ビジネス・トランスフォーメーション
ビジネス・トランスフォーメーション(Business Transformation / BX) とは、企業の事業構造そのものを抜本的に変革することである。製品販売型からサブスクリプション型へ、モノ売りからコト売りへといった収益モデルの転換や、バリューチェーンの再設計を含む。
デジタル・トランスフォーメーション(DX)が技術導入を中心とした変革であるのに対し、BXはビジネスモデルそのものの変革を目的とする上位概念である。以下では、BXが求められる背景、成功に必要な条件、DXやコーポレート・トランスフォーメーションとの関係性について解説する。
従来の事業構造では収益を維持できない時代
日本の大企業の多くは、高度経済成長期に確立した事業構造を基盤としている。製造業であれば「良いモノを作れば売れる」、サービス業であれば「既存顧客を守れば安泰」という前提の上にビジネスモデルが構築されてきた。
しかし、デジタル化の進展、グローバル競争の激化、顧客ニーズの多様化により、従来の事業構造では収益を維持できなくなっている。 モノ売りからコト売りへの転換 が叫ばれて久しいが、既存の組織体制や評価制度、人材のスキルセットが旧来のビジネスモデルに最適化されているため、事業構造の変革は容易ではない。
サブスク転換を3年先延ばしにした代償
多くの製造業企業が、ビジネス・トランスフォーメーションの壁にぶつかっている。ある大手機械メーカーは、ハードウェアの販売だけでなく保守・運用のサブスクリプションモデルへの転換を試みた。しかし、営業部門は従来の 「台数×単価」の評価指標 で動いており、月額課金モデルでは 初年度の売上が大幅に下がる ため、現場の抵抗が強かった。
経営層はBXの必要性を理解していても、既存事業の数字を落とすリスクを取りきれない。 3年間検討を続けた結果、競合他社がサブスクリプションモデルで市場シェアを奪い始め、ようやく本腰を入れることになったが、その時点で既に大きな後れを取っていた。
BXを成功させる3つの不可欠な要素
ビジネス・トランスフォーメーションを成功させるためには、3つの要素が不可欠である。第一に、経営層が 「既存事業の売上が一時的に減少することを許容する」 という明確な意思決定を行うこと。BXは 短期的な痛みを伴う変革 であり、覚悟なくしては実現しない。
第二に、新しいビジネスモデルに適した評価指標を設定すること。モノ売りからコト売りに転換するなら、 ARR(年間経常収益)やNRR(売上継続率) といったサブスクリプション型の指標を導入する必要がある。第三に、変革を推進する専任チームを設置し、既存事業部門とは異なる権限と裁量を与えること。
収益構造を分解し変革ビジョンを描く
BXに取り組むためのステップとして、まず自社の収益構造を「モノ(プロダクト販売)」と「コト(サービス・ソリューション)」に分解し、現状の比率を把握することを勧める。次に、3年後・5年後にこの比率をどう変えたいかのビジョンを策定する。
デジタル・トランスフォーメーションは手段であり、BXこそが目的であるという整理が重要である。攻めのDXとしてビジネスモデルそのもののデジタル化を推進する場合は、BXの文脈で語ることで社内の共通理解を得やすくなる。まずは経営企画部門と事業部門の合同ワークショップから始めるとよい。
BXが特に急務である企業の条件
ビジネス・トランスフォーメーションが特に急務なのは、次のような企業である。売上の大半をハードウェア販売に依存しており、 利益率が年々低下 している製造業。顧客との接点が販売時に限定されており、利用状況のデータを取得できていない企業。競合他社がサブスクリプションモデルやプラットフォームモデルに移行し始めている業界に属する企業。
また、経営企画部門やDX推進部門の責任者で、コーポレート・トランスフォーメーションとの関係性を整理しながら変革の全体設計を行う必要がある人にとっても必須の概念である。
顧客が求めるのはプロダクトか成果か
BXの第一歩として、自社の主力事業について「顧客が本当に求めているのはプロダクトそのものか、それともプロダクトがもたらす成果か」を問い直してみよう。もし後者であれば、成果に対して課金する 「as a Service」モデル への転換可能性がある。社内で「守りのDX」と「攻めのDX」の議論が混在している場合は、まずトランスフォーメーションの全体像を整理し、BXの位置づけを明確にすることが先決である。デジタル・トランスフォーメーションとの関係性を理解した上で、自社にとっての変革の優先順位を定めよう。
IntraStar NEWS
新規事業の事例・セミナー情報・スタートアップの資金調達情報を
ほぼ毎週お届け。1,200名超のイントラプレナーが読んでいます。
Powered by Substack ・ いつでも配信停止できます