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事業会社

NEC

NEC ロゴ

NEC Corporation

IT・通信大手。「仕組みを作っただけでは誰も踊らない」という洞察から、文化醸成と制度設計の両輪でイノベーションを推進。

企業概要
企業名
NEC
業種
IT / 通信 / エレクトロニクス
所在地
東京都港区
創業
1899年
公式サイト
jpn.nec.com

新規事業の歴史

History & Evolution

1899

日本電気株式会社として創業

日本初の外資合弁企業として設立。通信技術を基盤に、IT・エレクトロニクス分野で成長

2012

株価99円の経営危機

半導体事業の構造改革遅れなどにより株価が低迷。「良い技術を作っているのにビジネスは下手」と言われる状況に

2017

北瀬聖光が事業イノベーション戦略本部長に就任

「6つのイノベーションモデル」を構築。人事・評価制度の変更を含む大幅な「規制緩和」を推進

2018

dotDataカーブアウト・NEC X設立

AI技術をカーブアウトしてdotDataを設立。同時にシリコンバレーにベンチャースタジオNEC Xを開設

2020

BIRD INITIATIVE設立(異業種6社共創)

NECを含む6社出資の共創型R&D会社を設立。北瀬聖光が代表取締役に就任

2022

NEC Innovation Challenge開始

グローバルビジネスコンテストを開始。累計1,569件・104カ国からスタートアップが参加する規模に成長

2025

NEC X - JAPAN Edition始動・NEC Open Innovation 2025開催

シリコンバレーの知見を日本に展開するスタートアップスタジオを開設。「Elev X!」プログラムを始動

NECの新規事業の歴史 — 時系列で全体像を把握

日本のIT・通信業界を代表するNECは、 1899年 に日本初の外資合弁企業として創業し、長年にわたり 官公庁向けのシステムインテグレーション事業 を柱としてきた。通信インフラ、コンピューター、半導体と事業領域を拡大したが、クラウド化の進展やDXの波により、従来型のSIビジネスだけでは持続的な成長が難しくなっている。

2012年には株価が99円まで下落 する経営危機に見舞われた。「良い技術を作っているのにビジネスは下手」と評されてきたNECにとって、技術を事業に転換する力の欠如は長年の構造的課題であった。新規事業提案制度を作り、予算を確保し、審査会を開催しても、肝心の「社員が本気で取り組む」状態にならなければ、すべての仕組みは空転する。

「KPIが異なる経営は、混ぜるな危険。現業は利益を最大化する。新規事業は新しい価値を作る」

――【NEC新事業創造の仕掛け人】イノベーション文化を築き、会社のルールを変える方法(TECHBLITZ)

転機は 2017年北瀬聖光がNEC事業イノベーション戦略本部長に就任したことである。カーブアウトオープンイノベーション、社内ビジネスコンテストなど 「6つのイノベーションモデル」 を構築し、制度と文化の両面から組織を変革した。

新規事業戦略の特徴

NECの新規事業戦略は、「多角的なイノベーションモデル」と「文化変革」を組み合わせた包括的なアプローチが特徴である。

第一に、単一の手法に頼らない 「6つのイノベーションモデル」 を並行して運営している点が際立つ。カーブアウト(dotData)、ベンチャースタジオ(NEC X)、異業種共創R&D(BIRD INITIATIVE)、グローバルアクセラレーター(NIC)、社内ビジネスコンテスト、ヘルスケア投資という多角的なアプローチで、新規事業の「打席数」を最大化している。

第二に、北瀬聖光が推し進めたのは制度設計にとどまらない大幅な 「規制緩和」 である。キャリア採用の自由度拡張、評価制度の変更、契約書の見直しなど、新規事業の現場が動きやすい環境を整備した。ガバナンスの見直しを通じて、既存事業のKPIで新規事業を評価してしまう構造的な問題に切り込んだ。

「NECの新規事業創出は、挑戦する機会と組織文化を改革することから始まった。採用基準や評価制度を変えなければ、人が新規事業開発へと真に向き合うようにはならない」

――NECの新規事業創出 挑戦する機会と組織文化を改革(先端教育オンライン, 2025年2月号)

第三に、 ベンチャースタジオモデル の確立がある。NEC Xでは技術提供の対価として株式を取得し、スタートアップの成長後にリターンを得るモデルを採用。自社技術を外部の起業家と掛け合わせることで、社内では生まれにくい事業を創出する仕組みを構築した。

代表的な事業事例の深掘り

dotData — カーブアウトの成功モデル

2018年2月、NECの最先端AI技術をカーブアウトして設立された 「dotData」 は、新規事業創出における最大の成功事例のひとつである。NECの最年少主席研究員(当時33歳)であった藤巻遼平がCEOに就任し、データサイエンスの全プロセスを自動化するプラットフォームを開発した。

「あえて将来の有望株は外で育てる。NECはdotDataを独立した会社として運営できる構造にした」

――あえて将来の有望株は外で育てる。NECからのカーブアウトで生まれたAIスタートアップ(TECHBLITZ)

2019年にはジャフコとゴールドマン・サックスから 累計4,300万ドルのシリーズA資金調達 を完了。NEC内であれば1〜2年かかる開発が、カーブアウトによりわずか数カ月で市場投入できた。大企業の技術を「外」に出すことで意思決定のスピードを飛躍的に高めた好例であり、スピンアウト戦略の教科書的な事例である。

