【概要】
学研グループ 80周年記念 新規事業コンテストは、株式会社学研ホールディングスが創業80周年を記念して2025年に開始した共創型の新規事業創出プログラムである。正式名称は「Gakken New Business Contest A Leader? or Followers? 〜一歩踏み出した者が、チャンスを掴む。〜」。**募集テーマは「無限大(∞)」**とし、教育・出版・医療福祉という学研の主要事業領域にとらわれないノンジャンル型のアイデアを広く募集する。
「一歩踏み出した者が、チャンスを掴む。」
学研グループは1946年に古岡秀人が「戦後の復興は、教育をおいてほかにない」という信念のもと学習研究社として創業した。以来80年にわたり、『○年の科学』と『○年の学習』に代表される教育コンテンツ事業を基盤としながら、医療福祉、塾運営、EdTechなど多角的に事業を展開してきた。本コンテストは、その歴史の節目に「次の80年」を切り拓く事業を社内外から募る試みである。
【仕組み】
2つの起案パターン
本コンテストでは、社内起案と一般起案の2つのルートを用意している。
学研社員による自主起案では、社員が自ら事業アイデアを起案し、外部との協業有無を自由に選択できる。起案期間は2025年6月1日から9月30日までである。社員が日常業務の中で感じた課題やアイデアを、事業として具体化する正式なチャネルとして機能する。
一般起案では、社外の個人・法人・学生・起業志望者が参加可能である。国籍・年齢・職業・活動分野は一切不問で、チームでの応募も認められている。一般起案者はまずアイデアを提出し、その後学研グループ社員とのマッチングを経て、共同で詳細な事業計画を策定する。
選考プロセス
選考は約10か月間にわたる4段階のプロセスで構成される。
2025年6月から9月が起案期間、10月に一次選考(書類審査)が実施される。審査基準は**「革新性」「事業の必要性」「収益の可能性」**の3軸である。「革新性」では従来の枠組みにとらわれない自由な発想を評価し、「事業の必要性」では顧客課題の明確さと市場理解を問い、「収益の可能性」では持続可能なビジネスモデルの有無を検証する。
一次選考通過者には、2025年11月から2026年1月にかけてブラッシュアッププログラムが提供される。起業プログラムと事業計画の精緻化支援を通じて、アイデアを実行可能な事業計画へと昇華させる。その後、2026年2月から3月に二次選考(プレゼンテーション)、2026年3月31日に最終選考としてピッチイベントが開催される。
【審査体制】
最終選考の審査員には、教育・VC・EdTechの各領域を代表する3名が招聘されている。
成島由美氏は、学校法人大妻学院理事を務める。ベネッセコーポレーションにおいて史上最年少の執行役員に就任した経歴を持ち、進研ゼミの統括責任者や大妻中学高等学校校長を歴任した教育業界の重鎮である。
松本孝之氏は、ジャフコグループのベンチャー投資プリンシパルである。日本を代表するベンチャーキャピタルの視点から、事業の成長性と投資適格性を評価する役割を担う。
和田周久氏は、グローバルEdTech推進委員会の委員長を務める。EduLab取締役副社長兼Co-COOとしてGlobal EdTech Startups Awards(GESA)の審査員も歴任しており、グローバルなEdTech市場の知見を審査に持ち込む。
審査基準は「革新性」「事業の必要性」「収益の可能性」の3軸で構成される
【インセンティブ設計】
本コンテストの最大の特徴は、単なる表彰で終わらないインセンティブ設計にある。
最終選考を通過した起案者には、学研ホールディングスから事業立ち上げに必要な資金と人的支援が提供される。さらに、事業化にあたっては新法人の設立が認められ、起案者自身が社長に就任することが可能である。報酬面でもストックオプションの設計が認められており、起案者が経営者として事業の成長に直接コミットできる仕組みが整備されている。
この設計は、大企業の新規事業コンテストにおいてしばしば課題となる「起案者のモチベーション維持」に対する明確な解答である。アイデアを出して終わりではなく、起案者自身が事業オーナーとして経営の舵を取れる点が、本気の挑戦者を惹きつける要因となっている。
【学研グループの事業基盤】
本コンテストの起案者にとって、学研グループが持つ事業基盤は大きなアドバンテージとなる。
学研グループは、乳幼児から高齢者まで全世代をカバーする顧客基盤を有している。学研教室や塾事業を通じた教育分野の顧客接点、出版事業で蓄積されたコンテンツ資産、さらには高齢者住宅・認知症グループホーム運営を通じた医療福祉分野のネットワークがある。2009年の持株会社制への移行以降、M&Aも積極的に活用しており、ベトナムのDTP Education Solutionsの子会社化(グローバル教育)やレアジョブとの資本業務提携(リスキリング)など、成長領域への投資を加速させている。
中期経営計画「Gakken2027 “Value UP”」では、既存事業の競争力強化に加え新領域への挑戦を掲げており、本コンテストはその戦略的布石として位置づけられる。起案者は、単にアイデアを披露するだけでなく、これらの経営資源を活用した事業設計が求められる。
【学べること】
- 記念事業を「未来への投資」に変換する発想: 80周年という節目を単なる式典や広告ではなく、新規事業創出の機会として活用している。周年事業を経営戦略と紐づけるアプローチは、他社にとっても参考になる。
- 社内外の壁を取り払う共創モデル: 一般起案者と学研社員のマッチング制度は、外部の視点と社内の経営資源を掛け合わせるオープンイノベーションの実践例である。
- 「出口」を明確にしたインセンティブ設計: 新法人設立・社長就任・ストックオプションという具体的な「出口」を最初から提示することで、本気度の高い起案者を集めている。


