人物概要
山口文洋は、リクルートにおいて「 受験サプリ(現スタディサプリ)」を立ち上げた社会課題解決型イントラプレナーの代表的人物である。月額980円で一流講師の授業を届けるオンライン教育サービスを創出し、既存事業との激しいカニバリズムを乗り越えて事業化を実現した。リクルートマーケティングパートナーズ社長、リクルート執行役員を経て、 LITALICO代表取締役社長、ベネッセコーポレーション取締役副社長と、教育・福祉領域での変革を牽引し続けている。
経歴
1978年生まれ。私立桐蔭学園高校を経て、2000年に 慶應義塾大学商学部 を卒業。ITベンチャー企業でのマーケティング・システム開発を経て、2006年にリクルートに入社した。
2011年、社内新規事業提案制度「New RING(現Ring)」にて、月額980円でカリスマ講師の授業を配信する「受験サプリ」を提案し グランプリを受賞。しかし、予備校や大学からの広告収入を主財源とする既存事業との激しい対立に直面した。「大切な顧客である予備校の経営を圧迫する」という社内の猛反発を、ユーザーファーストの信念で乗り越えた。
2012年にリクルートマーケティングパートナーズ執行役員、2015年に同社 代表取締役社長 兼リクルートホールディングス執行役員に就任。2018年にはリクルート執行役員として教育・学習分野の責任者を務めた。2022年にリクルートを退職し、LITALICO副社長を経て2023年に代表取締役社長に就任。2025年4月にはベネッセコーポレーションの取締役副社長兼CPOに就任した。
主な実績
最大の実績は、 スタディサプリの起案と事業化 である。「所得格差=教育格差」という構造的な不(Negative)に着目し、経済的理由で高額な予備校に通えない学生に質の高い教育を届けるサービスを創出した。この事業はリクルートがマッチングメディアからWebサービス(プロダクト)へ進化する転換点となった。
リクルートマーケティングパートナーズの社長として、スタディサプリを含む 教育事業の経営 を統括し、サービスの全国展開を推進した。リクルートが自ら「イノベーションのジレンマ」を突破した象徴的な事例として広く知られている。
LITALICO社長としては「 障害のない社会をつくる」という理念のもと、教育と福祉のDXを推進。ベネッセでは教育産業全体のイノベーションに取り組み、一貫して教育変革のフロントランナーであり続けている。
思想とアプローチ
山口の思想の根底にあるのは、「ユーザーにとっての 正しさは何か」という高い視座 である。既存事業との利害調整に行き詰まったとき、それを突破できるのは社会にとっての大義だと説く。競合に破壊される前に自ら既存事業を破壊する勇気が、組織の永続的な生存を可能にするという信念を持つ。
「我々がやらなくても、必ず誰かがやる。その時にリクルートが教育の未来を牽引していなくていいのか」
単なる「便利」ではなく、「教育の不平等をなくしたい」という 魂が震えるような怒りにも似た感情 を事業のエネルギーに昇華させる。地方出身で経済的理由から予備校に通えなかった自身の原体験が、強力なWill(意志)の火種となっている。
著書
山口文洋の著書『 自ら学ぶ これからの未来をつくるために必要な力』(コルク)は、スタディサプリの立ち上げ経験をもとに、自ら学ぶ力の育成と教育改革の必要性を説いた一冊である。社会の前提が変わった時代に、大人が何を意識すべきかを、教育とビジネスの双方の視点から論じている。
