アジャイル
アジャイル(Agile) とは、短い反復サイクル(イテレーション)で開発と改善を繰り返し、変化に柔軟に対応しながらプロダクトを構築する手法である。2001年に発表された「アジャイルソフトウェア開発宣言」を起源とし、スクラムやカンバンなどの具体的なフレームワークを含む。
大企業の新規事業開発においても、ウォーターフォール型のアプローチに代わる手法として広く採用されている。以下では、アジャイルの基本原則、大企業での導入における課題、新規事業開発への効果的な適用方法について解説する。
半年かけて作ったプロダクトが市場に合わない
大企業の新規事業開発では、従来のウォーターフォール型アプローチが根強く残っている。要件定義に2か月、設計に2か月、開発に4か月、テストに2か月。 リリースまでに10か月以上 かかり、その間に一度も顧客のフィードバックを得られない。
問題は開発期間の長さだけではない。半年以上かけて完成したプロダクトが市場に投入された時点で、当初の前提条件が変わっていることが珍しくない。
顧客のニーズ、競合の動向、技術のトレンドが変化しているにもかかわらず、 計画通りに作り切ることが目的化 してしまう。新規事業のように不確実性が高い領域では、このアプローチの限界は明白である。
要件定義書通りに作ったが誰も使わなかった
ある大手金融機関の新規事業チームは、 12か月 かけてフィンテックアプリを開発した。 200ページの要件定義書 に忠実に開発を進め、予定通りにリリースした。しかし、リリース後のアクティブユーザー数は 目標の5% にとどまった。
原因を分析したところ、要件定義時に想定していたユーザー行動と実際の行動が大きく乖離していた。
一方、同社の別チームは 2週間のスプリント でアジャイル開発を導入し、毎回のスプリント終了時に実際のユーザーにプロトタイプを触ってもらいフィードバックを収集していた。 3か月後 にはPMFに近い状態に到達し、本格開発へのゴーサインを獲得した。
2週間スプリントで学びを最大化する3つの原則
アジャイルを新規事業に適用する際の3つの原則を紹介する。第一に、2週間のスプリント(反復サイクル)を基本単位とし、各スプリントの終了時に「動くプロダクト」をリリースする。完璧である必要はなく、仮説を検証できる最小限の機能が含まれていればよい。
第二に、スプリントごとに顧客からのフィードバックを収集し、次のスプリントの優先順位に反映する。計画に固執するのではなく、 学びに基づいて方向を修正する 柔軟さがアジャイルの本質である。
第三に、チーム内の情報共有を徹底する。 毎日15分のスタンドアップミーティング で進捗と課題を共有し、スプリントレビューでステークホルダーにデモを行う。 透明性の高いコミュニケーション が、チームの意思決定速度を加速させる。
小さなチームで最初のスプリントを始める
アジャイルの導入は、大規模な組織変革ではなく、小さなチームでの実践から始めることを推奨する。まず 3〜5名のクロスファンクショナルチーム を編成し、最初の2週間スプリントを実施する。
スプリント計画では、 検証すべき仮説を1つ選び、その検証に必要な最小限のタスクだけをスプリントバックログに入れる。スプリント終了時には必ずレビューを実施し、「何を学んだか」「次のスプリントで何を優先すべきか」をチーム全員で議論する。
リクルートやサイバーエージェントのような企業では、新規事業チームにアジャイルの手法が標準的に導入されている。
不確実性の高いプロジェクトに取り組むチーム
アジャイルが特に効果を発揮するのは、新規事業のプロダクト開発フェーズにいるチームである。MVPの開発からPMF達成までの期間は、顧客のフィードバックに基づく方向修正が頻繁に発生するため、アジャイルのアプローチが最も適している。
また、既存事業のDX推進プロジェクトや、社内の業務改革プロジェクトでも、アジャイルの導入が有効である。エンジニアだけでなく、ビジネスサイドのメンバーも含めた クロスファンクショナルな体制 で取り組むことで、「作ったものが使われない」というリスクを最小化できる。
来週から2週間スプリントを始めてみよう
今すぐ取り組むべきは、現在進行中の新規事業プロジェクトに2週間スプリントを導入することである。最初のスプリントでは完璧なプロセスを目指す必要はなく、 「計画→実行→レビュー→振り返り」 のサイクルを1回転させることが最も重要である。
リーンスタートアップの仮説検証サイクルとアジャイルのスプリントを組み合わせることで、「正しいものを、正しく作る」プロセスが実現する。デザイン思考で発見した顧客課題を、アジャイルのスプリントで素早くプロダクトに落とし込む。この連携が、大企業の新規事業を加速させる鍵となる。
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