プロセスイノベーション
プロセスイノベーション(Process Innovation) とは、新たな生産方式や業務プロセスの導入によって競争優位を確立するイノベーションのことである。シュンペーターが提唱したイノベーション5類型の一つ。
製品そのものを変えるのではなく、プロセス(工程・手法)を革新することで、コスト削減・品質向上・スピード改善を実現する。以下では、プロセスイノベーションの具体的手法と、自社のプロセス改善を新規事業として外販する可能性について解説する。
新製品だけがイノベーションではない
多くの企業がイノベーションと聞くと「画期的な新製品」を連想するが、実際にはプロセス(工程・手法)の革新によって競争優位を確立した企業の方がはるかに多い。 トヨタのかんばん方式、アマゾンのフルフィルメント、セブンイレブンの情報システムを活用した発注管理――いずれもプロダクトではなく プロセスのイノベーション である。
しかし、日本の大企業の新規事業部門では「プロセスの改善は既存事業の仕事」として切り分けられ、新規事業としてのプロセスイノベーションが検討されることは少ない。既存のやり方を根本的に変える発想が欠如しているために、コスト競争力やスピードでスタートアップや海外企業に劣後する構造が固定化している。
検査工程のAI化が年商10億円の新規事業に育った実例
ある食品メーカーの工場では、品質検査工程が全て目視による手作業で行われていた。検査員の高齢化と人手不足により、1ラインあたりの検査に45分かかり、不良品の見逃し率は3%に達していた。新規事業チームが画像認識AIを活用した自動検査システムを提案したが、工場長は「長年の勘と経験に勝るものはない」と反対。
しかし、パイロット導入の結果、検査時間は 45分から8分に短縮 され、不良品の見逃し率は0.1%に低下した。年間のコスト削減効果は 1.2億円、品質クレームは 85%減少 した。
このシステムは後に外販事業として他の食品メーカーにも導入が進み、 年商10億円規模 の新規事業に成長した。プロセスの革新が、自社の改善にとどまらず、新たなビジネスの種となった好例である。
プロセスを革新する3つの具体的手法
プロセスイノベーションを実現するための具体的手法は以下の3つである。
1) ボトルネック分析:既存のプロセスを可視化し、最も時間・コスト・品質のロスが大きい工程(ボトルネック)を特定する。 バリューストリームマッピング を活用し、付加価値を生まない工程を洗い出す。ボトルネックの解消が最大のROIを生む改善ポイントとなる。
2)テクノロジーの導入:AI、IoT、RPA、クラウドなどのテクノロジーを活用して、人手に依存していた工程を自動化・効率化する。ただし、テクノロジーありきではなく、課題起点でテクノロジーを選定することが重要である。
3) プロセスの外販事業化:自社のプロセス改善で培ったノウハウやシステムを、同業他社や異業種に向けてサービスとして提供する。自社の課題解決が、そのまま 新規事業の種 になるアプローチである。
非効率な工程を定量化し改善案を出す手順
プロセスイノベーションに取り組むために、明日から実行すべきアクションは以下の通りである。まず、自社の主要な業務プロセスの中で「最も非効率だ」と現場が感じている工程を3つ特定する。各部門の現場リーダーに「改善してほしい工程トップ3」をヒアリングするだけでも十分な情報が得られる。
次に、その工程にかかっている時間・人員・コストを 定量的に計測 する。「何となく非効率」ではなく「年間○○時間、○○万円のコスト」と数値化することが重要である。
さらに、その工程を半分の時間・コストで実現できるとしたら、どのようなアプローチが考えられるかをチームでブレインストーミングする。テクノロジーの活用、工程の統合、外部委託、そもそもの工程削除など、選択肢は複数ある。
オペレーションコストに悩む現場担当者へ
プロセスイノベーションが特に有効なのは、以下のような企業・担当者である。人手不足や人件費の高騰により、既存のオペレーションコストが経営を圧迫している製造業・物流業・サービス業の事業改善担当者。DX推進の号令はかかっているが、具体的に何をすべきか分からないデジタル推進部門。
また、自社のオペレーションノウハウを外販する新規事業の可能性を模索している企業の事業開発担当者にとっても、プロセスイノベーションは直接的なビジネス機会となる。一方、プロセスが確立されていない新規事業の立ち上げ段階では、まずプロセスを確立することが先であり、イノベーションは次のステップとなる。
ボトルネックを1つ特定するところから始めよう
プロセスイノベーションはイノベーションの5類型の中でも、最も投資対効果が高く、成果が可視化しやすい領域である。プロダクトイノベーションと組み合わせることで、製品の革新とプロセスの革新を同時に推進し、競争優位を確立できる。
また、サプライチェーンイノベーションとの連携により、自社のプロセス革新をサプライチェーン全体に波及させることも可能である。まずは今週中に自社の主要プロセスのボトルネックを1つ特定し、「この工程を半分にするには」という問いをチームに投げかけるところから始めよう。小さな改善の積み重ねが、やがて業界を変えるイノベーションにつながる。
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