社内ベンチャー
社内ベンチャー(Corporate Venture / Internal Venture) とは、企業内に設立される独立性の高い新規事業組織のことである。「社内起業」とも呼ばれ、大企業のリソースを活用しながらもスタートアップのような機動力を持って新規事業を推進する仕組みを指す。
ソニーのSSAPやリクルートのRingなど、日本を代表する社内ベンチャー制度は数多く存在するが、制度の形骸化や事業化率の低さに悩む企業も多い。以下では、社内ベンチャーの成功条件、組織設計のポイント、先行事例から学ぶべき教訓について解説する。
既存事業の論理が新規事業を押しつぶす
大企業が新規事業を推進する際、既存の事業部門の中で行おうとすると、ほぼ確実に壁にぶつかる。既存事業の売上目標が優先され、新規事業への人員配置は後回しにされる。既存事業の評価基準で新規事業を測ると、 初年度から黒字化を求められ、本来必要な 仮説検証の時間が確保できない。
さらに、既存事業の顧客関係を壊すリスクを理由に、新しい市場へのアプローチが制限されることもある。新規事業と既存事業では、求められるマネジメントの方法論が根本的に異なる。この「両利きの経営」の難しさが、大企業のイノベーション活動における根本的な課題である。
制度はあるのに事業化に至らない現実
多くの大企業の新規事業担当者が、既存事業との共存の難しさに直面してきた。リクルートのRing制度は1982年に始まり、40年以上にわたって社内ベンチャーを生み出し続けている。しかし多くの企業では、制度を導入しても数年で形骸化するケースが後を絶たない。
ある大手電機メーカーでは、社内ベンチャー制度を立ち上げたものの、3年間で採択された 10件のうち事業化はわずか1件。主な原因は、事業責任者が本業との兼任を余儀なくされ、十分な時間を新規事業に割けなかったことであった。制度を作るだけでは不十分であり、 組織的な支援体制の整備 が成功の分水嶺となる。
社内ベンチャー成功に必要な3つの条件
社内ベンチャーを成功させるためには、3つの条件を整える必要がある。第一に、 経営層の明確なコミットメント。新規事業に対する独自の評価基準と時間軸を設定し、既存事業の論理で短期的な成果を求めないことを経営層が保証する。第二に、 人材のフルコミット。イントラプレナーを本業との兼任ではなく、新規事業に専任させる体制を構築する。第三に、出島戦略に基づく組織的な分離。人事評価、予算管理、意思決定プロセスを本体とは異なる仕組みで運用し、スタートアップのような機動力を確保する。守屋実氏が指摘するように、独自のKPIと時間軸の設定が不可欠である。
過去の採択案件を追跡し停滞要因を分析する
社内ベンチャーの立ち上げや改善に向けて、まず自社の現状を診断することを推奨する。既に新規事業提案制度がある場合は、過去の採択案件の「その後」を追跡し、どこで停滞しているかを分析する。制度がない場合は、ソニーのSSAPやパナソニックのGame Changer Catapultなど先行事例を研究し、自社に適したモデルを設計する。レリックのような専門支援企業との連携も、立ち上げの成功確率を高める有効な手段である。
社内ベンチャーの力学を理解すべき人
社内ベンチャーの理解が特に重要なのは、次のような人・組織である。新規事業提案制度の設計・運営を担当する経営企画部門。 社内起業に挑戦したい が、どのような支援体制があれば成功できるのか知りたいイントラプレナー。既存の社内ベンチャー制度の成果が出ず、制度の見直しを検討している経営層。
また、大企業からの転職組やスタートアップ経験者で、社内ベンチャーの事業責任者への就任を検討している人にとっても、大企業特有の社内ベンチャーの力学を理解しておくことは極めて重要である。
立場ごとに取るべき具体的アクション
社内ベンチャーに関わるすべての人が取るべき行動がある。経営層は、 新規事業と既存事業の評価基準を分離 する仕組みを構築しよう。事業担当者は、RingやSSAPのケーススタディを学び、成功パターンを理解しよう。人事部門は、社内ベンチャーへの異動が「キャリアのリスク」ではなく「成長の機会」として認識される制度設計を進めよう。CVCとの連携により、社内ベンチャーの事業化後に外部資金を導入するスキームも検討に値する。まずは自社の新規事業推進における組織的なボトルネックを特定することから始めよう。
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