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用語集

オーガニゼーションイノベーション

オーガニゼーションイノベーション(Organization Innovation) とは、組織構造・評価制度・意思決定プロセスなどの組織のあり方を根本的に変革することで実現するイノベーションのことである。「組織イノベーション」とも呼ばれる。

シュンペーターが提唱したイノベーション5類型の一つであり、他の全てのイノベーション(プロダクト、プロセス、マーケット等)の「土壌」となる概念である。以下では、組織がイノベーションの障壁となっている構造的要因と、それを解消するための具体的な変革手法を解説する。


組織構造がイノベーションの芽を摘んでいる

多くの大企業が新規事業の推進に取り組んでいるが、アイデアや技術は十分にあるのに事業化に至らないケースが圧倒的に多い。その根本原因は、組織構造そのものにある。 縦割りの部門構造、過度な承認プロセス、 リスク回避的な評価制度、年功序列型の人材配置――これらの組織的な制約がイノベーションの芽を摘んでいる。

製品やサービスを変える前に、まず組織のあり方を変えなければならない。にもかかわらず、新規事業推進部門が組織構造の問題を指摘しても「それは人事の仕事だ」「組織改編は来期の話だ」と先送りされる。シュンペーターが定義したイノベーション5類型の中で、オーガニゼーションイノベーションが最も見過ごされやすい所以である。

部門間の壁で8ヶ月たらい回しにされた有望事業

ある重工業メーカーでは、新規事業提案制度から有望なIoTサービスが生まれた。技術的な検証も順調に進み、パイロット顧客からの評価も高かった。しかし、事業化に進む段階で問題が露呈した。

サービス開発には4つの部門(IT、製造、営業、サポート)の連携が必要だったが、各部門の予算は別々に管理されており、部門横断のプロジェクトに工数を割くインセンティブがなかった。結局、事業化の稟議は3つの部門長の承認が得られず、 8ヶ月間たらい回し にされた末に凍結された。

後に経営陣がこの反省を踏まえ、 部門横断型のイノベーションラボ を設立し、 独立した予算と人事権 を付与した。組織を変えた途端、同様のプロジェクトが6ヶ月で事業化に至った。

組織を変革する3つの具体的手法

オーガニゼーションイノベーションを実現するための具体的手法は以下の3つである。1) イノベーション専任組織の設立:既存の事業部門から独立した専任チームを設置し、 独自の予算・人事・評価基準 を適用する。既存組織のルールに縛られない「出島」としての機能を持たせることで、意思決定のスピードを確保する。

2) 評価制度の二重構造化:既存事業の人材評価基準と新規事業の人材評価基準を分離する。新規事業では、売上や利益ではなく、 仮説検証の速度、学びの質、ピボットの適切さなどを評価軸とする。失敗を許容するだけでなく、適切な失敗を積極的に評価する制度が必要である。

3) 権限移譲の仕組み化:新規事業における 意思決定権限を現場に委譲 する。一定金額以下の投資判断を事業リーダーに任せることで、承認プロセスのボトルネックを解消する。

承認フロー地図の作成から小さく始める

組織改革は大がかりなものと思われがちだが、明日から始められる小さな一歩がある。まず、新規事業に関わる意思決定プロセスを可視化する。アイデアの提案から事業化承認まで、何人の承認が必要で、何日かかっているかを記録する。この「承認フロー地図」を作ることで、ボトルネックが明確になる。

次に、1つだけ承認ステップを省略できないかを上司に提案する。例えば 「100万円以下の検証費用は部長決裁で可」 というルールを新設するだけでも、検証スピードは大幅に向上する。

さらに、週1回30分の部門横断ミーティングを設定し、新規事業に関わる部門間の壁を少しずつ低くしていく。大きな組織改編の前に、小さな運用改善から始めることが現実的である。

承認プロセスや部門連携に悩む推進担当者へ

オーガニゼーションイノベーションが特に必要なのは、以下のような状況にある企業・担当者である。新規事業のアイデアや技術はあるのに、社内の承認プロセスや部門間連携の壁で事業化に至らないイノベーション推進責任者。

新規事業チームのメンバーが兼務体制で十分な時間を確保できておらず、組織的な支援体制の構築が急務と感じている事業リーダー。また、人事制度や評価基準が新規事業への挑戦を阻んでいると認識している人事部門の責任者にも直接的に関わるテーマである。

一方、組織がフラットでスピーディな意思決定が既にできている場合は、プロダクトイノベーションやマーケットイノベーションに注力する方が効果的である。

全てのイノベーションの土壌を整えよう

オーガニゼーションイノベーションはイノベーションの5類型の中でも、他の全てのイノベーションの「土壌」となる概念である。組織が変わらなければ、いくら優れた製品や技術が生まれても事業化には至らない。まずはシュンペーターのイノベーション理論を学び直し、自社の組織が新規事業にどのような制約を与えているかを棚卸しすることから始めてほしい。コーポレートトランスフォーメーションの視点も合わせて参照し、全社的な変革の中にオーガニゼーションイノベーションを位置づけることで、経営陣への提案にも説得力が生まれる。今週中に「承認フロー地図」を完成させ、最初の改善提案を行うことを推奨する。

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