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用語集

バリュエーション(企業価値評価)

バリュエーション(Valuation / 企業価値評価) とは、企業や事業の経済的価値を金額で定量的に評価することである。スタートアップの資金調達、M&A、カーブアウト、CVC投資など、あらゆる資本取引の基盤となる重要な概念である。

新規事業やスタートアップの価値評価は、売上や利益が安定した既存事業とは異なる難しさを持つ。将来のキャッシュフロー予測が不確実であるため、定量指標だけでなく市場ポテンシャルや技術の独自性といった定性的な要素も加味する必要がある。以下では、バリュエーションの基本手法、新規事業特有の論点、大企業における活用について解説する。


新規事業の「価値」を示せない壁

大企業の新規事業担当者が、事業の成長に向けて外部資金の調達やカーブアウトを検討する際、最初に立ちはだかるのが「この事業はいくらの価値があるのか」という問いである。既存事業であれば過去の業績や資産をもとに評価できるが、新規事業は売上がゼロか微々たるものであるケースが大半である。

数値で価値を示せなければ、投資家や経営層を説得することは困難である。一方で、根拠のない楽観的な評価は信頼を損ない、資金調達そのものを危うくする。

この「価値を客観的に示せない」という課題は、大企業発のベンチャーに限らず、すべてのスタートアップに共通する根本的な問題である。

評価額を巡って交渉が暗礁に乗り上げる

ある大手製造業が、社内で育てたAI関連の新規事業をカーブアウトする際、バリュエーションを巡って半年間の交渉が続いた。事業チームは将来の市場規模を根拠に 50億円の評価 を主張したが、CFO部門は直近の売上実績をもとに 5億円が妥当 だと反論した。

10倍もの差 が生じた原因は、 評価手法の選択基準が社内で統一されていなかった ことにある。

別のIT企業では、CVCが出資を検討したスタートアップに対し、過度に保守的な評価を提示した結果、競合他社のCVCに投資機会を奪われた。バリュエーションの知識不足は、機会損失にも過大投資にもつながりうる。

価値を見極める3つの評価アプローチ

バリュエーションには大きく3つのアプローチがある。第一に、 DCF法(Discounted Cash Flow)。将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて算出する手法で、中長期の収益計画が描ける事業に適している。

第二に、 マルチプル法(類似企業比較法)。上場している類似企業の売上倍率やEBITDA倍率を参考に、対象企業の価値を推定する。市場に比較対象がある場合に有効で、スピーディーに概算を出せる利点がある。

第三に、 ベンチャーキャピタル法。将来の想定EXIT価格(IPOやM&A時の時価総額)から逆算して現在の評価額を求める手法である。初期段階のスタートアップで、まだ安定した収益がない場合に多く用いられる。実務では、これらの手法を複数組み合わせてクロスチェックを行うことが一般的である。

評価手法の選定基準を社内で整備する

バリュエーションの精度を高めるために、まず自社の新規事業のステージ(シードアーリーミドルレイター)を見極めることから始めるべきである。 ステージに応じて適切な評価手法は異なる

シード段階では定量データが乏しいため、ベンチャーキャピタル法やマルチプル法の活用が現実的である。ミドル以降であればDCF法も選択肢に入る。

CVCとして投資活動を行う企業は、投資委員会で使用するバリュエーション手法の選定基準を明文化し、 評価の透明性と一貫性 を担保することが重要である。

バリュエーション知識が不可欠な人材と場面

バリュエーションの理解が特に重要なのは、次のような立場にある人物・組織である。新規事業を外部資金調達やカーブアウトによって成長させたいと考えている事業責任者。CVCの投資担当者として、スタートアップの適正な企業価値を見極める必要がある人材。

シリーズA〜Cの資金調達ラウンドで、投資家と対等に交渉したいスタートアップの経営チーム。また、スピンオフや事業売却を検討している経営企画部門にとっても、バリュエーションの実務知識は不可欠である。

自社事業の仮バリュエーションを算出する

バリュエーションの実践力を高めるために、まず自社の新規事業の仮バリュエーションを3つの手法で算出してみよう。DCF法では5年間の収益計画を作成し、マルチプル法では上場している類似企業を3社以上ピックアップして比較する。

VC法では、5年後のEXIT想定額を設定して逆算する。 3つの結果を並べる ことで、各手法の特性と自社事業に適した手法が見えてくる。投資家や経営層との対話に備え、エクイティの希薄化シミュレーションも合わせて実施することを推奨する。

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