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用語集

ラガード

ラガード(Laggard) とは、イノベーション普及理論における最後の採用者カテゴリで、既存の代替手段がこの世から消えるまで新しいプロダクトやサービスを採用しないユーザ層のことである。市場全体の約16%を占め、変化への抵抗が最も強い。

新規事業の市場規模算出において、ラガード層を獲得対象に含めることは過大な見積もりにつながる。以下では、ラガードの特性を正しく理解し、現実的な到達可能市場の算出と各セグメントに応じた戦略設計について解説する。


市場規模の過大見積もりが事業計画を歪める

新規事業の市場規模を算出する際に、全人口や全企業数をそのまま母数にしてしまう過ちを犯す担当者は多い。しかし現実には、市場の最後尾に位置するラガード層は、 代替手段がこの世から消えるまで 新しいプロダクトを採用しない。

ラガードの存在を無視して 市場規模を過大に見積もる と、到達不可能な売上目標が設定され、事業計画全体が歪む。新規事業の成長シナリオにおいて、ラガード層は「獲得対象外」として明確に位置づけ、現実的な 到達可能市場(SAM/SOM) を算出する必要がある。

50万社の市場で3,000社しか獲得できなかった現実

ある企業が紙の帳票をデジタル化するSaaSを開発した。市場調査で「紙の帳票を使っている企業は国内 50万社」というデータを基に事業計画を作成したが、3年後の顧客数は 3,000社 にとどまった。

分析すると、残りの大多数は「紙で十分」「システムを変えたくない」という層であり、まさにラガードであった。彼らは法規制で紙の帳票が使えなくなるまで、デジタル化には動かない。50万社のうち実質的な獲得可能市場は 5万社程度 だったのである。

到達可能な市場を現実的に算出する3つの方法

  1. TAM・SAM・SOMにラガード比率を反映する:イノベーション普及理論に基づくと、ラガードは市場の約16%を占める。市場規模の算出時にこの比率を差し引き、さらにレイト・マジョリティの獲得にかかる時間とコストも考慮した現実的な市場規模を設定する
  2. ラガード向けの戦略は後回しにする:事業の初期〜中期段階では、ラガード層へのアプローチは投資対効果が極端に低い。限られたリソースをアーリー・アダプタとアーリー・マジョリティに集中し、市場全体の採用が進んでからラガードへの自然浸透を待つ戦略が合理的である
  3. 規制・外部環境の変化を味方につける:ラガードが動く最大のきっかけは、既存の代替手段が使えなくなることである。法規制の変更、技術の陳腐化、取引先からの要求など、外部環境の変化がラガードの移行を促す。これらの変化を予測し、タイミングを合わせた施策を準備しておく

営業リソースを採用タイミングで再配分する手順

明日から実行すべきは、自社の顧客リストを 顧客採用のタイミングで分類 することである。初期(最初の20%)に導入した顧客はアーリー・アダプタ〜アーリー・マジョリティ、中期(次の40%)はマジョリティ、そして現在も未導入の見込み客はレイト・マジョリティ〜ラガードの可能性が高い。

この分類に基づき、 営業リソースの配分を見直す。未導入の見込み客に対する営業活動のROIを計算し、ラガード層への投資を抑制して、より獲得可能性の高い層にリソースを再配分する。

市場規模予測と事業計画を策定する担当者へ

ラガードの概念が特に重要なのは、新規事業の 市場規模予測や事業計画の策定 を担当している人である。楽観的な市場規模の見積もりによって 非現実的な成長目標 が設定され、事業の評価を歪めるリスクを回避するために、ラガードの存在を織り込んだ計画が必要である。

また、既存顧客のほとんどを獲得し尽くして成長が鈍化している事業において、「残りの市場」がラガードであることを認識し、次の成長戦略を検討すべき段階にいる事業責任者にも有用である。

普及理論の全体像で浸透戦略を設計しよう

まずはレイト・マジョリティとの違いを明確に理解しよう。レイト・マジョリティは「社会的に認知されてから動く」のに対し、ラガードは「代替手段がなくなるまで動かない」という本質的な違いがある。アーリー・マジョリティアーリー・アダプタを含めたイノベーション普及理論の全体像を把握し、自社プロダクトの市場浸透戦略を各セグメントに応じて設計しよう。

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