概要
2022年11月28日に閣議決定された「スタートアップ育成5か年計画」は、日本のスタートアップ生態系を抜本的に強化することを目的とした国家的な政策パッケージだ。経済産業省がエコシステム推進の中核を担い、大企業とスタートアップの共創(オープンイノベーション)を制度・資金・人材の面から後押しする。
3本柱として①人材・ネットワーク構築、②資金供給強化・出口戦略多様化、③オープンイノベーション推進を掲げる。大企業にとっては、社内起業(イントラプレナー)の出口としてスタートアップ連携や買収を活用しやすくなる環境整備でもある。
成果と現在地
2025年の実績では、スタートアップが生み出した創出GDPの直接効果が13.66兆円(名目GDP比約2%)、間接波及を含めると25.69兆円(同約4%)に達し、雇用創出数は59万人を記録した。 これは前年比15%増のペースであり、計画が着実に経済インパクトへ結びついていることを示す。令和6年度(2024年度)には「スタートアップのグローバル化強化事業」に約44億円を投じ、海外VCや企業との連携強化を推進した。
2026年の転換点:新3本柱とM&Aガイダンス
2026年5月20日、政府は「スタートアップ総力創出パッケージ」を発表し、次のフェーズに向けた新3本柱を打ち出した。①スタートアップのスケールアップ、②ディープテック・スタートアップ支援、③地域経済を担うスタートアップ育成、という構成だ。同時に2026年5月21日に公表された「スタートアップM&Aガイダンス」は、大企業がスタートアップを買収しやすくする指針を整備したもので、CVC投資や合弁に続く新たな共創の出口戦略を制度面から支援する。
「スタートアップ総力創出パッケージ」では、スケールアップ・ディープテック・地域の3軸を新たな重点領域として設定し、引き続きエコシステムの強化を図る。
イントラプレナーシップとの接点
この政策はスタートアップ支援にとどまらず、大企業内のイントラプレナーが外に出る際の「着地環境」を整備するという側面も持つ。スピンアウト後の資金調達・M&A出口・拠点都市でのエコシステム参加といったパスが整備されることで、社内新規事業から独立を選ぶハードルが下がる。「育成5か年計画」が目指すのは、大企業と新興企業の間の人材・知財・資本の流動性を高めた「混ざり合うエコシステム」だといえる。