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制度・プログラム事例

Ring(リング)

新規事業提案制度 運営中
制度・プログラム概要
運営企業
リクルート
種別
新規事業提案制度
開始年
1982年
状態
運営中
主な成果
ゼクシィ , ホットペッパー, SUUMO, スタディサプリ , Airシリーズ
公式サイト
www.recruit.co.jp/employment/students/ring

History & Evolution

1982

「RING」スタート

「Recruit Innovation Group」として開始。社員皆経営者主義の風土醸成が主目的。

1990

「New RING」へ改定

バブル崩壊後の第二創業期に向け、事業創造を加速させるためにリニューアル。

1993

「ゼクシィ」事業化

結婚情報誌としてスタート。後にリクルートの柱となる事業が誕生。

2010

「受験サプリ(現スタディサプリ)」提案

「教育格差の解消」を掲げたオンライン学習サービスが提案され、後に事業化。

2014

「Recruit Ventures」開始

ITプロダクト開発に特化した制度として並行稼働。

2018

「Ring」へ統合・リニューアル

New RINGとRecruit Venturesを統合。40年以上の歴史を経て原点回帰の名称へ。

2022

「Ring」へリブランド・通年化

30年以上の歴史を持つ「RING」を「Ring」へ刷新。

2021

「高校生Ring」開始

アントレプレナーシップ教育として高校生向けにノウハウを開放。

概要

Ring(リング)は、リクルート1982年から40年以上運営し続けている 社内新規事業提案制度である。「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」というリクルートの旧社訓を体現する最も象徴的な仕組みであり、単なるイベントではなく「経営人材の輩出装置」として機能している。

「ゼクシィ」「ホットペッパー」「SUUMO」「スタディサプリ」 など、リクルートの現主力事業の多くがこのプログラムから生まれた。

詳細

Ringの歴史は、日本の新規事業開発の歴史そのものと言っても過言ではない。その裏側には、華々しい成功だけでなく、無数の「撤退」と「泥臭い闘い」があった。

制度の変遷:時代に合わせて「イノベーション」を再定義する

1982年に「RING」として始まった制度は、バブル崩壊後の1990年に「New RING」へと改定され、第二創業期を支えた。その後、ITバブル期にはネットビジネスに特化したファンド的な動きを見せ、2014年には「Recruit Ventures」としてシリコンバレースタイルを導入。そして2018年、これらを統合し再び「Ring」へと名称を戻した。

この変遷から分かるのは、リクルートが 「その時代におけるイノベーションとは何か」 を常に問い直し、制度自体をピボット(方向転換)させ続けてきたことだ。制度が硬直化せず、常に「現役」であり続ける理由がここにある。

事例:「スタディサプリ」の逆転劇

今でこそ日本の教育インフラとなった「スタディサプリ」だが、誕生までの道のりは平坦ではなかった。 起案者の山口文洋氏(当時)が掲げた「教育格差の解消」というビジョンは、当初社内で「儲からない」「リクルートがやるべきビジネスモデルではない(薄利多売すぎる)」と猛反対を受けた。

しかし、山口氏は現場の高校生の声を集め、「月額980円(当時)で予備校講師の授業が見放題なら、絶対に使う」という 「顧客の不(Negative)」の解消 を数字で証明し続けた。Ringの審査員が最終的にGoを出したのは、市場規模の大きさではなく、山口氏の「何としてもこれをやりたい」という圧倒的な 「Will(意志)」 に賭けたからだと言われている。これは、論理(ソロバン)だけでなく、情熱(ロマン)を評価するRingの文化を象徴するエピソードである。

失敗の教訓:「マリタス」の撤退

一方で、撤退事例からの学びも共有されている。2014年頃に提案された結婚式準備サービス「マリタス」は、ユーザーヒアリングでは高評価を得たものの、実際に課金する段階で「そこまではお金を払わない」という壁にぶつかり、事業化手前で撤退となった。

「『あったらいいな(Nice to have)』では事業にならない。『なくてはならない(Must have)』を見極めるまでは、コードを一行も書いてはいけない」

この教訓は現在のRingのメンタリングにも色濃く反映されており、初期フェーズではプロダクト開発よりも、徹底的な顧客ヒアリングと「不」の特定に時間が割かれる。

運営の裏側:事務局の「愛ある厳しさ」

Ring事務局(新規事業開発室)は、単なる審査機関ではない。かつて事務局長を務めた麻生要一氏は、起案者に厳しく接することで有名だったが、それは「生半可な覚悟で事業を始めると、後で本人が一番苦しむ」ことを知っていたからだ。 「なぜお前がやるのか?」「リクルートを辞めてでもやる覚悟はあるか?」と問い詰め、それでも食らいついてくる人間だけを次のステージに上げる。この「通過儀礼」が、起業家精神を育てる土壌となっている。

学べること

  • 制度は「文化」になるまで続ける: 40年続けることで「Ringに応募するのが当たり前」という文化が定着した。一朝一夕でイノベーション文化は作れない。
  • 「Will(意志)」を最優先する: どんなに優れた市場分析よりも、起案者の「なぜ自分がやるのか?」という熱量を重視する。困難に直面した時に踏ん張れるのは、スキルではなくWillだからだ。
  • 「撤退」は「失敗」ではない: 明確な基準で早期に撤退させることは、会社にとっても個人にとってもポジティブなことである(サンクコストの最小化)。

関連リンク

成功の鍵

1

「圧倒的な母数」と「徹底した選抜」

年間約1,000件の応募から、事業化検証に進むのはわずか5〜6件(通過率約0.5%)。入り口は「誰でも応募可能」と広く開放し、出口は「顧客の不」と「圧倒的な当事者意識(Will)」を徹底的に問うことで、質の高いダイヤモンドの原石だけを磨き上げる。

2

「ステージゲート」による投資判断

「MVP」「SEED」「ALPHA」「BETA」といった明確な検証フェーズと撤退基準が定義されている。半年ごとの審査で基準に達しなければ容赦なく「撤退」となる。ダラダラとリソースを浪費せず、挑戦者を「次の打席」へ早く送り出すための愛のある仕組みだ。

3

「伴走者」によるインキュベーション

起案者(オーナー)に対し、新規事業開発室のプロフェッショナルが伴走する。社内政治の調整から、法務・知財の壁、時にはメンタル面のケアまで、オーナーが「事業」だけに集中できる環境を黒子として支える。

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