NTTデータ
NTT DATA Corporation
国内最大級のITサービス企業。「豊洲の港から」を起点にグローバルオープンイノベーションを10年超継続し、社内ベンチャー制度や新規事業創発支援サービスIDAで自社と顧客双方のイノベーションを推進。
企業概要
- 企業名
- NTTデータ
- 業種
- ITサービス / システムインテグレーション
- 所在地
- 東京都江東区
- 創業
- 1988年
- 公式サイト
- www.nttdata.com/jp
新規事業の歴史
History & Evolution
NTTデータ設立
NTTのデータ通信事業を分離し設立。官公庁・金融向けSI事業を中核に成長を開始。
オープンイノベーション事業創発室を発足
SI企業の枠を超えた新規事業の種を社外に求め、専任組織を立ち上げる。
「豊洲の港から」グローバルコンテスト開始
世界各地でスタートアップを発掘するオープンイノベーションコンテストを開始。
BDSコミュニティ設立
社内の新規事業関心層が部門横断で集うMicrosoft Teamsコミュニティが始動。
持株会社体制移行・社内ベンチャー制度刷新
3社化を契機にベンチャー制度を大幅刷新。起業テーマ・売上規模の制約を撤廃。
デュアルキャリア・プログラム導入
所定労働時間の2割を「やりたい仕事」に使える社内兼業制度を全社展開。
インシデントテックと資本提携
社内ベンチャー制度発のAI障害対応スタートアップと資本提携を締結。制度の初成果。
NTTデータの新規事業の歴史
NTTデータは1988年、NTTのデータ通信事業を分離する形で設立された国内最大級のSI(システムインテグレーション)企業である。官公庁・金融を中心とした受託開発モデルで成長を遂げてきたが、クラウドや生成AIの台頭により、 「顧客のDXを支援する」立場から「自らDXを体現する」立場 への転換を迫られてきた。
2013年、同社は オープンイノベーション事業創発室 を発足させ、SI企業の枠を超えた新規事業の種を社外に求める取り組みを開始した。翌2014年にはグローバルオープンイノベーションコンテスト「豊洲の港から」を創設し、世界各地のスタートアップとの共創を本格化させた。受託型ビジネスに最適化された 19万人超の組織 の中で、自社発の事業を生み出す挑戦が始まった。
2023年7月の持株会社体制(3社化)への移行を契機に社内ベンチャー制度を刷新し、2026年1月には制度発のスタートアップ「インシデントテック」との資本提携が実現。 10年超にわたる継続 が、オープンイノベーションと社内起業の両輪で成果を生み出している。
「世界中の先進的なベンチャー企業1,500社以上とビジネス創発の検討を行い、取引企業を含む協業により、さまざまな領域での事業化を20件以上実現」
――オープンイノベーション(NTTデータ公式サイト)
新規事業戦略の特徴
NTTデータの新規事業戦略は、外部共創・社内起業・支援サービス化の3層構造が特徴である。SI企業の強みである顧客ネットワークと技術力を「アセット」として活用し、自社のイノベーション実践をそのまま顧客支援事業に転換する 「二毛作型」 のアプローチを採る。
第一の柱は「豊洲の港から」を中心としたグローバルオープンイノベーションである。 2014年の開始以来 第11回まで継続 開催されており、世界16都市で累計数千件の応募を獲得してきた。月1回の定例フォーラムには 延べ4,000名以上のイノベーター が参加し、単発のコンテストではなく継続的なコミュニティが形成されている。
第二の柱は社内ベンチャー制度とBDSコミュニティである。 2023年の制度刷新では「起業テーマは自由、売上規模やシナジーも問わない」という大胆な方針が打ち出された。加えて、2020年に立ち上がった社内コミュニティ「BDS」は 約1,300人規模 にまで成長し、月間アクティブユーザー率は 85%超 を維持している。
「起業テーマは自由とし、売上規模の大小や既存事業とのシナジーも問わない」
――NTTデータからベンチャーは生まれるか?(EnterpriseZine, 2024年)
第三の柱はIDA(Innovation & Design Acceleration)である。 自社の新規事業推進で培ったノウハウを顧客企業の新事業創発支援サービスとして提供する。世界20カ国以上で導入されている「FORTH Innovation Method」を活用し、 約20週間で3~5つのビジネスプラン を生み出す手法も展開している。
代表的な事業事例の深掘り
「豊洲の港から」とBinah.aiの協業
第10回コンテスト(2020年)では 世界13カ国15都市で開催し、約400件の応募 を獲得した。最優秀賞を受賞したイスラエルのBinah.aiは非接触バイタルデータ計測技術を持つスタートアップであり、NTTデータとの協業による実証実験へと発展した。最終的にカナダのNuralogixの非接触バイタル計測技術「Face.ing」をクラウド型健康管理ソリューション「Health Data Bank」の新機能として採用し、ウェルビーイング計測アプリとして事業化を実現している。
