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事業会社

パナソニック

パナソニック ロゴ

Panasonic Holdings Corporation

「水道哲学」を原点に、Game Changer Catapultと出島スキーム(BeeEdge)で家電の枠を超えた新規事業創出に挑む、100年企業の変革者。

企業概要
企業名
パナソニック
業種
電機 / 住宅 / 車載 / B2Bソリューション
所在地
大阪府門真市
創業
1918年
公式サイト
holdings.panasonic/jp

新規事業の歴史

History & Evolution

1918

創業(二股ソケットの発売)

生活者の身近な不便を解消する「改良」からスタート。事業創造の原点。

1932

水道哲学の提唱

「良質な製品を安く供給し、貧しさを無くす」。パーパス経営の先駆け。

1933

事業部制の導入

日本で初めて「一国一城の主」としての自律経営を確立。リーダーの量産。

2016

Game Changer Catapult 創設

「家電メーカー」の再定義。既存ドメインに縛られない新規事業創出の射出機。

2018

BeeEdge 設立

スピード重視の「出島」での事業化スキーム。外部資本との共創。

2022

everiwa サービス開始

EVインフラを共創で支えるプラットフォーム。モノからコトへの完全転換。

【歴史】「水道哲学」:松下幸之助が説いた企業の公器性

パナソニックの新規事業の根底には、創業者・ 松下幸之助 氏が1932年に提唱した「水道哲学」が流れている。

「産業人の使命は、水道の水の如く、良質な製品を安く大量に供給し、この世から貧しさを無くすことにある」

――松下幸之助『実践経営哲学

この思想は、単なるビジネスの成功を超えた「社会への貢献」を第一に置く、現在の パーパス経営(Purpose Management) の先駆けである。現代のパナソニックが取り組む新規事業も、この「社会の不(Negative)を解消する」という精神を、最新のテクノロジーで再定義する試みに他ならない。

1. 創成期:生活の不便を解消せよ「二股ソケット」

1918年、電球の抜き差しが不便だった時代に、一つのコンセントから二つの電気を取れる「二股ソケット」を発売。これは、ユーザーの小さな「困りごと」から出発する、パナソニック流の事業創造の原点であった。

2. 成長期:事業部制による「自律経営」の確立

組織が巨大化してもスピードを落とさないため、幸之助氏は日本で初めて「事業部制」を導入。各事業部に大幅な権限を委譲し、社員一人ひとりが「経営者マインド」を持って働く環境を整えた。これは現代の「社内起業家」育成の礎となっている。

3. 変革期:家電から「社会インフラ」の会社へ

2010年代の経営危機を経て、パナソニックは大きく舵を切る。テレビなどのB2C家電に固執せず、車載電池(テスラへの供給)、住宅、そしてサプライチェーン・ソフトウェア(Blue Yonder)といった、より難易度の高い社会課題解決(B2B)領域へと主戦場を移した。

4. 現代:GCカタパルトによる「志」の解放

2016年に始動した GCカタパルト(Game Changer Catapult) は、既存の事業部の枠からはみ出す「尖った志(Will)」を持った社員を救い上げるための装置である。

【戦略】「両利きの経営」を実現する3つの階層

パナソニックは、既存事業の深化と、新規事業の探索を同時に進める「両利きの経営」を、以下の3階層で実践している。

  • 第1階層:事業部内イノベーション: 既存の家電や設備の延長線上での進化。
  • 第2階層:GCカタパルト(探索): 既存ドメインに縛られない、DeliSofterのような「新しい体験」の創出。
  • 第3階層:everiwa(プラットフォーム): 自社単体ではなく、他社との共創で社会インフラそのものを創る試み。

【事例深掘り】GCカタパルトが生んだ事業群

DeliSofter:介護食の常識を変えた調理家電

DeliSofterは、普通の食材を見た目そのままに柔らかくする調理器である。GCカタパルトの公募から生まれ、BeeEdgeを通じて事業会社「ギフモ」として独立。「家族みんなで同じ食卓を囲む」という、介護現場の切実な不(Negative)を解消した。大企業の技術力を、ニッチだが深い課題に投入する好例である。

everiwa:EV充電インフラの共創プラットフォーム

everiwaは、EVの充電スポットをオーナーとユーザーでシェアリングする共創型プラットフォームである。パナソニック一社で充電インフラを整備するのではなく、個人や法人が「充電ホスト」となれるCtoCモデルを構築した。「豊かな地球を次世代へ」というコミュニティのビジョンのもと、脱炭素社会の土台を共創で築くという、パナソニックの新しい事業モデルを象徴している。

KAIROS:映像制作のゲームチェンジャー

KAIROSは、IP技術を活用した次世代映像プラットフォームである。従来のハードウェア中心の放送機器をソフトウェアで再定義し、2025年には大阪・関西万博のリモートプロダクションにも採用された。2026年度には30億円規模、350社利用を目標にクラウドサービスへの展開も加速している。

「GCカタパルトの本質は、事業を生み出すことだけではない。挑戦した社員が元の組織に戻った時、その経験が組織全体を変える触媒になる。それが『カタパリスト』の真の価値だ」

――深田昌則、GCカタパルト責任者

【キーパーソン】変革を牽引するリーダーたち

  • 深田昌則GCカタパルトの創設者であり責任者。「ボツになりそうなアイデアこそ事業化する」という逆転の発想で、累計220テーマの応募を集め、3社の事業会社を輩出した。社内の「カタパリスト・コミュニティ」を通じて、新規事業経験者のネットワークを既存組織の変革力に転換する仕組みを構築している。

【成功と失敗】巨大企業が学んだ教訓

成功の構造: GCカタパルトとBeeEdgeの「二段構え」が、パナソニックの新規事業成功率を高めている。GCカタパルトで志を持つ人材を発掘し、BeeEdgeの出島スキームで大企業の「免疫反応」を回避しながらスピーディーに事業化する。この2つが連動することで、「家電メーカーの常識」に縛られない事業が生まれる。

直面する課題: 一方で、GCカタパルトからの事業化率は依然として高くない。累計220テーマ応募に対して事業会社化は3社。この数字は、大企業の新規事業が「事業化のラストワンマイル」にいかに大きな壁を持つかを示している。BeeEdgeが外部資本を入れるスキームを導入したのは、まさにこの壁を突破するための施策である。

「既存事業の深化だけでは、100年企業は次の100年を生き残れない。探索と深化の両方を回し続ける『両利き』の体制を、制度として担保しなければならない」

――パナソニック『Game Changer Catapult 8年間の軌跡

展望:2030年「幸せのインフラ」への進化

パナソニックが目指すのは、24時間365日の「くらし」を支えるプラットフォームである。KAIROSのクラウド化、everiwaの充電インフラ拡大、そしてGCカタパルトが継続的に輩出するカタパリストたちの存在が、「モノの会社」から「くらしの仕組みの会社」への変革を加速させている。

創業者の説いた「物質と心の豊かさ」の両立は、今、脱炭素社会の実現やAIによる労働の解放という、グローバルな課題解決という形で、新しい花を咲かせようとしている。

関連項目

成功の鍵

1

両利きの経営(深化と探索)

既存事業の効率化(深化)と、GCカタパルトによる新市場の開拓(探索)の両立。

2

出島スキーム(BeeEdge)

社内の重い決裁から解放し、独立したブランドとスピードで市場を検証する。

3

共創プラットフォーム(everiwa)

一社完結ではなく、競合や異業種も含めたエコシステムのハブになる。

4

パーパス経営(社会の公器)

脱炭素や労働の解放など、巨大な社会課題の解決をビジネスの駆動力とする。

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