人物概要
田口弘は、1963年にミスミ(現ミスミグループ本社) を創業した日本の実業家である。製造業向け工場消耗品・機械部品のカタログ通販モデルを確立し、受注翌日出荷・定価販売という当時の業界慣行を覆す流通革命を起こした。その後、2002年に守屋実と共同でエムアウトを設立。「新規事業の専門会社」という独自のコンセプトのもと、ミスミで培った事業創出の方法論を外部化・体系化した。
経歴
田口弘は1963年、三住商事(後のミスミ) を設立。プレス金型部品をカタログで販売する事業モデルは、当時の業界では異端だったが、「即日受注・翌日出荷」「定価表示による明瞭な取引」を徹底することで急成長した。1977年には商品カタログを本格化し、製造業における生産財流通のインフラとして同社を確立させた。
2002年、田口はミスミで多くの新規事業を手がけた守屋実とともに株式会社エムアウト(M-Out) を共同設立した。エムアウトは「新規事業を複数同時に立ち上げ、上場またはカーブアウトで自立させる」専業の事業創出会社というコンセプトを持ち、社内起業家育成の実験場として機能した。
ミスミにおける新事業創出モデル
ミスミにおける田口の最大の貢献のひとつは、「社員が新規事業を提案し、承認されれば事業責任者として立ち上げる」という社内起業の仕組みを実装したことにある。守屋実が入社後に立ち上げた動物病院向けカタログ通販事業は、この仕組みが機能した代表例だ。提案 → 承認 → 少人数チームで立ち上げ → スケールという流れは、のちに「コーポレートベンチャー」「社内ベンチャー制度」として各大企業が参照するモデルとなった。
エムアウトの意義
エムアウトは「新規事業の専門会社」という日本初の試みとして位置づけられる。複数の事業を並行して立ち上げ、出口(売却・上場・廃止)を前提に設計するアプローチは、当時の日本企業の事業多角化論とは本質的に異なる発想だった。守屋実は後に「エムアウトでの経験が『新規事業家』という職業概念の原体験だった」と述懐している。田口はこの事業創出の思想を組織論・資本論として体系化し、守屋を通じてその後の多くのスタートアップ・大企業新規事業に間接的な影響を与えた。
参考文献
- ミスミグループ本社 公式サイト
- 守屋実『起業は意志が10割』(講談社)における田口弘との関係記述
- 守屋実 – IntraStar人物ページ