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事業事例

funband ― シャープ初の社内スタートアップが生んだ「気持ちを届ける」IoTデバイス

IoT / クラウドサービス #IoT #ハードウェア #社内スタートアップ #スポーツテック
事業・会社概要
事業会社
株式会社AIoTクラウド
業界
IoT / クラウドサービス
開始年
2013年
サービスサイト
funband.jp
コーポレートサイト
www.aiotcloud.co.jp

History & Evolution

2013

社内で「情報ではなく気持ちを伝えるバンド」を着想

シャープ社内の新規事業検討の中で、バイブレーターの振動で感情を伝えるウェアラブルデバイスのアイデアが生まれる。

2017

funband発売・プロ野球チームとの連携開始

福岡ソフトバンクホークスなど複数のプロ野球チームモデルを展開。試合速報連動の応援デバイスとして話題に。

2019

株式会社AIoTクラウド設立

シャープのIoT事業本部を母体にシャープ100%子会社として独立。AIoTプラットフォームの外販を本格化。

2024

B2Bソリューションへのピボット加速

アルコールチェック管理「スリーゼロ」や遠隔監視「WIZIoT」など、法人向けIoTサービスを主力事業に転換。

課題・背景:ウェアラブルの「情報過多」と家電メーカーの新規事業

2010年代前半、ウェアラブルデバイス市場はApple WatchやFitbitの登場により急速に拡大していた。しかしその大半は 健康データの計測スマートフォン通知の転送 といった「情報の受け渡し」に終始しており、デバイスを通じて「感情」を共有するという発想は皆無に近かった。

一方、シャープは液晶テレビや白物家電の価格競争に直面し、既存事業の延長線上にはない 新たな収益源 を模索していた。IoTやAIを活用した付加価値の創出が経営課題となる中、社内の若手エンジニアたちが「情報ではなく気持ちを伝えるバンド」というコンセプトを着想する。

取り組みの経緯:手作りモックアップから始まった直談判

funbandの開発は、2013年秋にシャープ社内で 新規事業創出 を模索する中から始まった。起案者はIoT HE事業本部の技術者たちで、彼らは企画書ではなく 手作りのモックアップ を持って経営陣に直談判するという方法を選んだ。製造業のDNAが息づく「現物で語る」文化が、この異色のプロジェクトを前に進めた。

コンセプトは明確だった。スマートフォンの試合速報と連動し、応援しているチームが得点すると バイブレーターが振動 し、 LEDが発光 する。スタジアムにいなくても、腕に巻いたバンドを通じてリアルタイムの興奮を共有できる。2017年には福岡ソフトバンクホークスをはじめ、複数の プロ野球チームモデル が発売された。

サービス・事業の概要:funbandからAIoTプラットフォームへ

funbandは、モーションセンサーが腕の「応援アクション」を感知し、振動や発光で試合の展開を体感させるウェアラブル端末である。Bluetoothでスマートフォンと接続し、応援動作を ポイントとして蓄積 する機能も備えた。価格は数千円台に抑えられ、スポーツ観戦のカジュアルなアクセサリーとして設計された。

2019年、シャープはIoT事業本部を母体として 株式会社AIoTクラウド を設立する。シャープ100%子会社としてのスタートだった。当初はシャープ製AIoT家電向けのクラウドサービスや、同プラットフォームの他社への開放が主な事業だったが、その後 B2Bソリューション へと軸足を移していく。

現在の主力は、道路交通法改正に対応した アルコールチェック管理サービス「スリーゼロ」 と、工場設備の 遠隔監視サービス「WIZIoT(ウィジオ)」 である。funbandで培ったIoT機器とクラウドの連携技術が、法人市場で花開いた形だ。

成果と現状

AIoTクラウドは「シャープ初の社内スタートアップ」と位置づけられている。funband自体は限定的な市場にとどまったものの、そこで蓄積したIoTデバイスの開発力とクラウド運用のノウハウが、現在のB2B事業の基盤となっている。

「スリーゼロ」は2022年の道路交通法改正による アルコールチェック義務化 という追い風を受け、導入企業数を急速に伸ばしている。「WIZIoT」はSORACOMとの連携により、製造業の 設備点検DX を推進するサービスとして拡大中である。コンシューマ向け製品で始まった事業が、ピボットを経て法人向けの安定収益モデルに転換した好例である。

この事例から学べること

第一に、「現物主義」の起案が大企業内の合意形成を突破する。 企画書やスライドではなく、手に取れるプロトタイプを見せることで、意思決定者の想像力を刺激し、承認のハードルを大幅に下げることができる。特に製造業においては、「モノを作る会社がモノで語る」というアプローチが最も説得力を持つ。

第二に、コンシューマ製品からB2Bへのピボットは「撤退」ではなく「進化」である。 funbandの市場規模には限界があったが、そこで培った技術基盤を法人向けに転用することで、より大きく安定した市場にアクセスできた。最初の製品が「当たらなかった」ことを失敗と見なさず、技術資産の転用先を探す姿勢が重要である。

第三に、社内の技術部門を独立法人化することで、事業の自律性とスピードが生まれる。 親会社の意思決定プロセスから切り離されることで、市場の変化に素早く対応し、外部パートナーとの連携も柔軟に行える組織体制が構築できた。

関連項目

成功の鍵

1

「情報」ではなく「感情」を伝えるという逆転の発想

当時のウェアラブルデバイスが通知や健康データに偏る中、「気持ちを届ける」という情緒的価値にフォーカスした着眼点。

2

手作りモックアップによる「現物主義」の起案

企画書ではなく実物のプロトタイプを経営陣に直接見せて承認を勝ち取った、製造業ならではのアプローチ。

3

コンシューマからB2Bへの柔軟なピボット

funbandで培ったIoT基盤技術を法人向けサービスに転用し、安定収益モデルを構築した事業転換力。

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