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事業事例

コニカミノルタ BIC ― 全世界5拠点の「会社を生み出す組織」

コニカミノルタ株式会社
精密機器 / ヘルスケア #出島戦略 #外部人材活用 #ヘルスケア #カンパニーインキュベーター
事業・会社概要
事業会社
コニカミノルタ株式会社
業界
精密機器 / ヘルスケア
設立/開始
1936年(昭和11年)
開始年
2013年
代表者
大幸 利充
資本金
375億1,900万円
本社
東京都千代田区
コーポレートサイト
www.konicaminolta.com/jp-ja

History & Evolution

2006

カメラ事業を売却

カメラ・フォト事業をソニーに譲渡。事業ポートフォリオ転換の起点となる

2013

BIC構想の始動

役員クラスが事業変革をテーマに議論。市村雄二の提案から2ヶ月半でBIC設立が決定

2014

BIC Japan設立

所長に波木井卓を招聘。全メンバーを外部からゼロベースで採用

2017

Kunkun bodyなど複数事業が始動

クラウドファンディングを活用した事業検証など、BIC発の事業が相次いで立ち上がる

2020

全世界5拠点体制の確立

マレーシア・欧州・米国・中国・日本の5拠点でグローバルなイノベーション創出体制を構築

カメラ事業売却後の危機感 ― 次の柱をどう創るか

コニカミノルタは2006年にカメラ・フォト事業をソニーに売却した。祖業を手放すという重い決断の背景には、デジタル化の波に対する経営判断があった。しかし、残されたMFP(複合機)事業もペーパーレス化の進展により長期的な成長が見通せない状況にあった。

2013年、役員クラスが集まり事業変革をテーマに議論を開始した。「既存事業の延長線上ではない、まったく新しい事業の柱をつくる必要がある」という認識が共有された。このとき、大手IT企業から転職してきた市村雄二が大胆な提案を行う。

「全世界にBICをつくりましょう。既存の組織から完全に独立した、会社を生み出す組織が必要です」

――コニカミノルタの新規事業戦略(Forbes Japan, 2016年)

提案からわずか 2ヶ月半 でBIC設立が決定した。この意思決定の速さ自体が、コニカミノルタの危機感の深さを物語っている。

「会社を生み出す組織」― BICの設計思想

BICは「Business Innovation Center」の略称だが、その本質は 「Company Incubator(会社を生み出す組織)」 である。単なる新規事業開発部門ではなく、独立した事業体を次々と生み出すことをミッションとしている。

事業創出のプロセスは明確に定義されている。 課題発見→着想→技術スカウト→試作品→PoC→初期マーケティング→セールス という7段階を、3年をメドに完遂する。出口は「他企業への売却」「社内事業部への移管」「子会社化」の3パターンが設計されており、事業がBIC内に滞留することを防いでいる。

「評価基準は3つある。社会的価値・顧客価値があるか、サスティナブルか、ビジネスプランとして成立するか。そして失敗も加点評価する」

――コニカミノルタBICの挑戦(日本科学技術連盟, 2020年)

失敗を加点評価するという仕組みは、大企業のイノベーション組織において極めて重要な設計判断である。挑戦を奨励し、失敗から学ぶ文化を制度として担保している。

全員外部採用 ― 出島戦略の徹底

BICの最大の特徴は、 人材を全てゼロから外部採用した 点にある。既存社員の異動ではなく、アントレプレナー経験者や異業種の専門家を集めることで、大企業の常識や慣行に縛られない組織を構築した。

BIC Japanの所長には、自らアントレプレナーとしての経験を持つ波木井卓が招聘された。波木井は事業を立ち上げた経験者でなければイノベーションの現場は率いられないという信念のもと、チーム全体を外部人材で構成した。

「技術は自社のものでなくてもいい。大事なのは顧客の課題を見つけることだ。必要な技術があれば外からスカウトすればいい」

――コニカミノルタ BICの事業創出(日経BP Beyond Health, 2019年)

この「顧客課題起点」のアプローチは、多くの大企業が陥りがちな「自社技術シーズ起点」の発想とは対照的である。コニカミノルタはマレーシア、欧州、米国、中国、日本の 全世界5拠点 にBICを展開し、グローバルなイノベーション創出体制を構築した。

5つの事業が示すBICの多様性

BICからはKunkun body、PonPon CODE、Monicia、MELON、KOTOBALなど多様な事業が生まれた。体臭チェッカー、知育玩具、高齢者見守り、瞑想アプリ、多言語通訳と、領域は多岐にわたる。

特にヘルスケア・ライフサイエンス領域への注力が顕著であり、コニカミノルタの既存事業であるX線フィルムや医療機器との技術的親和性を活かしている。一方で、クラウドファンディングを活用した市場検証など、 大企業の資金力に頼らない事業検証手法 も積極的に採用している。

事業の出口も多様である。社内事業部に移管された事業、子会社化された事業、サービス終了となった事業がそれぞれ存在し、BICが設計した3パターンの出口戦略が実際に機能していることを示している。

この事例から学べること

コニカミノルタBICの事例は、大企業が出島戦略を実践する際の組織設計について重要な示唆を含んでいる。

第一に、「外部人材によるゼロベース組織」が出島戦略の成否を分けるという点である。 既存社員の異動ではなく全員を外部から採用するという徹底した設計により、大企業の慣行や暗黙のルールに縛られない組織を実現した。所長にアントレプレナー経験者を据えたことも、組織のDNAを決定づけた重要な判断である。

第二に、顧客課題起点のアプローチと明確な出口戦略の組み合わせが事業の質を担保するという点である。 自社技術シーズではなく顧客課題から出発し、3年メドで他企業売却・事業部移管・子会社化のいずれかに着地させる設計は、事業の滞留を防ぎBICの機能を維持する仕組みとして有効に機能した。

第三に、「失敗の加点評価」が挑戦する文化を制度的に担保するという点である。 大企業では失敗を恐れて挑戦しない文化が根付きやすい。コニカミノルタBICは評価制度そのものに失敗の加点を組み込むことで、挑戦を奨励する仕組みを構築した。制度設計なくして文化は変わらないという原則を体現した事例である。

関連項目

成功の鍵

1

外部人材によるゼロベース組織構築

既存社員の異動ではなく全員を外部から採用することで、大企業の常識に縛られない組織を実現した

2

顧客課題起点で技術は後付け

自社技術シーズではなく顧客の課題発見から始め、必要な技術は社外からもスカウトする柔軟な姿勢

3

3年メドの明確な出口戦略

他企業売却・社内事業部移管・子会社化の3パターンで出口を設計し、事業の滞留を防いだ

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