ディスラプト
ディスラプト(Disrupt) とは、他社のイノベーションによって既存事業の市場構造が根本的に覆され、急激に衰退する現象のことである。「ディスラプション」とも呼ばれ、書店に対するAmazon、タクシー業界に対するUber、ホテル業界に対するAirbnbなどが代表的な事例として知られる。
デジタル化の進展により、異業種からの参入障壁が低下し、あらゆる産業がディスラプトのリスクにさらされている。以下では、ディスラプトの兆候を見極める方法、備えるための戦略、自らがディスラプターとなるための視点について解説する。
「うちの業界は安泰」という危機感の欠如
多くの日本の大企業は、自社の既存事業が他社のイノベーションによって突然崩壊するリスクを過小評価している。「自分たちの業界は安泰だ」「長年の顧客関係がある」「参入障壁が高い」という自負が、危機感の欠如を招いている。
しかし、デジタル化の進展により、 異業種からの参入が容易 になり、ディスラプトのリスクはあらゆる産業に及んでいる。書店がAmazonに、タクシー業界がUberに、ホテル業界がAirbnbに。ディスラプトは「ある日突然」起こるのではなく、 静かに進行し、気づいた時には手遅れ になっている。この「 ゆでガエル」状態こそが、ディスラプトの最も危険な特性である。
年率数%の変化が10年で壊滅的衰退となる
多くの業界で、ディスラプトの兆候は既に現れている。日本のある大手出版社は、電子書籍の普及が始まった2010年代初頭、「紙の本は永遠になくならない」と楽観視していた。実際、売上の低下は緩やかで、毎年3〜5%程度の減少であった。しかし10年後、紙の書籍・雑誌の売上は半減し、電子書籍市場の主要プレイヤーは出版社ではなくプラットフォーム企業であった。
年率数%の変化 は、単年で見れば「誤差の範囲」だが、 10年の複利で見れば壊滅的な衰退 となる。こうした「静かなディスラプト」に直面している業界は、現在も多数存在する。
ディスラプトに備える3つの対処法
ディスラプトのリスクに対処するためには、3つのアプローチが有効である。第一に、自社の業界における「ディスラプトシナリオ」を定期的に描く。「もし異業種のテクノロジー企業が当社の市場に参入したら、何が起こるか」を具体的にシミュレーションする。
第二に、 ディスラプターの視点 で自社の事業を分析する。自社の収益構造、顧客の不満、業界の非効率性を、攻撃者の目で見つめ直す。
第三に、 自らディスラプターになる戦略 を検討する。既存事業を守ることだけに固執せず、自社がイノベーションの主体となり、市場を再定義する側に回ることを選択肢に入れる。
自社の「ディスラプト脆弱性」を診断する
ディスラプトへの備えとして、まず自社の主力事業について「 ディスラプト脆弱性診断」を行うことを推奨する。顧客が本当に求めている価値は何か、その価値を異なる方法で提供できるプレイヤーは存在しないか、自社の収益モデルに 構造的な非効率 はないか、を問い直す。
次に、業界の周辺で起きている変化(スタートアップの参入、テクノロジーの進化、規制緩和など)をモニタリングする仕組みを構築する。ディスラプトは予防が最善策であり、危機感を持って「攻め」の姿勢でイノベーションに取り組む組織だけが、ディスラプトを回避できる。
成熟業界の経営層とイノベーション推進者へ
ディスラプトの概念を深く理解すべきなのは、次のような人・組織である。成熟した業界に属し、過去10年間ビジネスモデルが大きく変わっていない企業の経営層。「うちの業界は特殊だから」という理由でデジタル化への対応が遅れている組織。新規事業の必要性を社内に訴求したいが、危機感が共有されていないイノベーション推進担当者。
また、事業ポートフォリオの見直しを検討している経営企画部門にとって、ディスラプトリスクの評価は既存事業への投資判断を行う上で不可欠な視点である。
「Googleが参入したら」を経営チームで議論する
ディスラプトへの対策を始めるために、具体的なアクションを起こそう。まず、経営チームで「もし今日、Googleが当社の市場に参入したら何が起こるか」というテーマでディスカッションを行う。次に、自社の業界で過去5年間に参入した新規プレイヤー(スタートアップ、異業種企業)のリストを作成し、その動向を分析する。
破壊的イノベーションの理論を学び、自社がディスラプトされうるシナリオと、自らがディスラプターになるシナリオの両方を描くことが重要である。ディスラプトは脅威であると同時に、自社がイノベーションを起こすための最大の動機でもある。
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