日産自動車
Nissan Motor Co., Ltd.
ルノー・三菱自動車との3社連合CVC「Alliance Ventures」、外部アクセラレータ・プラットフォームへの参画、DeNAとの共同実証「Easy Ride」を組み合わせ、自前主義に頼らないオープンイノベーション体制を築いてきた自動車メーカー。
企業概要
- 企業名
- 日産自動車
- 業種
- 自動車・モビリティ
- 所在地
- 神奈川県横浜市西区
- 創業
- 1933年
- 公式サイト
- www.nissan-global.com/JP
新規事業の歴史
History & Evolution
自動車製造株式会社 設立
戸畑鋳物と日本産業の共同出資により資本金1,000万円で設立。翌1934年に日産自動車株式会社へ改称した。
ダットサン量産開始
横浜工場でダットサンの量産第1号がラインオフ。日本における自動車量産体制の礎を築いた。
Alliance Ventures 設立
ルノー・日産・三菱自動車の3社連合が総額10億ドル規模のCVCファンドを設立し、新モビリティ技術への投資を開始。
Plug and Play Japan エコシステム・パートナーシップ参画
Mobility分野のエコシステム・パートナーとして、デンソーや三菱UFJなど他業種企業と並び参画。
Easy Ride 実証実験を発表
DeNAとの共同開発による自動運転タクシーサービス「Easy Ride」の公道実証実験計画を発表。
横浜みなとみらいで公道実証開始
一般モニター約300組が参加し、日産グローバル本社と横浜ワールドポーターズを結ぶ往復約4.5kmのコースで実証走行を実施。
【歴史】鮎川義介と「連合型」創業
日産自動車のルーツは1933年12月26日、戸畑鋳物と日本産業の共同出資によって設立された「自動車製造株式会社」にさかのぼる。資本金1,000万円。翌1934年5月に「日産自動車株式会社」へ改称された。創業を主導したのは日産コンツェルンの総帥・鮎川義介である。日本が技術立国として欧米と対等に立つには自動車の国産化が不可欠だという確信が、この会社の出発点にあった。
鮎川は横浜に約6万坪の敷地を確保して工場を建設し、1935年4月にはダットサンの量産第1号をラインオフさせた。1年で約2,000台、1937年には累計生産1万台に達している。単独の資本に頼らず複数企業の共同出資で立ち上げる——この創業期のスタイルは、80年以上を経てAlliance Venturesという形で反復されることになる。
【戦略】Alliance Ventures — 3社連合CVC
2018年1月、ルノー・日産・三菱自動車の3社連合は、新モビリティ技術への投資を目的としたコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)ファンド「Alliance Ventures」の設立を発表した。総額10億ドル規模。初年度に最大2億ドル、その後5年程度にわたり同水準の投資を続ける計画が示された。投資対象は電池技術や自動運転など、単独の自動車メーカーでは開発リソースを賄いきれない先端領域である。
ルノー・日産・三菱自動車連合は、バッテリーや自動運転などの「ニュー・モビリティ」領域に最大10億ドルを投じる新たなコーポレートベンチャーキャピタルファンドの設立を発表した。
投資先の一例として電池技術を開発するIonic Materialsが挙げられている。1社単独のCVCと比べて資金規模を確保しやすい点が、3社連合スキームの最大の利点である。
【戦略】Plug and Play Japan参加
日産自動車は、シリコンバレー発のアクセラレータ運営会社Plug and Play Japanが組成するMobility分野の「エコシステム・パートナーシップ」にも参画している。同分野にはデンソー、三菱UFJ、東急不動産、SOMPOホールディングスといった異業種企業が名を連ねており、日産はその一角を担う立場にある。
自社単独でアクセラレータープログラムを新設するのではなく、既存の外部プラットフォームに加わることで、スタートアップとの接点を早期に確保できる点がこの参加方式の特徴である。ルノー・日産・三菱自動車連合のCVCであるAlliance Ventures自身も、中国拠点のPlug and Play Chinaと別途パートナーシップを結んでおり、資本投資(Alliance Ventures)と外部ネットワーク参加(Plug and Play)を組み合わせる構図はグローバル規模でも見られる。
