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事業事例

ispace × KDDI、月面通信事業「ルナ・コネクト」共同検討 ── 大企業が宇宙スタートアップと新規事業領域を共同開拓

株式会社ispace
宇宙開発 / 月面インフラ #宇宙ビジネス #KDDI #月面通信 #ディープテック #新規事業 #オープンイノベーション
事業・会社概要
事業会社
株式会社ispace
業界
宇宙開発 / 月面インフラ
設立/開始
2010年
開始年
2010年
本社
東京都中央区
サービスサイト
ispace-inc.com
コーポレートサイト
ispace-inc.com

History & Evolution

2010年

ispace設立

月面資源探査・輸送を目的にispace(旧白兎プロジェクト)として設立。月面着陸船の開発を主軸に事業を構築。

2023年4月

MISSION 1 月面着陸試み

国内初の民間月面着陸を試みるが、最終降下フェーズで着陸船が月面に衝突し着陸未達成。技術データの蓄積に成功。

2024年11月

KDDIが宇宙戦略基金「月-地球間通信FS」委託先に選定

経済産業省が主導する宇宙戦略基金のもと、KDDIが月地球間通信システム開発・実証フィジビリティスタディの委託先に選定される。ispaceとの委託業務契約も締結。

2026年3月27日

ルナ・コネクトサービス構想発表、KDDIと基本合意締結

月周回自社衛星を活用した通信・測位・観測・SSAサービス「ルナ・コネクト」の事業構想を発表。KDDIと地上局の運用・利用について共同検討する基本合意を締結。

2027年(目標)

MISSION 2.5 月周回衛星投入予定

Argo Space社の打ち上げサービスを活用し、ルナ・コネクト用の最初の月周回衛星1基を投入予定。サービス開始を目指す。

課題・背景:月面開発が本格化する時代の「通信インフラ空白」

米NASA主導のアルテミス計画を機に、月面での有人活動・資源採掘・恒久基地建設が2030年代に向けたリアルな政策目標として浮上している。日本でも経済産業省が「宇宙戦略基金」(2023年設立)を通じて民間宇宙企業への投資・委託を本格化させている。

しかし月面インフラを考える上で見落とされがちな論点がある。月面での活動を支える「通信・測位インフラ」は現時点で存在しない。 月面着陸船や月面車(ローバー)の間、あるいは月と地球の間で安定したデータ通信を行うためには、月を周回する通信衛星が必要になる。この「月面における宇宙インターネット」のインフラ整備が新規事業の空白地帯となっている。

取り組みの経緯:KDDIは地上局、ispaceは月周回衛星で役割分担

KDDIは2024年11月、経済産業省の宇宙戦略基金が設定した「月-地球間通信システム開発・実証(FS)」の委託先に選定された。地上局及び地上局ネットワークの基本設計と月面モバイル通信環境構築の実現可能性評価を担うもので、この研究においてKDDIはispaceと委託業務契約を締結し技術情報の相互提供を行ってきた。

2026年3月27日、ispaceは東京・日本橋で開催した事業戦略説明会で「ルナ・コネクトサービス」の事業構想を正式発表した。 同時に、KDDIと地上局の運用・利用について共同検討を進める基本合意書を締結したことも公表した。

本合意でKDDIは「地上局の機能および月面における通信サービスの在り方について必要な技術的・事業的情報をispaceに提供する」という役割を担う。ispaceが月周回衛星を持ち、KDDIが地上インフラを提供するという垂直統合型の役割分担が基本設計だ。

サービス・事業の仕組み:2030年代に向けた月面通信インフラ

ルナ・コネクトサービスは月周回衛星が提供する4つのサービスで構成される。

① 通信サービス — 月面着陸船・ローバー・将来の月面基地と地球間のデータ通信中継 ② 測位サービス — 月面での位置情報提供(地球上のGPSに相当) ③ 観測サービス — 月面・月周辺の撮像・観測データ配信 ④ 宇宙状況把握(SSA) — 月周辺の宇宙デブリ・航行安全に関するデータ提供

ispaceは2027年にMISSION 2.5として最初の月周回衛星1基を投入し、2030年までに少なくとも5基を展開する計画だ。市場規模は2040年代に少なくとも年間4,500億円規模への成長を試算している。

この事例から学べること

  • 大企業(KDDI)が政府のFS委託を活用してスタートアップと新規事業を共同開拓するパターンが出現している ── 宇宙戦略基金のような政策資金は、大企業が「リスクの高い新領域」に踏み込む際の後押しとなる。政府・大企業・スタートアップの三者連携モデルだ。
  • 大企業が持つ「地上インフラ」とスタートアップが持つ「宇宙資産」の組み合わせが新しい事業機会を生む ── 通信キャリアは地上局・通信技術・顧客基盤という「地上インフラ」を持ち、月面スタートアップは「宇宙側の資産」を持つ。どちらか単体では実現できないサービスが両者の協業から生まれる。
  • 「基本合意」ステージから出口まで10年以上かかる事業でも、事業連携の枠組みを早期に固めることに戦略的意味がある ── 月面通信市場は2027年以降に実証、2030年代に本格立ち上がりの見込み。現時点での合意は「先行的なポジション取り」の意味合いが強い。

関連項目

参考文献・出典

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