課題・背景:年間廃棄衣類100万トンの「リユース化」はなぜ難しいか
環境省の推計では、日本で年間に廃棄される衣類は約51万トン。買い取り・回収に回る量を含めると年間100万トン規模の衣類が「捨てられる可能性のある状態」に置かれている。問題は量ではなくコストにある。
中古衣類の「選別」は極めて労働集約的な工程だ。ブランド・素材・状態・サイズを一点ずつ目視で判断し、再販先(フリマアプリ・古着店・輸出向けなど)を振り分ける作業は、自動化が難しい最後の砦とされてきた。回収コストと選別コストが重なると、安価な大量廃棄の方が経済合理的になるケースすら生じる。
取り組みの経緯:伊藤忠・メルカリが相次ぎ株主に
ECOMMITは2013年に宮崎県都城市で創業。BtoB向けの不用品回収・再流通を起点に、2019年以降はアパレル大手との取引を拡大してきた。
資本政策の面では、2023年のシリーズAで伊藤忠商事・日本郵政キャピタルなど大手事業会社が参加し、産業横断的な「資源循環」へのシフトを戦略上位概念に掲げた。さらに2025年9月にはメルカリと資本業務提携を締結。フリマアプリとリユーススタートアップが連携する構造を作ることで、「一次流通→二次流通→循環」のバリューチェーンを統合する狙いがある。
2026年4月20日、シリーズBで総額15億円の調達を完了した。 メルカリは資本業務提携に続き今回の引受先にも加わる形で、筆頭級の株主ポジションを維持。ECOMMITの2026年3月期売上高は前期比約2倍の108億円に到達しており、アパレル業界トップ20の8社が顧客として定着している。
サービス・事業の仕組み:「東京サーキュラーセンター」と自動化投資
ECOMMITの基本モデルは、回収・選別・再流通を一体で請け負う「リユース・プロセスアウトソーシング」 だ。アパレル企業から不用在庫や店頭回収品を受け取り、東京サーキュラーセンター(東京都瑞穂町)で選別・価値判定を行い、フリマ・古着店・輸出業者などへの再販ルートに振り分ける。
今回の15億円は、東京サーキュラーセンターへの自動倉庫システム導入(2027年稼働予定)に充てられる。衣類の移動・データ登録などの物理的工程をロボット化し、スタッフが「価値判断」という付加価値の高い工程に集中できる体制を構築する狙いだ。
メルカリとの業務連携では、ECOMMITが選別した衣類をメルカリプラットフォームで再販する流れと、一次流通アパレルブランドとの「回収・リセールスキーム」の設計を進めている。
この事例から学べること
- プラットフォーマー(メルカリ)がリユース上流(回収・選別)に出資することで「廃棄ゼロバリューチェーン」の設計が可能になる ── フリマアプリはユーザーが自ら出品できる商品しか扱えない構造的限界を持つ。ECOMMITとの連携はその制約を超え、「捨てていた層」の衣類を取り込む。
- 大量廃棄への社会的批判が大手アパレルのコスト構造を変えつつある ── アパレル業界トップ20が顧客になった背景には、ESG開示・廃棄規制の強化が大手に「廃棄コストを見せられない」環境を作ったことがある。
- 自動化投資のタイミングは「顧客定着後」 ── 創業から10年以上かけて顧客基盤と処理量を積み上げ、自動化の経済合理性が成立した段階で大型設備投資に踏み切る判断は、資本効率の観点から教科書的な正解に近い。