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用語集

ムーンショット

ムーンショット(Moonshot) とは、大きなインパクトが期待される野心的で挑戦的な目標のことである。1960年代のアポロ計画における月面着陸の挑戦に由来する。

既存事業の延長線上にはないブレイクスルーを生み出すために、非常識なほど大きな目標を掲げて組織の思考の枠を外すアプローチであり、漸進的な改善では到達できない成長を実現する手段となる。以下では、ムーンショット型の目標設定を組織に導入する具体的手法と実践ステップを解説する。


手堅い目標では破壊的イノベーションに勝てない

日本の大企業の新規事業計画書には、「3年で売上10億円」「既存事業のシナジーを活かした隣接領域への展開」といった現実的だが小粒な目標が並びがちである。確かにリスクは低いが、このような 漸進的なアプローチ では、 破壊的イノベーション を起こすスタートアップや海外企業との競争に勝つことはできない。

経営陣が求める「大きな新規事業」と、現場が提案する「手堅い小さな事業」のギャップは埋まらない。根本的な問題は、組織として 「非常識なほど大きな目標」 を設定し、それに向かって本気で取り組む仕組みと文化が欠如していることである。ムーンショット型の思考がなければ、イノベーションは生まれない。

野心的なお題設定が社員の思考を解放した事例

ある自動車部品メーカーの新規事業コンテストでは、毎年30件ほどの応募がある。しかし、そのほとんどが「既存技術の応用」「隣接市場への展開」という安全な提案ばかりだった。審査員の経営陣も「面白いが小さい」と評しつつ、かといって大きな提案には「根拠がない」と却下する。

この矛盾に悩んだ事務局は、あるとき 「10年後に自動車が不要になる世界」 をテーマに設定した。すると、 応募の質が劇的に変わった。「都市丸ごと移動体にする」「人が移動しなくていい社会インフラ」など、従来の延長線上にはない提案が続出した。

ムーンショット型のお題設定が、社員の思考の枠を解放した瞬間だった。提案の8割は実現困難だったが、残り2割から本気の事業探索が始まった。

ムーンショットを組織に導入する3つの手法

ムーンショットを組織に導入するための具体的手法は以下の3つである。1) バックキャスティング思考 の徹底:10年後の理想状態を先に描き、そこから逆算して今やるべきことを定義する。「今の延長で何ができるか」ではなく 「あるべき未来のために何が必要か」 と問う。ケネディの月面着陸宣言がまさにこのアプローチであった。

2) 失敗を前提とした評価制度:ムーンショット型の挑戦は失敗確率が高い。だからこそ、結果ではなく 挑戦のプロセスと学び を評価する仕組みが必要である。Google Xの「失敗ボーナス」のような制度設計が参考になる。

3) 探索と深化の分離:既存事業の改善(深化)とムーンショット型の挑戦(探索)を組織的に分離し、異なる評価基準とリソース配分を適用する。 両利きの経営 の実践である。

「業界消滅」のブレストで発想を飛躍させる

明日から始められるアクションとして、まずチームで「10年後に自社の業界が消滅したとしたら、その原因は何か?」というテーマでブレインストーミングを実施してほしい。この問いは、既存の延長線上の思考を強制的に外す効果がある。

次に、出てきたアイデアの中から最も野心的なものを1つ選び、 「最初の90日で何を検証すべきか」 を具体化する。ムーンショットは壮大なビジョンだが、 検証は小さく始める のが鉄則である。

さらに、社内でムーンショット型の提案が歓迎される場を意図的に設計する。通常の事業会議ではなく、年に2回の「未来構想セッション」のような特別な場を設けることで、日常業務の延長では出てこない発想を引き出す。

新たな成長エンジンを求める企業に最適

ムーンショット型の目標設定が特に有効なのは、以下のような企業・担当者である。既存事業の成熟により新たな成長エンジンを必要としているが、漸進的な新規事業では経営インパクトに届かないと感じている経営層。

社内の 新規事業提案制度が形骸化 し、小粒な提案ばかりが集まることに課題を感じている新規事業推進部門。また、優秀な若手社員の離職が続いており、ワクワクする挑戦機会を社内に創出したいと考える人事・組織開発部門にも響くアプローチである。

一方、足元の事業基盤が不安定な企業や、直近の業績改善が急務の場合は、まず既存事業の立て直しが優先される。

大きな目標が人材と資源を引き寄せる

ムーンショットはパーパスと密接に結びつく概念である。社会に対してどのような価値を提供するのかというパーパスが明確であればこそ、非常識なほど大きな目標も説得力を持つ。ビジョンをムーンショット型に再設定することで、組織の求心力が生まれる。

また、アート・シンキングの手法はムーンショット型の発想を引き出す有効な手段である。まずは今月中にイノベーションの全体像を理解し、自社にとってのムーンショットとは何かをチームで議論する場を設けてほしい。大きな目標は、それ自体が人を惹きつけ、優秀な人材と資源を呼び込む力を持っている。

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