NEC X — シリコンバレー発のベンチャースタジオ

2018年7月、シリコンバレーのサンタクララに設立された 「NEC X」 は、NECの先端技術と現地エコシステムを掛け合わせたオープンイノベーションの拠点である。「Ignite」(プレシード期向け)と「Boost」(シード期向け)の2つのプログラムを提供し、これまでに Venture Studio Programを9回実施 した。

スタートアップ9件・社内事業化1件の計 10件の事業 を立ち上げた実績がある。2025年には日本版の 「NEC X - JAPAN Edition」 を東京で始動し、「Elev X!」プログラムを通じてNEC発の技術を国内でもスタートアップとして育てる体制を整えた。シリコンバレーで培った 150社以上の育成経験 を日本に還元する試みとして注目される。

BIRD INITIATIVE — 異業種共創型R&D

2020年9月、NECを含む 異業種6社の出資 により設立された「BIRD INITIATIVE」は、シミュレーションとAIを融合した共創型R&Dから新事業を創出するジョイントベンチャーである。北瀬聖光が代表取締役を務め、2023年4月にはIntent ExchangeとBitQuarkの 2プロジェクトをスピンオフ した。

単独企業では実現しにくい領域横断的な研究開発を、異業種の知見を持ち寄ることで加速させるモデルである。NEC単体のイノベーションにとどまらず、産業全体の新規事業エコシステムの構築を目指す野心的な取り組みである。

キーパーソンと組織文化

NECのイノベーション推進において、北瀬聖光(Corporate SVP)の果たした役割は決定的である。2017年の就任以来、「6つのイノベーションモデル」の構築から、人事・評価制度の変更、ガバナンスポリシーの見直しまで、制度と文化の両面から組織を変えてきた。

2023年には著書 『大企業イノベーション 新規事業を成功に導く4つの鍵』(幻冬舎)を出版し、NECでの実践知を体系化している。「自身が楽しんでない。信じていない。そんな事業を顧客が買ってくれるわけない」という言葉は、新規事業推進における 文化醸成の核心 を突いている。

NECの組織文化は、長年の官公庁ビジネスに根ざした 「確実性重視」 の傾向が強かった。新規事業に必要な「不確実性への耐性」とは対極にある文化である。北瀬はこの課題に対して、制度の改善ではなく「文化の変革」に正面から取り組んだ。dotDataの成功が「NECでも変われる」という空気を生み、一つの成功が次の挑戦者を呼ぶ好循環が生まれている。

成功と失敗から学べること

NECの事例から学ぶべき最大の教訓は、 「制度だけでは人は動かない」 という本質的な洞察である。多くの企業が新規事業プログラムを導入しても成果が出ないのは、制度の問題ではなく、挑戦を阻む組織文化や評価制度が変わっていないからである。北瀬が「規制緩和」と呼んだ人事・評価・契約の見直しは、この根本原因に切り込んだアプローチである。

dotDataのカーブアウト成功は、「大企業の技術は、大企業の中で育てなくてもよい」という重要な示唆を含む。NECの研究所には優れた技術が多数あったが、社内の意思決定プロセスでは事業化のスピードが追いつかなかった。「外で育てる」という選択肢を持てたことが、結果的に技術の価値最大化につながった。

一方で、 NEC Innovation Challengeの累計1,569件の応募 から実際にどれだけの事業が持続的に成長しているかという点では、まだ道半ばといえる。グローバル規模のアクセラレーターを運営するコストと成果のバランスは、今後も検証が必要である。

今後の展望

NECは 2025年をオープンイノベーション加速の年 と位置づけている。2025年12月に開催された「NEC Open Innovation 2025」には 約200名の関係者 が参集し、NEC X - JAPAN Editionの始動を発表した。シリコンバレーの経験を国内に展開する 「Elev X!」プログラム は、NECの10万人の従業員基盤と顧客チャネルを活用できる点で、米国版のNEC Xとは異なる価値を提供する。

ヘルスケア・ライフサイエンス事業のコアビジネス化も重要なテーマである。2025年2月には 「ヘルスケア生成AI活用プラットフォーム」 の提供を開始し、医療DXの推進に本格参入した。東京科学大学との協定によるバーチャル医療・ヘルスケアシステムの研究開発も進む。

NEC Innovation Challengeの第4回では 大日本印刷をプラチナパートナー に迎え、「ヘルスケア」「サステナビリティ」「現場業務DX」「メディア/エンタメ」の4テーマでスタートアップとの事業共創を目指している。制度と文化の両輪で組織を変えてきたNECが、次の成長の柱をどう築くかが注目される。

関連項目

成功の鍵

1

6つのイノベーションモデル

カーブアウト・NEC X・BIRD INITIATIVE・NIC・社内公募・ヘルスケア投資の多角的アプローチで新規事業を推進

2

制度と文化の両輪改革

制度設計だけでなく、人事評価・キャリア採用・契約書見直しなどの「規制緩和」で組織文化そのものを変革

3

ベンチャースタジオモデル

NEC Xで技術提供の対価として株式を取得するモデルを確立。スタートアップの成長後にリターンを得る仕組み

4

グローバル・オープンイノベーション

NEC Innovation Challengeで104カ国のスタートアップとの事業共創を実現。国内にもNEC X Tokyoを展開

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