パーパス
パーパス(Purpose) とは、企業や事業が社会に対して果たす存在理由・社会的意義のことである。
ミッション(自社が実現したい未来)やビジョン(実行方針)と並ぶ根幹概念であり、「Weの視点」で社会との関係性の中に存在意義を定義する点が特徴である。以下では、新規事業においてパーパスが果たす求心力の役割と、チームで機能するパーパスを策定するための具体的手法を解説する。
存在理由なき新規事業が迷走する構造
「何のためにこの事業をやっているのか」――この問いに明確に答えられない新規事業は、遅かれ早かれ迷走する。大企業の新規事業開発では、「市場規模が大きいから」「競合がやっているから」「経営陣に言われたから」といった外発的な動機で事業が立ち上がることが多い。
しかし、こうした動機では、最初の困難に直面した瞬間に チームの求心力が失われる。顧客獲得が思うように進まない、社内の協力が得られない、競合に先行される――こうした局面で踏ん張る力の源泉は、「この事業を通じて 社会をどう変えたいか」というパーパスにほかならない。パーパスなき新規事業は、最初の逆風で方向を見失い、組織の中で存在意義を問われることになる。
パーパスが事業を救った製薬企業の実例
ある大手製薬企業の社内新規事業は、当初「ヘルスケアアプリ市場の成長性」を根拠に立ち上がった。初年度は順調にユーザーを獲得したが、2年目に競合の大量参入でユーザー獲得コストが3倍に跳ね上がった。チームは疲弊し、メンバーの離脱が相次いだ。
事業継続か撤退かの判断を迫られた経営会議で、事業リーダーは数字ではなくパーパスを語った。「 処方箋のいらない予防医療を、全ての人に届けたい」。この言葉が経営陣の心を動かし、1年の猶予が与えられた。
パーパスを軸にプロダクトを再設計し、特定疾患の予防に特化したサービスとして再出発したところ、医療従事者からの推薦が増え、 3年目に黒字化を達成 した。パーパスがチームを救い、事業を救った実例である。
パーパスを策定し活用する3つの手法
効果的なパーパスを策定し活用するための具体的手法は以下の3つである。
1) 「Weの視点」での言語化:パーパスは「私たちと社会が共にこうありたい」というWeの視点で語られる。ミッションが「Iの視点」で自社の行動を宣言するのに対し、パーパスは 社会との関係性の中で存在意義を定義 する。「〇〇な社会を共に実現する」という形式が基本となる。
2) 事業判断基準としての運用:パーパスは壁に飾るスローガンではなく、 日々の意思決定で参照される判断基準 でなければならない。「この施策はパーパスに合致しているか」「このピボットはパーパスから逸脱していないか」と問い続けることで、パーパスが生きた指針となる。
3)ステークホルダーとの共鳴設計:パーパスは社内チームだけでなく、顧客・パートナー・投資家など全てのステークホルダーと共有し、共鳴を得るものである。パーパスに共感する人々が自然と集まる「求心力」を設計する。
明日から始めるパーパスワークの進め方
パーパスの策定に向けて明日から取り組むべきアクションは以下の通りである。まず、チーム全員で「この事業がなくなったら、社会は何を失うか」を各自3つずつ書き出すワークを実施する。この問いは、事業の社会的意義を炙り出す最もシンプルな方法である。
次に、出てきた回答の中から最も共感が集まるテーマを1つ選び、「私たちは○○を通じて、○○な社会を実現する」という形でパーパスの草案を作る。そして、この草案をチーム外の5人(顧客、パートナー、社内の別部門の同僚など)に見せ、「この言葉に共感するか」「この事業に関わりたいと思うか」を率直に聞く。
共感が得られるパーパスは、 採用力・営業力・チームの結束力 の全てを高める最強の武器となる。
パーパス策定が急務である人・状況
パーパスの策定・見直しが特に重要なのは、以下のような状況にある人々である。新規事業を立ち上げたばかりで、チームの方向性と社会的意義を定義する必要がある事業リーダー。事業が困難な局面に直面しており、チームの求心力を取り戻すための「拠り所」が必要な事業責任者。
また、新規事業の社内プレゼンテーションにおいて、数字だけでなく社会的意義を語ることで経営層の共感と投資を引き出したい企画担当者にも、パーパスの言語化は直接的に役立つ。一方、パーパスよりも先にビジネスモデルの検証が急務の段階では、パーパスの策定に時間をかけすぎず、仮のパーパスを設定して検証を進める方が効率的である。
事業の羅針盤としてのパーパスを定める
パーパスはビジョンやミッションと並ぶ企業・事業の根幹概念である。パーパスが「なぜ存在するか(Why)」を語り、ミッションが「何を実現するか(What)」を宣言し、ビジョンが「どう実行するか(How)」を示す。この3つが一貫していることが、強い事業の条件である。
パーパスをさらに大きく、野心的に表現したものがムーンショットである。今週中にチーム全員で30分のパーパスワークショップを開催し、「仮パーパス」を1つ言語化してほしい。言葉にすることで、チームの目線が揃い、判断のスピードが上がる。パーパスは事業の羅針盤であり、最初に定めるべきものである。
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