: 不整地や段差などの環境変化にも安定して対応できる堅牢な設計
調達資金は、変種変量生産・労働力不足・DX推進という製造業の3課題に対する社会実装加速に充てられる。
成果と現状
TriOrbは2021年の創業以来、累計調達額13.5億円を積み上げており、ディープテック系ロボットスタートアップとして存在感を高めている。製造業大手との実証実験を通じて量産・展開体制を整えつつある。
2026年6月時点では、日経報道でTriOrbの追加調達(28億8000万円規模)も報じられており、海外市場展開を含む次フェーズへの準備が進んでいるとみられる。