課題・背景:大企業グループの東南アジア事業開拓にCVCが必要とされた理由
NTTグループは通信・IT・データセンター事業を世界各地で展開しているが、東南アジアのスタートアップエコシステムとの連携は組織的に薄かった。東南アジアはGDP成長率・デジタル化速度・人口規模の3点で日本市場にない魅力を持ち、AI・IoT・スマートシティ分野で急速にスタートアップが台頭している。
しかし大企業グループが個別に東南アジアのスタートアップを発掘・評価・連携するには、現地ネットワークと投資専門人材が不可欠だ。NTTグループはNTT Startup Challengeを通じてプログラム面での接点を作ってきたが、出資という長期コミットメントを担う専門ビークルが欠けていた。
取り組みの経緯:NTTドコモベンチャーズ × NTTファイナンスの共同設立
NTTドコモベンチャーズとNTTファイナンスは2025年12月15日、シンガポールに「Synexia Ventures Pte. Ltd.」を共同設立した。これがNTTグループとして初めての東南アジア専門スタートアップ投資ビークルとなる。
ファンド規模は1,000万米ドル(約15億円)。現地運営はシンガポールのKK FundでGeneral Partnerを務めるKuan Hsuが担い、シンガポール・インドネシア・マレーシア・フィリピアを投資対象国とする。投資重点分野はAI・IoT・スマートシティ・ロボティクス・ドローンで、NTTグループの事業戦略と整合するスタートアップを選定する方針だ。
2026年4月にはECプラットフォーム「SECAI MARCHE」への初出資を実行し、グループ各社との具体的な事業連携が始まっている。
サービス・事業の仕組み:NTT Startup ChallengeとCVCの連携構造
Synexia Venturesは単独で機能するCVCではなく、NTT Startup Challengeという年次プログラムとの連携が構造の核心だ。
NTT Startup Challengeは、NTTグループ15社が参画して東南アジア・インドのスタートアップとの協業案件を創出するプログラムで、2025年には約1,200社から応募があった。Synexia Venturesはプログラムを通じて発掘されたスタートアップへの出資オプションを持ち、短期協業から中長期的なパートナーシップへの移行を可能にする。
「エコシステムへの貢献と、オープンイノベーションの実現性向上を目指す」(NTTグループ発表)
この事例から学べること
- グループ横断型CVCビークルは「プログラム×出資」の組み合わせで実効性が高まる ── NTT Startup ChallengeとSynexia Venturesの連携はその好例
- ファンド規模1,000万ドルは大規模ではないが、現地GP(KK Fund)との共同運営で現地ネットワークを補完する設計が重要
- 投資先のSECAI MARCHEのような「グループ事業と接点のある東南アジアスタートアップ」を発掘する経路として、現地密着型CVCが機能している
関連項目
参考文献・出典
- NTTグループ初の東南アジアスタートアップ投資ファンド「Synexia Ventures」を設立 — 共同通信PRワイヤー、2025年11月11日
- NTT Group Establishes Its First Southeast Asia Startup Investment Vehicle — NTT DOCOMO Ventures、2025年11月
- NTT Group launches Southeast Asia venture vehicle Synexia Ventures — e27、2025年11月