レイト・マジョリティ
レイト・マジョリティ(Late Majority) とは、イノベーション普及理論において、社会全体で広く認知・利用されるようになってからようやくプロダクトを採用するユーザ層のことである。市場全体の約34%を占め、「使わないと時代に取り残される」という社会的圧力が採用の主な動機となる。
アーリー・マジョリティまでの獲得に成功した事業が、さらなる成長を実現するために攻略すべき層である。以下では、レイト・マジョリティの心理的特性を理解し、社会的圧力と簡便さを軸にした獲得戦略を解説する。
マジョリティ獲得後に訪れる成長停滞の壁
新規事業が成長フェーズに入り、アーリー・マジョリティの獲得には成功したが、そこから先の 市場拡大が停滞 している。レイト・マジョリティは「社会全体が使い始めてから動く」層であり、プロダクトの機能や価格だけでは動かない。
彼らが求めるのは「使わないと時代に取り残される」という 社会的な圧力 と、「誰でも使える」という 圧倒的な簡便さ である。しかし多くの新規事業チームは、アーリー・マジョリティまでと同じ営業手法を続け、レイト・マジョリティの心理を理解しないまま無駄なリソースを投下してしまう。
インボイス制度が動かした「うちはExcelで十分」層
ある企業のクラウド会計ソフトは、スタートアップや中小企業のIT先進層には広く普及したが、地方の中小企業や個人商店への浸透が進まなかった。営業チームが訪問すると「うちはExcelで十分」「パソコンは苦手」という反応ばかりだった。
転機は インボイス制度の導入 である。法制度の変更により「対応しないと取引先を失う」という社会的圧力が生まれたことで、レイト・マジョリティが一気に動き出した。半年間で導入企業数は 従来の3倍に急増 し、営業コストも大幅に低下した。
社会的圧力と簡便さで動かす3つの戦略
- 社会的証明を大規模に展開する:レイト・マジョリティは「みんなが使っている」という事実に最も影響される。導入企業数、業界シェア、テレビCMでの露出など、「使っていないことが特殊」という空気を醸成する大規模なブランディングが有効である
- 導入ハードルを極限まで下げる:レイト・マジョリティはITリテラシーや変化への耐性が相対的に低い層である。初期設定の自動化、電話サポート、対面での導入支援など、ユーザの負担を極限まで削減する施策を講じる。操作マニュアルではなく、動画チュートリアルや伴走型サポートが効果的である
- 外部環境の変化をレバレッジにする:法規制の変更、業界標準の改定、取引先からの要求など、レイト・マジョリティが「動かざるを得ない」外部要因を予測し、そのタイミングに合わせたキャンペーンを準備する。受動的なマーケティングではなく、外圧を追い風にした戦略的な仕掛けが求められる
外部環境の変化をトリガーにした施策設計の手順
明日から実行すべきは、自社プロダクトの顧客を 導入時期で分類 し、「まだ導入していない見込み客」の特徴を分析することである。アーリー・マジョリティとの違いを洗い出し、レイト・マジョリティが動くために必要な条件を3つリストアップする。
次に、今後 1〜2年以内 に起こり得る業界の外部環境変化(法規制、業界標準、技術トレンド)を調査し、レイト・マジョリティが 動くトリガーとなりそうなイベント を特定する。そのイベントに向けた準備を今から始める。
市場飽和と感じている事業責任者へ
レイト・マジョリティの概念が特に重要なのは、事業が成熟期に入り 次の成長戦略を模索 しているプロダクトマネージャーや事業責任者である。初期の成長が一段落し「市場が飽和した」と感じている場合、実際には レイト・マジョリティがまだ取り込めていない だけの可能性がある。
また、マス市場向けのマーケティング戦略を設計する担当者にとって、レイト・マジョリティの心理と行動パターンを理解することは施策の精度を大きく高める。
市場浸透率の上限を現実的に見積もろう
まずはアーリー・マジョリティとの違いを正確に把握し、自社プロダクトが現在どの層を攻略しているフェーズなのかを見極めよう。レイト・マジョリティの獲得にはアーリー・マジョリティとは異なるアプローチが必要であることを理解したうえで、アーリー・アダプタから始まるイノベーション普及の全体像を俯瞰する。
その先にいるラガードとの境界線も意識し、自社プロダクトの市場浸透率の上限を現実的に見積もることが、適切な事業計画の策定に直結する。
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