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事業会社

ANAホールディングス

ANAホールディングス ロゴ

ANA HOLDINGS INC.

日本最大の航空グループ。航空事業にとどまらず、アバターロボットによる「瞬間移動」体験を提供する「avatarin」のスピンアウトなど、移動の民主化を目指すオープンイノベーションを先導している。

企業概要
企業名
ANAホールディングス
業種
航空・交通インフラ
所在地
東京都港区東新橋
創業
1952年
公式サイト
www.anahd.co.jp

新規事業の歴史

History & Evolution

1952

創業(ヘリコプター2機)

日本ヘリコプター輸送として設立、翌年に全日本空輸へ改称し空の挑戦を開始。

1986

国際線定期便 就航

国内線No.1からグローバルキャリアへの転換を図り、世界への翼を広げる。

1999

スターアライアンス 加盟

世界最大の航空連合に参画し、グローバルネットワークの中核を担う存在に。

2013

ANAホールディングス 設立

持株会社体制へ移行し、航空事業一本足からの脱却を制度的に可能にする。

2018

XPRIZE ANA Avatar / Digital Gate

アバター技術の国際コンペを主催し、デジタルイノベーション拠点を設立。

2020

avatarin 設立

社内ビジネスコンテスト発のアバター事業をカーブアウトし、独立企業として始動。

2021

コロナ後の非航空戦略

過去最大の赤字を契機に、非航空収益の拡大を経営戦略の中核に据える。

【歴史】「空の移動革命」:航空会社から移動プラットフォーム企業へ

ANAホールディングスの変革は、「航空会社」という自己定義を根本から問い直すところから始まった。1952年にヘリコプター2機で創業した全日本空輸は、国内線・国際線の拡大を経て日本最大の航空グループへと成長する。しかし、その歴史の中で最も大胆な転換点は、「人を物理的に運ぶ」以外の価値を探索し始めた2010年代後半にある。

「航空会社の本質は、飛行機を飛ばすことではない。人と人、人と場所をつなぎ、新しい体験を届けることだ」

――ANAホールディングス『グループ経営ビジョン

1. 創成期:2機のヘリコプターから始まった空の挑戦

1952年、日本ヘリコプター輸送として設立。翌年に極東航空と合併し全日本空輸へ。国内航空需要の爆発的な成長とともに路線網を拡大し、国内旅客数No.1の航空会社へと駆け上がった。

2. 成長期:国際線への進出とスターアライアンス加盟

1986年の国際線定期便就航を皮切りに、グローバルネットワークを構築。1999年にはスターアライアンスに加盟し、世界の航空連合の中核を担う存在となった。この段階でのANAの競争力は、あくまで「航空輸送の品質」に依拠していた。

3. 転換期:持株会社化と「航空+α」への布石

2013年のANAホールディングス設立は、航空事業一本足からの脱却を制度的に可能にする布石であった。持株会社体制の下で、デジタル、非航空、そしてまったく新しい領域への投資判断を、航空事業のP/Lから切り離して行える体制を整えた。

【新規事業創出】航空の枠を超える3つの挑戦

ANAホールディングスは、新規事業創出において複数の独立した組織体を設置する出島戦略を採用している。それぞれが異なるミッションを持ち、航空事業の論理に縛られない探索を行う。

ANA Digital Gate:デジタルトランスフォーメーションの起点

2018年に設立されたANA Digital Gateは、アジャイル開発やデザイン思考を航空グループに注入するためのデジタルイノベーション拠点である。スタートアップ的な開発手法を大企業に持ち込み、プロトタイプの高速検証を可能にした。

ANA X:旅のプラットフォーム戦略

ANA Xは、航空券の予約だけでなく、旅行体験全体をデジタルで統合するプラットフォーム事業を担う。マイレージプログラムを核に、宿泊・体験・決済まで一気通貫で提供する**「旅のスーパーアプリ」**構想を推進している。飛行機に乗らない顧客との接点を創出することで、航空事業の外縁を大きく広げた。

avatarin:カーブアウトが生んだ「瞬間移動」事業

ANAの新規事業創出における最大の成果が、**avatarin(アバターイン)**である。2020年にANAホールディングスからカーブアウト(スピンアウト)し、独立した事業会社として設立された。詳細は後述する。

【avatarin】距離の制約を超える:遠隔操作アバターの衝撃

avatarinは、ANAの社内ビジネスコンテストから生まれたアイデアが、世界的な技術賞を受賞し、最終的にカーブアウトによって独立企業となった、日本の大企業発イノベーションの代表的成功事例である。

newme:誰でも「瞬間移動」できるアバターロボット

avatarin社が開発した遠隔操作ロボット **「newme(ニューミー)」**は、タブレット端末を搭載したシンプルな移動体である。操作者はインターネット経由で遠隔地のnewmeを自在に操り、現地の人とコミュニケーションできる。身体的制約、距離の制約、時間の制約を超えて「そこにいる」体験を実現する。

