概要
NEDO HiP(Hypothetical-issue identification and Partnering) は、NEDOが「ディープテック・スタートアップ支援基金」の一環として設けた大企業-スタートアップ連携・調達加速化プログラムである。
従来のオープンイノベーション支援との最大の違いは、大企業が言語化できていない「潜在的・根本的ニーズ」を起点にする点にある。公募テーマにスタートアップが応募するプッシュ型でなく、大企業の課題を専門家と共に掘り起こし、合致するスタートアップを探索・マッチングするプル型の設計を採っている。
プログラムの仕組み
実施体の採択
HiPでは、VC・アクセラレーター等を「実施体」として採択する。これらの民間機関が大企業と接点を持ち、課題の仮説整理・スタートアップ探索・交渉・調達支援を担う構造だ。NEDOが実施体に対して資金支援を行い、実施体が大企業とスタートアップをつなぐ役割を果たす。
実施期間は6〜18ヶ月で、大企業のニーズ整理から始まり、スタートアップとの面談・調整・意思決定支援、調達・購買の実現可能性検証までを一貫して実施する。
マッチングのプロセス
- 仮説整理(Hypothetical-issue identification): 大企業担当者と共に「何が課題か」を言語化。表面的な要望だけでなく、事業的・組織的な潜在ニーズまで掘り起こす。
- スタートアップ探索(Partnering): 整理したニーズにフィットするスタートアップを国内外から探索。マッチング候補を複数用意し、大企業の選好を確認する。
- 調整・交渉支援: スタートアップとの交渉・条件調整に実施体が介在。大企業側の意思決定プロセスへの伴走も含む。
- 実現可能性の検証: 調達・購買の実現可能性を検証。必要に応じてHiP PoPフェーズ(製品検証)へ接続する。
HiP PoPフェーズとの接続
HiPで調達可能性が確認された案件は、製品検証フェーズ(PoP: Proof of Product)へ接続できる。PoPフェーズでは実際の業務環境・現場でのトライアルを支援し、スタートアップにとっては「大企業の現場に入れる」実証機会を得られる。
意義とスタートアップへの影響
大企業とスタートアップの連携が進まない根本原因の一つは、「大企業が何を求めているか分からない」という情報の非対称性にある。HiPはVCやアクセラレーターという「橋渡し役」を制度的に組み込むことで、この非対称性を緩和する試みだ。
スタートアップにとっては、自力では接触困難な大企業の調達部門・事業部門への入口を提供する機能を持つ。売上の見通しが立ちにくいBtoB型ディープテックスタートアップが、最初の大企業顧客を獲得する経路として重要性が増している。
2026年度 公募情報
2026年度のHiP公募(2026年5月下旬〜6月下旬受付予定)は、内容再考のため中止となった。2025年度採択の実施体による実証は継続中である。最新の動向はNEDO公式サイトで確認のこと。
関連項目
参考文献・出典
- NEDO「大企業等のスタートアップ連携・調達加速化事業(HiP)公募予告」 https://www.nedo.go.jp/koubo/CA1_100534.html
- NEDO「HiP 実施体の決定について」 https://www.nedo.go.jp/koubo/CA3_100487.html
- NEDO スタートアップ支援部 資料(2026年1月更新)