【実証】Easy Ride — DeNAとの共同実証
Easy Rideは、日産自動車とDeNAが共同で進めた自動運転タクシーサービスの実証プロジェクトである。2018年2月23日、両社は電気自動車「リーフ」をベースとした自動運転車両を用いた新たな交通サービスの実証実験計画を発表し、同年3月5日から横浜・みなとみらい地区で公道実証を開始した。
実証には一般消費者のモニター約300組が参加し、日産グローバル本社から横浜ワールドポーターズまでの往復約4.5kmのコースを実験車両が走行した。技術基盤には、日産が米NASAと共同開発した遠隔監視・支援システム「SAM(Seamless Autonomous Mobility)」が用いられている。実証は単発で終わらず複数年にわたり継続実施され、両社は2020年代早期の本格サービス化を当時の目標として掲げていた。その後の実用化進捗については、本記事執筆時点の一次情報で確認できる範囲を超えるため、最新状況は日産・DeNA双方の公式発表を参照されたい。
このアプローチが機能する条件
日産自動車の打ち手が示すのは、CVCファンド(資本)・外部エコシステム参加(ネットワーク)・事業会社間の共同実証(現場実装)という3層を組み合わせる設計である。HondaがIGNITIONのような自前主義型の社内起業プログラムを軸に据えるのとは対照的に、日産は自社単独で抱え込まず「連合・外部・共同」の3方向に開いた設計を選んでいる。この設計が機能するのは、以下の条件が揃っている場合だといえる。
- アライアンス規模を確保できる資本提携関係があること:Alliance Venturesの10億ドル規模は、ルノー・三菱自動車という既存の資本提携先があって初めて実現した。単独企業がゼロから同規模のCVCを組成するのは容易ではない。
- 外部プラットフォームとの連携に前向きな企業文化があること:Plug and Play Japanのような外部エコシステムに参加するには、自社だけで囲い込まず他業種企業と情報・機会を共有する姿勢が前提になる。
- 事業会社間の共同実証を推進できる現場体制があること:Easy Rideのような公道実証は、技術部門と提携先(DeNA)の運営体制、行政との調整力が揃って初めて具体化する。
これらの条件が欠けている企業がAlliance Ventures型のスキームだけを模倣しても、資金の受け皿は作れても実装の現場力が伴わない、という乖離が起こりやすい。
関連項目
参考文献
- 日産自動車企業情報サイト「1930年代」
- 日産ヘリテージ「レジェンド01:鮎川義介」
- TechCrunch Japan「ルノー・日産・三菱がCVC設立、バッテリーや自動運転など『ニュー・モビリティ』に最大10億ドルを投資へ」(2018年1月10日)
- 日産自動車「アライアンス・ベンチャーズ、Plug and Play Chinaとの新しいパートナーシップを通じて革新的技術に焦点」
- Plug and Play Japan「Corporations」
- 日産ストーリーズ「ベンチャー企業と起こすイノベーション」
- 乗りものニュース「日産×DeNA『イージーライド』の利点と課題」
成功の鍵
Alliance Ventures(連合型CVC)
ルノー・日産・三菱自動車の資本提携関係を土台に、1社単独では組成しにくい大型CVCファンドを実現した。
Plug and Play Japan エコシステム・パートナーシップ
自社単独のアクセラレータ運営ではなく、外部プラットフォームへの参加という形で他業種企業との共創ネットワークを確保する。
Easy Ride(DeNA共同実証)
事業会社間の共同実証という形を取り、自動運転技術の社会実装を段階的に検証する設計。
創業期の連合型出資というDNA
戸畑鋳物・日本産業の共同出資という創業スタイル自体が、後のアライアンス型CVCの発想の原型になっている。
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