概要
31VENTURES(サーティーワン・ベンチャーズ)は、三井不動産が 2015年に立ち上げたベンチャー共創事業 である。「31」は三井不動産の「三(3)」と「一(1)」を組み合わせたものであり、同社のオープンイノベーション戦略の中核を担う。
総額 435億円規模 の投資体制(CVC1号50億円+グロースI事業300億円+CVC2号85億円)を擁し、事業会社によるスタートアップ投資としては 国内最大級 の規模を誇る。単なる資金提供にとどまらず、 WORKSPACE(ビジネスを加速するオフィス環境)・FUND(成長を加速する投資)・COMMUNITY(新しい知見との出会い) の3つのソリューションを統合的に提供する点が最大の特徴である。
「スタートアップへの投資は一部に過ぎない。年間100社超のベンチャーと本気の事業共創を狙うのが31VENTURESの本質」 ――FastGrow(FastGrow)
プログラムの仕組み
3つのソリューション
WORKSPACE では、「BASE Q」や「the DOCK」など三井不動産が運営するイノベーション拠点をスタートアップに提供し、大企業との接点を日常的に生み出す物理的環境を整備している。 FUND では、グローバル・ブレインと共同運営するCVCファンドを通じ、アーリー期からグロースステージまで幅広いフェーズのスタートアップに投資。 COMMUNITY では、定期的なピッチイベントやマッチングプログラムを開催し、事業共創のネットワークを構築している。
投資領域
CVC2号ファンドでは、投資対象を 15の重点領域 に拡大した。従来の「Real Estate as a Service」「DX」「スマートシティ」に加え、モビリティ(MaaS・自動運転)、宇宙、フードテック、アグリテック、エンターテインメントなど、不動産の枠を超えた広範な産業領域をカバーする。
これは「街づくり」を通じてあらゆる産業と接点を持つ不動産デベロッパーならではの戦略であり、投資先スタートアップの技術やサービスを 三井不動産が開発・運営する街やビルに実装する ことで、投資リターンと事業シナジーの両方を追求する。
グローバル・ブレインとの協業
CVCファンドの運営は、独立系ベンチャーキャピタルの グローバル・ブレイン と共同で行っている。VCのプロフェッショナルによるソーシング力・目利き力と、三井不動産のアセット・顧客基盤を組み合わせることで、通常のCVCが陥りがちな「投資判断の遅さ」「本業との利益相反」といった課題を克服している。
代表的な成果・投資先
Akerun(フォトシンス)
スマートロックサービスを提供する株式会社フォトシンスに投資。三井不動産が管理するオフィスビルや商業施設へのスマートロック導入を通じ、「鍵のない世界」の実現を共に推進。投資と事業共創が一体となった代表的な成功事例である。
ビットキー
デジタルキープラットフォームを手がけるスタートアップ。三井不動産の住宅・オフィス事業との親和性が高く、 スマートビルディング の構想を加速させた。
クラスター
メタバースプラットフォーム「cluster」を運営。三井不動産が推進する「デジタルツイン都市」構想との連携が期待される投資先であり、バーチャル空間における「街づくり」という新たな事業機会を模索している。
このプログラムの特徴・差別化
1. 「街」という巨大な実証実験場
三井不動産が持つ最大の差別化要因は、 日本橋、柏の葉、豊洲 といった大規模開発エリアそのものが「実証実験の場」になることだ。スタートアップにとって、数万人が行き交う「リアルな街」でサービスを試せる機会は極めて貴重であり、通常のVCからは得られない価値である。
2. 「投資」と「事業共創」の同時追求
多くのCVCが「投資リターン」か「事業シナジー」のどちらかに偏りがちな中、31VENTURESは両立を明確に志向している。投資先のサービスを自社施設に導入し、その実績をもとにスタートアップの企業価値向上にも貢献する 「Win-Winモデル」 の構築に注力している。
3. 不動産の「次」を見据えた長期ビジョン
人口減少社会における不動産業界の構造変化を見据え、「Real Estate as a Service」というコンセプトを掲げる。不動産を「所有・開発」するだけでなく、 テクノロジーを通じて「サービス」として提供する モデルへの転換を、スタートアップとの共創を通じて推進している。


