ゲイン
ゲイン(Gain) とは、顧客がプロダクトやサービスを利用することで「得られると嬉しい」と感じる便益や価値のことである。ペイン(痛み・課題)が「なければ困る」切実な問題であるのに対し、ゲインは「あれば嬉しいが、なくても困らない」ポジティブな期待を指す。
バリュープロポジションの設計において、ゲインとペインを正しく区別することは、開発リソースの優先順位を決定づける。以下では、ゲインの分類・定量化の方法と、事業フェーズに応じた活用戦略を解説する。
「あったらいいな」と「なければ困る」の混同
新規事業の顧客課題を整理する際に、すべての課題を同列に扱ってしまい、プロダクトの優先順位が定まらない。顧客が「あったらいいな」と感じるゲインと、「今すぐ解決しなければ困る」ペインを区別せずに機能を詰め込んだ結果、プロダクトの焦点がぼやけてしまう。
特に大企業の新規事業では、社内ステークホルダーの「あれも入れたい、これも入れたい」という要望に応え続け、当初のコンセプトが見えなくなるケースが後を絶たない。 ゲインとペインの区別 ができなければ、 限られたリソースの配分を誤る ことになる。
50機能のうち使われたのはわずか5つだった
ある大企業の新規事業チームが、営業支援ツールを開発した。顧客ヒアリングで出てきた要望を全て実装した結果、 機能は50以上に膨らんだ。しかしリリース後、実際に 使われたのは5つの機能だけ だった。
利用率を分析すると、頻繁に使われている5機能はすべて「 ペイン解消」に関するもので、残りの45機能は「ゲイン提供」型だった。ゲインは「あれば嬉しい」が「なくても困らない」ため、使われなかったのである。 開発コスト3,000万円 のうち、実質的に価値を生んだのは わずか300万円分 だった。
ペインとゲインを正しく分類する3つの方法
- ペインとゲインを分類する:顧客の課題リストを作成する際に、「これがないと業務が止まる」(ペイン)と「これがあると業務が楽になる」(ゲイン)を明確に分類する。ペインは「痛み止め」、ゲインは「ビタミン剤」と捉え、初期プロダクトではペイン解消に集中する
- ゲインの価値を定量化する:ゲインは「あったらいいな」であるがゆえに、顧客が対価を払う意思があるかの検証が難しい。具体的に「この機能にいくら払うか」を聞くのではなく、「この機能がなくなったら困るか」を聞くことで、ゲインの真の価値を測定する
- 成長フェーズでゲインを活用する:PMF達成後のグロースフェーズでは、ゲインがプロダクトの差別化要因となる。競合との機能差がペインではつきにくい場合、ゲインの質と量で勝負することが有効な戦略となる
機能一覧をペイン型とゲイン型に仕分ける手順
明日から実行すべきは、現在のプロダクトの機能一覧を「ペイン解消型」と「ゲイン提供型」に分類する作業である。各機能の利用率データと突き合わせ、ゲイン提供型の機能の中で利用率が10%以下のものをリストアップする。
次に、開発ロードマップ上の未着手機能についても同様に分類し、ゲイン提供型の機能の優先順位を下げる。この作業により、 開発リソースをペイン解消型の機能に集中 させ、プロダクトの核心的な価値を強化できる。
機能過多でリソースが逼迫しているチームへ
ゲインの概念を正しく理解すべきなのは、プロダクトの機能過多に悩んでいる新規事業チームや、顧客の要望を全て実装しようとして開発リソースが逼迫しているプロダクトマネージャーである。また、ビジネスモデルキャンバスやバリュープロポジションキャンバスを使って事業設計を行う際に、ゲインとペインを区別して議論するための共通言語として、チーム全員が理解しておくべき概念である。
ペインとの違いを事業計画に反映させよう
まずは対になる概念であるペインとの違いを正確に理解し、自社プロダクトが解決している課題をこの2軸で整理しよう。顧客のウォンツとニーズの関係性も合わせて把握することで、プロダクトが提供する価値の全体像が見えてくる。ゲインは「なくても困らない」からこそ、ペイン解消の後に取り組むべきものであることを、事業計画の優先順位に反映させよう。
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