「飛行機は人を物理的に運ぶ。しかし、すべての人が飛行機に乗れるわけではない。アバターは、移動できない人にも『そこにいる体験』を届けることができる」

――深堀昂 avatarin CEO

XPRIZE ANA Avatar:世界が認めた技術ビジョン

ANAは2018年に、総額1,000万ドルの国際技術コンペティション **「XPRIZE ANA Avatar」のスポンサーとなった。世界中のチームがアバター技術を競い合い、2024年に受賞チームが決定。航空会社がアバター技術の国際コンペを主催するという異例の取り組みは、ANAが「物理的な移動」の先にある「移動の民主化」**というビジョンを本気で追求していることの証左である。

カーブアウトの意義

avatarin社の独立は、コーポレートベンチャーの理想的な形態を示している。親会社の航空事業とは異なる時間軸・異なるKPIで成長を追求するため、ANAホールディングスから資金的・組織的に切り離された。同時に、ANAグループが持つ空港ネットワークや顧客基盤とのシナジーは維持するという、分離と連携の両立を実現している。

【オープンイノベーション】外部の力を取り込む協業姿勢

ANAホールディングスは、自社グループ内の新規事業創出だけでなく、外部スタートアップとの積極的な協業にも取り組んでいる。

スタートアップとの共創

空港オペレーション、機内サービス、MRO(整備・修理・オーバーホール)など、航空事業の各領域でスタートアップとの実証実験を推進。自前主義に固執せず、外部の技術やアイデアを積極的に取り込む姿勢は、航空業界の中でも先進的な取り組みである。アクセラレータープログラムの実施や、CVCを通じたスタートアップ投資も展開している。

異業種連携の拡大

航空会社が持つ「移動データ」「顧客接点」「空港というリアル拠点」は、多くの異業種企業にとって魅力的なアセットである。ANAはこれらのアセットを**オープンに共有する「場」**として活用し、MaaS(Mobility as a Service)や観光DXなどの領域で業種横断型の価値創造を推進している。

【COVID-19後の変革】航空一本足からの脱却

2020年のCOVID-19パンデミックは、航空産業に壊滅的な打撃を与えた。ANAホールディングスも2021年3月期に過去最大の赤字を記録する。しかし、この危機は同時に、非航空収益の拡大という戦略的転換を不可逆的に加速させた。

「第3の柱」の構築

航空事業(旅客・貨物)と旅行事業に続く「第3の柱」として、非航空領域の収益拡大が経営戦略の中核に据えられた。avatarin社のアバター事業、ANA Xのプラットフォーム事業、そしてマイレージを活用した経済圏の拡大がその柱となる。

人材の再配置と新たな挑戦

コロナ禍で航空需要が激減する中、ANAは社員を異業種企業に出向させるという大胆な施策を実行した。地方自治体、小売業、コールセンターなど、航空とは無縁の現場で働く経験は、社員の視野を広げ、「航空会社の常識」を相対化する効果をもたらした。この経験が、危機後の新規事業創出の土壌を豊かにしている。

「コロナ禍は、私たちに『飛行機が飛ばなくても、ANAグループとして社会に提供できる価値は何か』を突きつけた。その問いへの答えが、今の非航空戦略のすべての起点になっている」

――ANAホールディングス『統合報告書2023

展望:「移動の総合カンパニー」への進化

ANAホールディングスが描く未来像は、物理的な航空輸送を超えた**「移動の総合カンパニー」**である。飛行機による物理的移動、avatarin社によるデジタル移動(瞬間移動)、ANA Xによる移動体験の統合。これら3つの軸が融合することで、ANAは「距離」という人類最古の制約に、複数のアプローチで挑む企業へと変貌を遂げつつある。

航空一本足のリスクをCOVID-19で痛感したからこそ、その変革は後戻りできない本気のものとなっている。

関連項目

成功の鍵

1

出島戦略(複数の独立組織)

異なるミッションを持つ複数の独立組織体を設置し、航空事業の論理に縛られない探索を行う。

2

avatarin(カーブアウト)

親会社とは異なる時間軸・KPIで成長を追求しつつ、ANAのアセットとのシナジーを維持。

3

ANA X(旅のプラットフォーム)

マイレージを核に宿泊・体験・決済を統合し、飛行機に乗らない顧客との接点を創出。

4

オープンイノベーション

空港・機内・MRO領域でスタートアップと実証実験を推進し、外部の技術を積極活用。

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