人物概要
瀬戸欣哉は、住友商事の社内ベンチャーとして2000年に工場用間接資材のB2Bオンライン通販「MonotaRO(モノタロウ)」を創業し、日本を代表するイントラプレナーとなった人物である。米国赴任中にアマゾン創業期のモデルに着想を得て、鉄鋼部門の商社マンからEC事業の起業家へと転身。上場以来400倍の株価成長を実現し、出身企業の住友商事の時価総額を凌ぐ企業へと育て上げた。その後、プロ経営者としてLIXILグループのCEOを務めるなど、大企業変革の担い手としても活躍している。
経歴
瀬戸は1960年生まれ。東京大学経済学部を卒業後、1983年に住友商事に入社し、鉄鋼部門に配属された。1990年代、米国デトロイト、プレシジョンバーサービス社、アイアンダイナミクス社と渡り歩いた米国赴任時代に、同社の歴史を変える転機が訪れる。1994年には ダートマス大学タック経営大学院でMBAを取得し、このとき創業直後のアマゾンと出会った。
「 間接資材(MRO)のネット販売をやれば日本で絶対に当たる 」という確信を持ち帰った瀬戸は、帰国後に住友商事でこの構想を提案。2000年、住友商事と米グレンジャー社の合弁による社内ベンチャー「住商グレンジャー株式会社」(後のMonotaRO)を6名のチームで大阪に設立した。翌2001年に代表取締役社長に就任し、本格的に事業を牽引していく。
主な実績
MonotaROの成長は、日本型イントラプレナーシップの成功例として際立つ。2006年に東証マザーズへ上場し、2009年に東証一部へ昇格。製造業の工場現場を中心に300万点超の間接資材を扱うB2B ECとして成長し、顧客数は 770万社超 に達した。2016年のリーマンショック以降の成長ランキングでは日本1位・世界9位を記録し、株価は上場以来400倍以上の上昇を果たして、出身企業の住友商事の時価総額を凌駕するまでに成長した。
MonotaROをJAXAの宇宙ベンチャーになぞらえた「工場版アマゾン」として確立させた後、瀬戸は2016年にLIXILグループ(旧トステム・INAX等が統合した住生活大手)の代表執行役社長兼CEOに招聘され、大企業変革にも力を発揮した。LIXIL時代には「Do The Right Thing」という思想のもと、組織改革・グローバル事業の再編・ガバナンス強化を推進し、日本経済界で「プロ経営者」の代表格として認知されるようになった。
思想とアプローチ
瀬戸の事業観の核心にあるのは、「最初の80%が見えたら動く」というスピード重視の原則である。市場調査で100%の確信を得てから動くのではなく、勝ち筋の輪郭が見えた時点で即座に実行に移すことで、商機を捉えるというスタイルだ。MBA時代に触れたクレイトン・クリステンセン『イノベーションのジレンマ』にも影響を受け、「既存事業の論理に縛られず、外から自社を壊す発想を持つこと」の重要性を体得している。
「間接資材は絶対やれる。アマゾンが証明したモデルを日本の工場現場にそのまま持ち込めばいい」
座右の銘として「夫子の道は忠恕のみ(論語)」を挙げており、誠実さと他者への共感を経営哲学の根底に据える。住友商事というブランドと資本力を背負いながらも、スタートアップと同等のスピード感で市場に挑んだ姿勢は、商社マン出身のイントラプレナーが切り拓いた新しいキャリアモデルとして広く語り継がれている。