革新的イノベーション
革新的イノベーション(Radical Innovation) とは、既存事業の延長線上にある漸進的な改善ではなく、事業構造そのものを抜本的に変革するタイプのイノベーションである。市場のルールや競争の前提を根本から書き換える非連続な変化を伴う点が特徴である。
大企業が次の成長エンジンを創出するためには、革新的イノベーションの推進が不可欠となる。以下では、革新的イノベーションの定義と漸進的イノベーションとの違い、大企業で実現するための組織設計と推進手法について解説する。
改善の延長では市場を失う危機
多くの日本企業が「イノベーション」を掲げながら、実態は 既存事業の延長線上にある改善 に留まっている。年間研究開発費を 数百億円 投じても、生まれるのは既存製品の性能向上や機能追加ばかりである。市場環境が激変する中、漸進的な改善だけでは競合に追い抜かれ、気づいたときには市場そのものを失っている。
経営層は「大胆な変革を」と号令をかけるが、現場は既存の評価制度や意思決定プロセスに縛られ、事業構造を根本から変えるような提案を出せずにいる。革新的イノベーションの本質を理解しないまま、形だけの「イノベーション推進室」が量産されているのが現実である。
12件却下された間に異業種に席巻された現場
ある大手製造業の新規事業担当者は、3年間で12件のアイデアを提案したが、すべて「既存事業とのシナジーが不明確」という理由で却下された。結局承認されたのは、既存製品の派生版だけであった。一方で、その市場には異業種から参入した企業が全く新しいビジネスモデルで席巻し、わずか 2年でシェア30%を獲得 した。社内の承認プロセスに半年かけている間に、 市場のルールそのものが書き換えられていた のである。「もっと早く動いていれば」という後悔は、多くの企業人が共有する感覚ではないだろうか。
非連続な挑戦を実現する3つのアプローチ
革新的イノベーションを実現するためには、以下の3つのアプローチが有効である。
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既存事業の評価基準とは完全に切り離した 独立評価制度 を設ける。売上やROIではなく、 学習速度や仮説検証の質 で評価することで、非連続な挑戦を促進する。
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社外の異質な知見を積極的に取り込む仕組みを構築する。スタートアップとの協業、異業種との共同研究、海外拠点との連携により、自社の常識を相対化する視点を得る。
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経営トップが 「失敗の許容範囲」を明示的に宣言 し、実際に失敗した挑戦者を評価する前例を作る。言葉だけでなく、 人事評価に組み込む ことが不可欠である。
意思決定のボトルネックを特定する
明日から始められる具体的なアクションとして、まず自社の過去5年間の新規事業案件を「漸進的改善」と「非連続な挑戦」に分類してみることを勧める。おそらく9割以上が前者に分類されるはずである。
次に、自社の意思決定プロセスのどこに「 非連続な挑戦を阻むボトルネック」があるかを特定する。承認フロー、評価基準、予算配分のいずれかに必ず原因がある。その分析結果を経営層に提示し、革新的イノベーション専用の意思決定ルートを提案することが、変革の第一歩となる。
次の成長エンジンを模索する企業に必須
革新的イノベーションの理解が特に重要なのは、既存事業が成熟期に入り次の成長エンジンを模索している企業の経営企画部門や新規事業開発部門の担当者である。また、中期経営計画で「事業ポートフォリオの転換」を掲げながら、具体的な方法論を持たない経営層にとっても必須の概念である。研究開発部門のリーダーが、技術の延長線上だけでなく事業構造の変革という視点を持つためにも、この概念の正しい理解が不可欠である。
市場のルールを書き換える推進体制を構築する
まずはイノベーションの全体像を把握し、革新的イノベーションが破壊的イノベーションや漸進的イノベーションとどう異なるのかを整理することから始めてほしい。革新的イノベーションは技術的な連続性を必ずしも必要としない。重要なのは、市場のルールそのものを書き換える意志と、それを実行できる組織体制の構築である。自社にとっての「非連続な変化」とは何かを定義し、そのための専用の推進体制を検討してほしい。
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