人物概要
北川拓也は、ハーバード大学で物理学の博士号を取得した理論物理学者である。楽天において常務執行役員・CDO(チーフデータオフィサー)兼楽天技術研究所グローバル所長として、データサイエンスとAI事業を担う組織をゼロから700名規模へと育て上げた。2023年にハーバード大学・MITの研究チームが立ち上げた量子コンピュータスタートアップ QuEra Computing のPresidentおよび取締役に就任。同年、メルカリの社外取締役にも就いている。
経歴
ハーバード大学で物理学の学士号(数学との合専攻)および博士号を取得。理論物理学者としての研究キャリアを経て楽天に転じ、データサイエンス組織の立ち上げに着手した。入社当初は一人から始め、採用・育成・事業開発を並走させながら組織を拡大。楽天グループ70超の事業部門にわたるデータ戦略とAIビジネス創出を、常務執行役員として主導した。
楽天で約10年を経た後、「次の10年をかける仕事」を模索する中でQuEra Computingと出会った。同社はハーバード大学(Mikhail Lukin研)およびMIT(Vladan Vuletic研)の研究をもとに設立された中性原子量子コンピュータ開発企業であり、北川はビジネス面の責任者として2023年に参画。President兼取締役として事業戦略・資金調達・組織構築を担うとともに、QuEra Computing Japanの代表取締役社長も兼務している。
大企業内でのイノベーション実践
北川が楽天で行ったことは、既存事業を支える機能部門のマネジメントにとどまらなかった。データとAIを軸に 新たな収益源と事業モデルを社内で創出する という、典型的なイントラプレナー型の挑戦だった。既存組織のリソースと信用を活かしながら、スタートアップ的なスピードと実験思考を持ち込むことで、大企業が外部のスタートアップに委ねがちな領域を内側から開拓し続けた。
組織規模の拡大についても、単なる採用競争ではなく「データサイエンティストをどう育てるか」という問いに向き合い続けた点が特徴的だ。業界に供給の少なかった人材を自前で育成するための環境設計を優先したアプローチは、人材戦略面でも国内で注目を集めた。
思想と発言
北川は、物理学の名論文「More Is Different(P.W. Anderson著)」をビジネスパーソンに勧める文脈で、スケールが変われば本質が変わる という視点を繰り返し語っている。これは組織規模の変化に応じてマネジメントの質を変え続けた自身の経験と重なる。
楽天を離れた際には「弱い立場の自分でいるほうが進化できる」という言葉を残している。強大な組織の後ろ盾を手放し、スタートアップの修羅場に飛び込む選択そのものが、その言葉の実践となった。
量子コンピューティングについては、単なる計算速度の向上ではなく 科学そのものの方法論を変える技術 として捉えており、Well-being(ウェルビーイング)の社会実装という長期テーマとも接続しながら思考を深めている。