人物概要
塚原俊之は、コニカミノルタの Business Innovation Center(BIC) において新規事業を推進してきたイントラプレナーである。出島戦略における出島と本島(既存事業部門)の断絶という構造的課題に正面から向き合い、 対話を通じた架け橋づくり の実践知を築いた。多言語通訳サービス「KOTOBAL」をはじめとする社会実装型の新規事業を推進し、大企業における新規事業開発のロールモデルを示している。
経歴
コニカミノルタは2014年に世界5拠点に BIC(Business Innovation Center) を設立し、新規事業開発のための専門組織を立ち上げた。塚原はこのBICにおいて、革新的な発想と高度な技術を組み合わせた新たなビジネスの可能性に挑戦してきた。
BICではスタートアップのような風土を持ち、自ら想いや考えを発信してチャレンジする文化が根づいている。塚原のもとでは、 研修後にBICへの異動を希望する社員 が増えるなど、組織としての求心力も高まった。出島側の独自性を守りつつ、本島との接点を設計段階から組み込む手法を確立した。
既存事業部門との関係構築を地道に積み重ね、新規事業の 価値検証から社会実装まで を一貫して推進できるイントラプレナーとしてのキャリアを築いている。
主な実績
最も象徴的な成果は、BICから生まれた多言語通訳サービス 「KOTOBAL(コトバル)」 の社会実装である。AI翻訳とプロ通訳のハイブリッドで最大32言語に対応し、全国100以上の自治体窓口に導入された。最初は人力対応で価値を成立させ、実践から仕組み化するという手法で、MVPの本質を体現したプロダクトである。
出島と本島の 対話を通じた価値検証の手法 を確立したことも大きな実績だ。「本島を倍にするにはどうしたらいいか」という問いを起点にすることで、既存事業部門にとっても意味のある新規事業を設計できる枠組みを構築した。
思考が固まり切る前に素早く検証に移り、顧客の反応を確認しながら方向性を定めていく 顧客起点の検証サイクル も、塚原の実践から学べる重要なアプローチである。
思想とアプローチ
塚原の思想の核心は、「出島住民は、本島の人に理解される ビジョンを描いて対話を重ねていく」という点にある。一方的に理解を求めるのではなく、本島の人にとっても意味のあるビジョンを提示し、粘り強く対話を続ける。数字で説得するのではなく、価値が固まりきってからファクトを持って説明するという判断基準を重視する。
「提供価値があると顧客がどう変化するかを顧客に確認する」
完璧な事業計画を作ってから動くのではなく、紙の上でもいいから 価値を表現して顧客に確認する。そして、最初から仕組みを作ろうとせず、人力対応で価値を成立させてから仕組み化する。この地道なプロセスを軽視しない姿勢が、KOTOBALの全国展開という成果につながった。