課題・背景:預け先を探す手間が、サービスごとにばらばらにある
共働き世帯の増加や保育ニーズの多様化で、一時預かりやベビーシッターの重要性が高まっている。ところが利用者の側には、発表の中で次の3つの困りごとが挙げられている。
- どこで探せばよいかわからない
- 比較が難しい
- 予約の方法が事業者ごとに異なる
支援制度やサービスの情報も分散しており、必要な人に十分届いていない、という認識だ。赤ちゃん本舗は、この「探す・比べる・予約する」がつながっていない状態を、新規事業の入り口に選んだ。
取り組みの経緯:検索、比較、予約をひとつにする
2026年10月20日、赤ちゃん本舗は子育て特化のマッププラットフォーム「iiba」を運営する株式会社iibaと、子どもの預かりサービス検索・予約プラットフォーム(仮称)の事業共創を開始したと発表した。事業共創は発表の時点で始まっている。
想定されているのは、託児やベビーシッターのサービス情報を集約し、検索・比較・予約までをワンストップで行える仕組みだ。主な機能は次の3つ。
- マップ検索
- 事業者情報の閲覧・比較
- 予約
利用者は地図から近隣のサービスを探し、利用条件を比べ、そのまま予約に進める。将来的には、地域や利用目的に応じたサービスの提案や、自治体との連携も視野に入れるとしている。
サービス・事業の仕組み:小売の接点と開発基盤を分ける
| 主体 | 持ち寄るもの | 担う役割 |
|---|---|---|
| 赤ちゃん本舗 | 全国の店舗や会員基盤などを通じた顧客接点 | 利用者ニーズの把握、サービス企画、情報提供 |
| iiba | 子育て特化のマップ基盤、事業者ネットワーク、自治体連携のノウハウ | アプリ・Webサービスの開発と運用、自治体連携、サービス実装のための基盤構築 |
赤ちゃん本舗は1932年創業のマタニティ・ベビー・キッズ専門店で、物販だけでなくサービスと情報も提供している。iibaは「iiba」の企画・開発・運営に加え、自治体のDX支援や子育て世帯向けのマーケティング支援も手がける。小売の側が「誰が何に困っているか」を知る入口を、開発の側が「使える形にする」部分を持つ、という分担になっている。
展開・進化:2027年3月のPoCから本格展開へ
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年10月20日 | 事業共創の開始を発表 |
| 2027年3月ごろ | 東京23区を対象にPoC(実証実験)を実施予定 |
| 2027年度中 | 本格展開を目指す |
PoCの後は、次の4点に取り組む計画だ。
- サービス対象エリアの拡大
- 掲載事業者の拡充
- 自治体との連携強化
- 補助金事前適用モデルの検証
最後の「補助金事前適用モデル」は、発表では名称のみが示されており、具体的な仕組みは明らかにされていない。
この事例から学べること
小売企業が新規事業に持ち込める資産は、顧客の困りごとが集まる店舗と会員基盤である。 赤ちゃん本舗がこの共創で出すのは、店舗や会員基盤を通じた顧客接点だ。預け先探しという、自社の物販とは別の課題を扱いながら、自社にしかない接点を事業の出発点に置いている。
開発と運用を持つ相手と組み、役割を最初に分けている。 企画と利用者理解は小売側、実装と運用は外部という線引きが発表の時点で示されている。大企業が自前で開発体制を持たずに新規事業を始めるときの、ひとつの型として参照できる。
スケジュールが「PoC→本格展開」と短く区切られている。 発表から約5か月後にPoC、その翌年度に本格展開という道筋は、小さく確かめてから広げる進め方にあたる。一方で、サービスはまだ仮称の段階にあり、利用者数や掲載事業者数などの数字は公開されていない。また、発表には経営陣や担当者の個別コメントも含まれていない。PoCの結果をどう公開するかが、今後の観察点になる。


