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事業会社

Ashirase

Ashirase ロゴ

Ashirase, Inc.

Hondaの新規事業創出プログラム「IGNITION」から誕生したスタートアップ第1号。視覚障がい者向けの歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」を開発・提供し、移動の自由と安全を実現する。

企業概要
企業名
Ashirase
業種
ヘルスケア・モビリティテック
所在地
東京都港区新橋
創業
2021年
公式サイト
www.ashirase.com

新規事業の歴史

History & Evolution

2019

IGNITION応募・採択

千野歩氏がHondaの新規事業創出プログラム「IGNITION」に応募し採択。

2020

プロトタイプ開発

視覚障がい者向け振動ナビゲーションデバイスの試作機を開発。

2021

Ashirase設立(IGNITION第1号)

Honda IGNITIONから初めて法人化に至った事業として株式会社Ashiraseを設立。

2022

クラウドファンディング実施

製品化に向けたクラウドファンディングを実施し、多くの支援を獲得。

2023

一般販売開始

歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」の一般販売を開始。

概要:視覚障がい者に「歩く自由」を届けるスタートアップ

Ashirase(あしらせ)は、Hondaの新規事業創出プログラム**「IGNITION」から誕生したスタートアップ第1号である。視覚障がい者向けの歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」を開発・提供し、靴に装着する振動デバイスによって目的地までの歩行を直感的にガイド**する。

「白杖やガイドヘルパーに頼らざるを得ない移動の現実がある。テクノロジーで、視覚に障がいのある方が”自分の意志で歩く”という当たり前の自由を取り戻したい」

――千野歩、Ashirase CEO

代表の千野歩氏は、Hondaのエンジニアとして自動運転技術の研究に従事する中で、身近な視覚障がい者の「自由に歩けない」という課題に出会い、社内起業を決意した。2023年には一般販売を開始し、福祉とテクノロジーの融合という新領域を切り拓いている。

誕生の経緯:Honda IGNITIONが生んだ「第1号」の意味

Hondaは2017年に新規事業創出プログラム**「IGNITION」を開始した。社員の自律的な挑戦を支援し、有望なアイデアを事業化・法人化まで導くコーポレートベンチャー制度である。Ashiraseは、この制度から初めて法人化に至った事業**として、Honda社内外から大きな注目を集めた。

千野氏の原体験は、自動運転プロジェクトの中で**「技術は誰のためにあるのか」を深く考えたことにある。高度なセンサーやAI技術が自動車に搭載される一方で、目の不自由な人々は依然として街を歩くことに大きな困難を感じていた。この「技術の恩恵が届いていない人々」**の存在に気づいたことが、あしらせの原点だった。

2021年にHondaからスピンアウトし、株式会社Ashiraseとして独立。Hondaのモビリティ技術やハードウェア開発のノウハウを活かしながら、スタートアップとしてのスピードでプロダクト開発を進めている。

製品の仕組み:靴に装着する振動ナビゲーション

あしらせの製品は、靴のインソール部分に装着する振動デバイスと、スマートフォンアプリで構成される。ユーザーがアプリで目的地を設定すると、GPSと各種センサーで取得した位置情報をもとに、足元の振動パターンで進行方向を伝える仕組みだ。

この設計には、視覚障がい者のリアルな生活に寄り添った工夫が詰まっている。手には白杖を持ち、耳では周囲の音を聞いて安全を確認する必要があるため、手や耳を塞がない「足」からの情報伝達が最適解となった。右に曲がるときは右足が振動し、左に曲がるときは左足が振動するという直感的なインターフェースにより、学習コストを最小限に抑えている。

「技術的にはスマートグラスや骨伝導イヤホンなど選択肢はあった。しかし、当事者の方々と一緒に歩き、一緒に考え続けた結果、“靴”にたどり着いた。ユーザーに寄り添うことが最大の技術革新だった」

――千野歩、Ashirase CEO

社会的インパクト:視覚障がい者の「移動の質」を変える

日本には約31万人の視覚障がい者がいるとされ、その多くが日常の外出に大きな困難を抱えている。白杖は障害物の検知には有効だが、目的地への経路案内はできない。ガイドヘルパーの利用には予約が必要で、「思い立ったときに自由に出かける」ことが難しい。あしらせは、この**「移動の自発性」**という盲点に切り込んだプロダクトである。

実証実験やユーザーテストでは、「初めての場所に一人で行けた」「外出が楽しくなった」という声が多数寄せられている。テクノロジーの価値が、機能的な利便性を超えて**「人の行動変容と心理的な自由」**をもたらしている点が、あしらせの真の革新性だ。

Honda発スタートアップとしての戦略的意義

Ashiraseの成功は、Honda IGNITIONの象徴的成果であると同時に、大企業のR&D資産がスタートアップを通じて社会課題解決に転用される好例だ。自動運転向けに培われたセンサー技術やアルゴリズムが、全く異なる用途で価値を発揮している。

また、IGNITION第1号としての成功は、Honda社内において**「自分も挑戦できる」という挑戦文化の醸成**に大きく貢献した。千野氏に続き、ストリーモなどの後続事業が次々と法人化を果たしている。大企業の新規事業制度において、最初の成功事例をつくることの重要性を如実に示すケースである。

「IGNITIONの仕組みがあっても、前例がなければ誰も手を挙げない。Ashiraseが第1号として世に出たことで、“本当に会社を辞めずに起業できるんだ”という実感がHondaの中に広がった」

――Honda IGNITION関係者

今後の展望

Ashiraseは、視覚障がい者向けナビゲーションを起点に、あらゆる人の「歩行」を支援するプラットフォームへの進化を目指している。高齢者の外出支援や、観光客向けのハンズフリーナビゲーションなど、潜在的な市場は広い。

国内市場だけでなく、世界保健機関(WHO)の推計では全世界に約2億5,300万人の視覚障がい者がいるとされ、グローバル展開のポテンシャルも大きい。「足元から始まるインクルーシブな社会」という千野歩氏のビジョンは、Hondaが掲げる**「移動の喜びの創造」**という理念と深く共鳴し、大企業発スタートアップの新たな可能性を切り拓いている。

関連項目

成功の鍵

1

当事者起点の開発

視覚障がい者との共創を通じて、本当に必要とされるプロダクトを設計。

2

足元UX

手も耳も塞がない振動ナビにより、白杖や周囲音との併用を実現。

3

Honda技術転用

自動運転向けセンサー技術やアルゴリズムを歩行支援デバイスに応用。

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