「最優秀賞受賞企業に対しては、副賞として、ビジネスサポートチームの組成や現地でのビジネス・マーケティング支援等、NTTデータとの協業によるビジネス化検討をサポート」
――第10回 豊洲の港から グローバルオープンイノベーションコンテスト結果発表(NTTデータ, 2020年)
インシデントテック:社内ベンチャー制度初の事業会社化
2023年12月に刷新された社内ベンチャー制度から生まれた初の事業会社が 株式会社インシデントテック である。AIエージェントを活用したシステム障害対応サービスを提供するスタートアップで、2026年1月にNTTデータグループとの資本提携が実現した。制度設計から約2年で具体的な事業化成果が出た点は、制度の実効性を証明している。
「社内ベンチャー制度を通じて事業会社化した株式会社インシデントテックと資本提携契約を締結」
――社内ベンチャー制度発の事業会社「株式会社インシデントテック」と資本提携(NTTデータグループ, 2026年1月)
ボイスタ!:介護領域の音声AIサービス
NTTデータが展開する 「ボイスタ!」 は、Amazon Alexaを搭載したスマートスピーカーを活用したシニア向け音声コミュニケーションサービスである。介護施設における入居者の自立支援と介護従事者の負担軽減を実現する。生成AIやセンサーデータを組み合わせ、入居者の「人生の物語」をAIが理解するパーソナライズ介護の実現を目指している。
キーパーソンと組織文化
NTTデータのイノベーション推進を支える組織文化の特徴は、 「暖炉型コミュニティ」 と呼ばれる自発的な社員ネットワークにある。2020年に80人で立ち上がったBDSコミュニティは、新規事業に関心を持つ社員が部門を超えて悩みを相談し合う場として成長し、 約1,300人 が参加する組織になった。
「未来を語る100人プロジェクト」では若手社員が10年後のNTTデータ像を描き、その提言が社内ベンチャー制度の刷新につながった。トップダウンの号令ではなく、現場の声が制度を動かすボトムアップの文化が根づいている。2024年度に導入された 「デュアルキャリア・プログラム」 では所定労働時間の2割を兼業に使える制度を整備し、「今持つ専門性の深化」と「新たな専門性の獲得」を通じた社員の成長を支援している。
「『今持つ専門性の深化』および『新たな専門性の獲得』を通じた成長によって、多様な価値創出を目指す」
――社内兼業制度「デュアルキャリア・プログラム」(NTTデータ公式, 2024年)
成功と失敗から学べること
NTTデータの事例から学ぶべき最大の教訓は、 「10年超の粘り強い継続」 がオープンイノベーション成功の最大の鍵であるという点だ。「豊洲の港から」は開始当初、SI企業がスタートアップと共創するという取り組みに対して社内でも懐疑的な声があったという。しかし毎月のフォーラムを粘り強く継続し、小さな成功事例を積み重ねることで組織の意識を変えていった。
一方、受託型SIビジネスに最適化された組織構造は、不確実性の高い新規事業への投資判断が後回しにされがちという課題を依然として抱えている。プロジェクト単位の収益管理が徹底された環境では、短期的なROIを示せない新規事業は評価されにくい。この構造的課題に対しては、コンテストで発掘したスタートアップの技術を既存顧客ネットワークを通じて展開するという 「アセットベース思考」 で突破口を開いている。
自社でオープンイノベーションを検討する際には、グローバル規模で広くスタートアップとの接点を持つ方法と、特定の技術領域に絞って深く連携する方法の両方を検討すべきだろう。NTTデータの実践は、前者のアプローチで 「量」が「質」を生む サイクルを実証している。
今後の展望
NTTデータグループは中期経営計画で 売上高4兆円超、連結営業利益率10.0% を目標に掲げている。2025年にはOpenAIとグローバルパートナーシップを締結し、グループ傘下の 3万8,000人 がChatGPT Enterpriseを活用する体制を構築した。2026年度中にはシステム開発工程の大部分を生成AIが担う 「AIネイティブ開発」 の導入を予定しており、SI企業そのものの変革が加速している。
社内ベンチャー制度では、インシデントテックに続く第2・第3の事業会社化が期待される。2024年度下期から開始された「社内コミュニティ支援制度(ERG)」のトライアルも本格展開の段階に入り、BDSコミュニティの成功モデルを他領域にも横展開する構えだ。 受託型SIから「共創型イノベーター」 への転換は、生成AI時代においてますます重要性を増している。
関連項目
成功の鍵
「豊洲の港から」グローバルオープンイノベーション
世界16都市でスタートアップを発掘し、顧客企業を含む3者共創でビジネスを創発。
社内ベンチャー制度とBDSコミュニティ
制度刷新と1,300人規模の自発的コミュニティで、SI企業の中から起業家を輩出。
IDA(新規事業創発支援のサービス化)
自社のイノベーション実践知を体系化し、顧客企業の新規事業創出を支援。
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