課題:背景:数年内に最大120万人の労働力不足が迫る建設業界
建設業界は高齢化と若者就業離れが重なり、数年内に最大120万人の労働力不足が予測される構造問題を抱えている。測量・施工・検査という一連の建設プロセスは長らくアナログ依存が続き、現場の「見えない無駄」を解消する術がなかった。コマツはこの課題に2015年から「スマートコンストラクション」として取り組み、ICTを活用した建設プロセスの可視化・最適化を先行して推進してきた。
構造:EARTHBRAIN設立——4社合弁で「データのハブ」を作る
スマートコンストラクションをさらに高度化し、建設プロセス全体のデジタルツイン化を実現するため、4社の強みを結集した合弁会社を設立しました。
2021年7月1日、株式会社EARTHBRAINが設立された。 出資比率はコマツ54.5%、NTTドコモ35.5%、ソニーセミコンダクタソリューションズ5%、野村総合研究所5%で、資本金は150億円超。建設機械の製造・データ知見を持つコマツ、通信インフラのNTTドコモ、センシング技術のソニー半導体、IT・データ分析の野村総研という異業種4社が結集した点が特徴だ。
EARTHBRAINが目指すのは、測量から施工・検査に至る建設プロセス全体をデータで一気通貫につなぐ「デジタルツイン型建設現場」の実現だ。各工程が孤立したままでは生産性改善に限界がある。ICTデータを横断的に統合することで、ヒトが少なくても安全・高精度に施工できる現場設計を目指している。
最新動向:遠隔操作と安全支援で新フェーズへ
2025年4月、コマツとEARTHBRAINは建設機械向け遠隔操作システムを搭載した移動式DXオフィス「Smart Construction Teleoperation - モビリティーオフィス」の販売を開始した。 現場に居なくてもオペレーターが建機を動かせる体制を整えることで、人手不足対策と危険作業の遠隔化を同時に前進させる狙いだ。
さらに2025年12月にはEARTHBRAINの安全支援アプリが建設DXアワード最優秀賞を受賞。AI・センサーを活用した現場の危険予兆検知が評価されており、EARTHBRAINがデータ活用の深度を高めていることを示している。コマツは2025年4月発表の新中期経営計画「Driving value with ambition」(FY2025-FY2027)においても、建設DX・EARTHBRAINを通じたデジタル変革の継続・拡大を明示した。
この事例から学べること
- 建設現場のDXは単一企業では完結しない。コマツが機械メーカー・通信・センシング・ITを束ねる4社合弁という設計を採ったことは、業界横断の課題には横断的な連合が必要だという原則を体現している
- 大企業同士がCo-creationとして合弁会社を設立するモデルは、各社が自社事業の延長で動くよりも意思決定が早く、専用の経営リソースを集中できる優位がある
- 遠隔操作・デジタルツインという技術は、「人が減っても現場が回る構造を作る」という目的に直結させることで、投資対効果を経営レベルで説明しやすくなる